第26話  デュール谷へ……

 メアリ・タオは、ルシーガ持って宿舎へ帰った。

 レフス-アは、驚いていた。


 デュ-ル谷の出身であるレフスリーアには、魔法剣の事は良く知っている。例え、今は、祖父が魔法鍛冶やらなくとも。

 ……谷に伝わる伝承のように知っていた。そして……レフスリーアの家からは、何人もの火の術に長けた者が出る事実に。

 なぜ、母はメアリ・タオに魔法剣を与えたのだろうか?メアリ、タオが言うには、向こうから話しかけたというが……

 レフスリーアは、謎だらけでなかなか眠りにつけないでいた。。

 メアリ・タオのほうは、嬉しさの余り、そルシーガを抱いて眠りについた。


 眠れないレフスリーアが寝返りをうったところで、とんでもないことを目撃していた。タオの身体が銀色の光に包まれて消えた……


「「「え!?」」」


 レフスリーアは、驚きだ。

 急に目の前で寝ていたルームメイトが、いなくなったのだ。直ぐに管理人の巫女を呼んで知らせた。


 そうしたら光の神殿から、達しが来ていたらしく、メアリ、タオの縁のところか、ルシーガの作られたところへ飛ばされたんだという。

 魔法剣には、色々な魔法が付きモノで、中には時空を越えるヤバい代物もあるそうだ。ルシーガには、時空を飛ぶような力は無いよう言う。

 いずれにしても、数日で帰って来るからと、巫女はレフスリーアを安心させて、部屋に戻る様に促した。

 ひょっとしたら、故郷のデュール谷に飛んでるかもしれない……

 そう思って、レフスリーアは、双子石(通信用の石)で父のミシャールにそちらに魔法剣を持った女の子が、現れるかもしれないと知らせておいた。


 ♦


 メアリ、タオは気がついたら、とても狭いベッドに寝ていた。とても良い匂いのするリネンのシーツだ。

 だが、どうにも狭苦しい。

 目を空けてみると、赤ん坊用のベッドだ。いくらチビッ子のメアリ・タオでも狭すぎだ。

 そこに驚いた顔をして、タオの事を見ている男の人がいた。


「鍵のかけてあったこの部屋に、どうやって入ったんだ?」


「タオは、寝てただけよ」


 メアリ・タオは正直に話す。


「レフィシアから、魔法剣を持ったまま寝たお前が消えたと連絡はきている。だがここは俺の娘が攫われた場所だ」


 ミシャールは、タオの持っていた剣に目がいった。


「それが、魔法剣か?」


「うん、三賢人のエリサ様にもらったの」


「エリサ?」


 ミシャールは、エリサの考えていることが分からなかった


「あの、ごめんなさい!タオは本当に寝てただけなの!」


 ミシャールは、我に返った。

 大柄な自分が、七才あまりの幼い子の前に仁王立ちしているのだ。


「すまなかったな。お前の名前はタオなのか?」


「うん、メアリ・タオだよ」


 ミシャールは、メアリ・タオの前にかがんで、視線を合わせてくれた。


「大丈夫だ、少しだけお前の頭の中を見せてくれ」


 そういうと、おでこをコツンとつけてきた。

 タオはビックリしたが嫌ではなかった。


 不思議な安心感が出て来て、タオは泣いてしまった。

(「父ちゃんも母ちゃんもいない。皆に入るのにタオにはいない。

 寂しいよ~~」)


 気が付くと、ミシャールの腕の中でギャン泣きしていた。

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