紅の呪い ― 赤い着物にまつわる怖い伝説

O.K

第1話:赤い着物にまつわる伝説

昔々、ある日本の村に住む美しい若い女性がいました。その女性は名前を「紅(くれない)」といい、その名の通り、鮮やかな赤い着物をいつも身にまとっていました。紅は村で一番の美女であり、多くの男性から求婚されるほどの人気を持っていましたが、彼女は自分の気に入った相手を見つけることができず、結婚を避け続けていました。


ある晩、村に旅する謎めいた男が現れました。その男は風変わりな風貌をしており、黒い長い髪を後ろで結んでいました。彼は紅の美しさに惹かれ、一目見るだけで彼女を迎えに行くことを決めました。男は紅に言い寄ることもなく、ただ彼女をじっと見つめるだけでした。


紅は不気味な感覚を抱きつつも、その男の眼差しに惹かれてしまいました。やがて彼女は、その男こそが自分が待ち望んでいた運命の相手だと確信しました。そして、紅はついに男に結婚を申し込まれることを望むようになったのです。


しかし、村人たちはこの謎めいた男に対して不信感を抱いていました。彼がどこから来たのか、何をしているのか、その正体は一切分からなかったからです。村の長老たちは紅に注意を促しましたが、彼女は聞く耳を持ちませんでした。紅は自分の気持ちに従い、その男との結婚を決めたのです。


結婚式の日、村は祝福の気持ちで溢れていましたが、それと同時に不穏な空気も漂っていました。紅は美しい赤い着物をまとって、花嫁姿で男の元へ向かいました。しかし、結婚式が進むにつれ、村人たちの不安感は高まるばかりでした。


婚礼の最中、突然天気が急変し、雷と雨が村を襲いました。暗い雲が村を覆い尽くす中、紅の着物は一瞬にして濡れてしまいましたが、それでも彼女は微笑みを絶やしませんでした。男は微動だにせず、じっと紅を見つめていました。


突然、村人たちの中から一人の老婆が現れました。彼女はひどく老いた顔を紅に向け、耳元でささやくように警告しました。「彼こそが…彼こそが死者の国からの使者だ…赤い着物をまとった魔物だ…」


紅は老婆の言葉に驚愕し、振り返ると、彼女の後ろには赤い瞳を輝かせた怪しげな存在が立っていました。彼こそが紅が選んだ新郎の正体でした。村人たちは恐怖に震えながら、その怪物が紅を取り込む様子を目撃しました。


結婚式の場は一瞬にして混乱に包まれ、村人たちは紅の悲鳴とともに絶望的な光景を目にしました。怪物は紅の姿を吸収していき、彼女の美しさは次第に消えていきました。やがて、紅はただの赤い着物と化してしまったのです。


怪物は村を去り、紅の美しさを奪った後、再び姿を消しました。村はその後も恐怖と悲しみに包まれ、紅のことを忘れることはありませんでした。


以来、村では赤い着物を着ることは忌み嫌われるようになりました。そして、赤い着物にまつわる怪奇現象や不幸が起こると言われるようになったのです。

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