君の車
汐崎ひかり
君の車
また聞きそびれた。
「」
口が開いて、閉じた頃には、カーブを曲がったことによって体が傾いた。
車がそうして唐突に止まり、「ここ待たされるね」と窓際に肘をついた。
その声はやや高い音で有りながら、穏やかな雰囲気を醸し出した。
そうではない。あの人は穏やかではなく、きっと苛立っていても怒っていてもそんな風に穏やかな状態を保っているんだろう。
涙が流れなかった。
いつだって聞くにはあまりに届かずに、その声も進めずに終わるのだ。
その車は新しい道へ行かなかった。
いつだって同じ道を行き来しては、それよりも先へは進まなかった。
同じ道へ帰るには、あまりに続かない。
君の車 汐崎ひかり @serori_c
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