陰キャなオレが陽キャになったら幼馴染がよそよそしくなった件について

猫の集会

おままごと

 僕の名前は、雪村ゆきむら 直斗なおと 

 

 そして隣に住む幼馴染のやす 夏実なつみ 

 

 ボクたちは、小学生の低学年まではよく一緒に遊んでいた。

 まぁ、幼馴染あるあるだ。

 近所のこと遊ぶってのは。

 

 

 

「直斗ー、さぁ、お味噌よ」

「あ、ありがとう。夏実ちゃん」

 と庭にレジャーシートを広げてよくおままごとをして遊んだりした。

 

 おままごとをするには、外の方がなにかと便利だった。

 なぜって、砂のご飯や葉っぱのおかずがすぐに手に入るからだ。

 あと、草も彩がよくなるからベストだ。

 

 来客もくる。

 まぁ、喜ばれない来客だが。

 

 そう、来客とは虫だ。

 

 

 おままごとのほかには縄跳びもよくした。

 夏実ちゃんは、運動神経がとてもいい。

 

 でも、ボクは運動はどちらかというと苦手だ。

 

 できれば部屋で読書している方が好きだけど、夏実ちゃんと遊びたいから一緒に縄跳びもする。

 

 夏実ちゃんのは、ピンクの縄跳び。

 ボクは、少しでも強く見えるように黒の縄跳びだった。

 

「直斗、もっと軽やかに」

「えー…、こう?あ…」

 縄に絡まるボクを見て、

「んもー、直斗はほんとに運動苦手だなぁ」

 と笑う夏実ちゃん。

 

「あははは…」

 ボクもとりあえず笑ってみたりした。

 縄跳び黒にしても弱々しいのは、変わらなかった。

 

 夏実ちゃんといるとあっという間に時間が過ぎてしまう。

 なんでだろうな。

 授業中は、一分がすごーく長く感じるのにさ。

 

 

 でも、そんなボクたちだったけど次第に遊ぶ時間が減ってきた。

 

 登校は一緒だけど高学年になると下校が別々。

 

 夏実ちゃんは、友達と帰るようになりそのまま友達と遊ぶ約束をする。

 そして、小学五年生になった頃にはもうほとんどただのクラスメイト。

 

 ぽつん…

 

 一緒におままごとしていた頃が懐かしい。

 多分もう、夏実ちゃんと遊ぶことはないだろう。

 

 や、やだよー。

 夏実ちゃーん。

 ボクと遊んでよー‼︎夏実ちゃーん‼︎

 と心で叫ぶ。

 

 が…

 届くわけがない‼︎

 ってか、届いたらボクはキモいやつ決定だ‼︎

 

 …

 

 しかも何して遊ぶよ?

 夏実ちゃんは、よく友達とオシャレの話なんかしている。

 

 …

 

 ボクともう話合わないじゃん。

 オシャレの話なんかできない。

 

 この歳でおままごとするわけにもいかないし…

 

 夏実ちゃんは、運動神経抜群でクラスで人気の男子と噂になったりしている。

 

 ボクもせめて夏実ちゃんと釣り合える男になりたい…。

 

 もっと運動ができれば自信がつくかもしれない。

 でも、ムキムキになれる飲み物飲んでも運動ができるわけじゃないよね…

 

 見掛け倒しなんて嫌だし…

 

 …

 

 あ!そうだ‼︎

 

 いいこと思いついた。バスケットを始めよう。

 しかも、みんなにバレると恥ずかしいから少し離れた場所にこっそりと通い出した。

 

 そしてもうボクと言わない。

 オレって言うんだ‼︎

 

 それから数年後

 

 オレたちは、ほぼ他人状態のまま中学生となった。

 

 入学式

 

 夏実ちゃんを無言で探した。

 ジロジロと監視カメラのようにゆっくりジーっとあたりを見回した。

 

 夏実ちゃん、夏実ちゃん。

 

 ‼︎

 

 いたーー‼︎

 

 制服姿の夏実ちゃん。

 

 はぁ〜。夏実ちゃん、よく似合ってるよ〜。一気に大人っぽくなってさー。

 

 やっぱりかわいいわぁ。

 

 そんなほっこりしていたオレのとなりでは、ヒソヒソと男子が夏実ちゃんをみてあの子かわいくね?と話していた。

 

 …うん。

 夏実ちゃんは、かわいいよ。当たり前じゃん?

 それに優しいんだ。

 オレは幼い頃ずっと夏実ちゃんとおままごとしたり縄跳びしたりして四六時中ずっと一緒だったんだからな。

 と心で呟く陰キャなオレ…。

 そして誰もみてないけど、ドヤ顔。

 

 

 そんな陰キャなオレだけど、ついにやって来た部活選び。

 

 

 オレが入部したのは…

 

 バスケ部ーー。

 

 小学校が一緒だった人に

「えっ?バスケ部⁉︎」

 とビックリされた。

 

 二度見されたりもした。

 

 うんうん。

 わかるよ。

 オレがオレじゃなかったらやっぱり二度見する。

 絶対に。

 えっ⁉︎

 あいつがバスケ⁉︎

 違う部活と間違えてここに合流してんじゃね⁉︎

 と。

 

 しかーし‼︎

 オレは変わるんだ。

 

 春休みだって毎日頑張ったし‼︎

 

 夏実ちゃんと付き合うなんて絶対無理だけど、せめて夏実ちゃんに釣り合う男になりたいのだから。

 

 だからこっそりバスケを習っていたのだから‼︎

 

 

 そして本日部活は、自己紹介と基礎のみで本日終了。

 

 

 

 

 帰り道

 

 珍しく夏実ちゃんに話しかけられた。

 

 久々の夏実ちゃーーん‼︎‼︎

 

 もう夏実ちゃんに抱きつきたかった。

 数年ぶりの再会かのような喜び。

 

 久々にきく夏実ちゃんの声。

 

 あぁ、夏実ちゃん。

 オレを呼んでくれてありがとう。

 

 続く。

 

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