飛ぶ
高校に入ってすぐ、私はいじめの対象になった。ノートや、机、下駄箱は落書きだらけ。下駄箱なんかは、歪んでいる始末。トイレに閉じ込められて、ガムテープで口と手足を縛られ、巡回の警備員が見回っても、私は助けを求める事が出来なかった。
そして、私の膀胱は悲鳴を上げた……。
次の日の朝、扉を開けて入って来たいじめてくる奴らの顔は、満面の笑みだった。
私は、おしっこを漏らしていた。
その私をいじめていた女子たちは、大騒ぎで人を呼び、私は、学校中の笑いものにされ、晒しものとされた。泣いている写真をスマホで撮るもの。その映像をすぐSNSに投稿するもの。ずーっと、下を向いて、長い髪で必死で自分の顔を隠そうとする私の髪の毛をつかんで、無理矢理顔を上げさせ、ドアップで、『この人、高校生のくせにおしっこ漏らしてまーす!!』と、ナレーションを付け、動画を垂れ流す男子生徒。もう、誰もかれも、味方はいなかった。
私は、この高校生活に、現実に、絶望した。
その騒ぎを聞いて、教師たちがやって来た。そうしたら、一気に人の波はひいていった。『知りませーん』って、顔をして、堂々と、いなくなった。教師は、ガムテープをとりあえずはがし、私に言った。
「こんな目に遭う前に、どうして何も相談しなかったんだ?」
この人……先生は、そう言ったけれど、私、ちゃんと言ったよ。私、いじめを受けてるって。そして、貴方から返ってきた言葉は、悪ふざけだろう?仲良くしてるって、
「……じゃない……」
「ん?」
少し、柔らかい笑顔で教師は言った。
そんな、今更優しい教師面してもダメよ。許さない。
「……言ったっじゃない!! ちゃんと言ったじゃない!! 私、いじめに遭ってるって!! 相手にしなかったのはそっちのくせに!! よくそんな勝手な事言えるよね!! あんたら教師も、私をいじめてたやつらとおんなじよ! 腐ってて、冷徹で、鬼畜で、悪魔のような最低な奴らよ!!」
そう叫ぶと私は全力疾走で屋上に向かった。そして、少し高めに設置されているフェンスを越え、フェンスの向こうに辿り着いた時、バタバタと教師たちが集まって来た。
その後の事は、よく覚えていない。『やめるんだ!』とか、『私たちが悪かったから!』とか、『人生はまだまだだ!』とか、先生たちがテレビでお勉強した、青春だか、アオハルだか、そのドラマに出演でもしている気でいるのだろう。私には、半ば、それを、楽しんでいる風にも見えた。
私は、そんな奴らに、振り向きもせず、10秒後、屋上から飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます