助けた女の子がメイドになったんだが、家事スキル0の駄メイドだった
猫丸
プロローグ
目覚まし時計が眠りを覚ます。
「ん、ふぁあ」
リビングに行く。そこには誰もいなかった。
「はあ、
複雑な心情に俺はため息をつく。
そして、しぶしぶ台所に立つ。
◆
「おーい」
俺の部屋の隣。扉に、『みおと
声を上げながらノックをする。
いつも通り返事はない。
はあ、仕方ないか。
「入るぞ?」
部屋の扉を開けて中に入る。
女の子らしいとは言えない、あまり物が置いてない部屋だ。
机に本棚、タンスにベッドなど最低限のもの。
そして、そのベッドに穏やかな表情で眠っていた。
艶のある肩まで届くぐらいの黒髪。長いまつ毛、小さな唇、スッと通った高い鼻。
可愛いとは思う。モテててるのかは知らん。
「おい、いつまで寝てんだよ」
なかなか起きない美桜の肩を毛布越しから揺する。
「ん、あと10分」
「それ、毎日言わないと死ぬ病気なのか?」
「すぅ」
はあ。面倒臭くなってきた俺はいつも通り美桜の毛布を剥がす。
「っ!ちょっ、おい!!」
動揺しすぎて舌が回らない。
俺は一瞬にして毛布を美桜に投げつけた。
慌てていたから狙いは下手くそで、美桜の顔は隠れ足は太ももが付け根辺りまで露出していた。
「んん……ぁ、伊織さんおはようございましゅ」
毛布の中から猫のような撫で声が聞こえる。
モゾモゾと毛布が蠢き、美桜が体を起こす。
すると、当然ながら毛布は落ちていくわけで、ゆっくりと顔が露になる。
そして、体も露になる。
俺はそっと後ろを向く。
「おい」
「はい?」
「服は?」
「暑かったから脱ぎましたっ」
美桜が元気よく答える。
「……今、2月だぞ?」
「はいっ」
暖房の温度下げろ。
「……あ、そういうことですか。伊織さんも男の子ですからね。これもメイドの仕事……良いですよ、伊織さん」
「何が『これもメイドの仕事』だ。家事できない分際で」
「酷いこと言いましたね!できますよ!」
美桜が心外だとばかりに抗議の声を上げる。
「嘘言うな」
料理下手、洗濯はできない、掃除したら逆に汚れる。
美桜ができることなんて買い物ぐらい。
「……いいんですよ!メイドなんて形だけなんですから!」
開き直った。
言ってることは正しいんだけど。
半年前に美桜を拾って、美桜はメイドとしてここに住んでいる。俺の親は海外にいるから、同棲ってことになる。
形だけって言うのは、美桜がお金を受け取ってないから。代わりに俺は衣食住を提供してる。
メイドにこだわるのは、お互いに『メイド』という立場を利用しているだけ。
美桜は、たぶん俺との関係を繋げるため。そうして、衣食住を得る。
俺は、美桜との関係をメイドと主人の主従関係で終わらせるため。それ以上の関係にはさせない。
でも、こいつ本当に家事できないんだよな。
こんな駄メイド拾わなければよかった。
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