第12話 メイド、ストーカーになる
***
神崎side
祐介様が家を出てから二分後くらいに私も家を出た。まだ遠くには行ってないから、追いつけるはず。小走りで彼の学校へのルートに沿って、進んでいるとすぐに祐介様らしき人を発見した。
すぐさま双眼鏡で確認。祐介様で間違いなかった。
「……」
いま私がしてること? ボディーガードに決まってるじゃない。怪しい人に誘拐されたり、チンピラに暴力振るわれたり、車に轢かれそうになったり、した時に助けてあげるの。断じてストーカーじゃないからね!
彼は一人で歩いている。今のところ女の気配は無い。だけど油断は禁物だ。学校に着くまで気を抜いてはならない。
後ろ姿の祐介様も勿論、華奢でカッコいい。
……けど、彼は依然としてひとり。
そこで私はある結論に至った。
もしかして祐介様は友達が一人もいない?
じゃあ帰宅したら友達の作り方を一から教えてあげないといけないの?
友達の一人くらいなら、いても私は許してあげるのに……。
あ、女なら話は別だよ?
そんなことを思いながら尾行していると、学校に着いてしまった。結局学校に着くまで彼は一人で、誰かと一緒に登校しているわけではなさそうだった。それが毎日なのか、今日だけなのかは分からない。
毎日一人なら、私と一緒に登下校したって別にいいよね? 明日からそうしようかなー。
これでボディーガードの仕事は終わり――とは限らない。
私は盗聴用受信器を耳に当てる。まだ雑音しか聞こえてこないけど、そのうち聞こえてくるはずだ。
――そう。私は祐介様とハグするついでに彼の襟に盗聴器を仕掛けておいたのだ。
だから私たちはずっと一緒♡
離れているのに祐介様のお声が聞けるなんて、最高だよ!
***
祐介はいつもと変わらない時間に学校に着いた。朝一番にはぁ、と溜め息を吐く。
メイドが来て人生が変わった。人生が変わった、といえば大袈裟かもしれないけど、家事が楽になったし、一人暮らしの寂しさも紛れた。それにメイド手製のお弁当を食べるのも楽しみだった。ただあのメイド、非常にめんどくさい。祐介が女の子と喋ってる所を見ると、不機嫌になるだろうし、今朝だって振り返らなかったけど、後をつけられてる気がしたし。だいぶ、メイドの性格は分かってきた。
だから、SNSで友達には適当な理由付けして、一人で登校する旨を伝えた。
彼にも友達、というか小学校からの付き合いの幼馴染が二人いる。一人は男子で一人は女子だ。別に恋愛関係とかそういうのは一切無い。でもとっても仲良しだ。
ちなみに祐介の席は一番後ろの真ん中ら辺。落ち着くし、彼は気に入っているらしい。授業中、偶に寝たりもする。
部活は入学したてだから、どこにも入っていない。けど、入るなら幼馴染二人と同じ部活がいいなあ、と彼は思う。
祐介が机に突っ伏していると、後ろのドアが元気よくガララララ、と開いた。
「おはよー、ゆーくん」
明るい声と。
「佐々木、おはよう」
優しげな声。
祐介も幼馴染二人に挨拶を返す。
「おはよう、
いつも通りの日常だ。
二人は祐介の机を囲う。それから雑談を楽しむ。
それを聞いていた神崎は。
(は? まじでありえないんだけど)
(死んで?)
祐介の幼馴染の加奈に対し、強烈な殺意を抱いていたのだった。
そして、「好きな人はいない」と言っていた祐介が自分以外の異性と喋っている事が許せなかった。さらに加奈が「ゆーくん」という愛称で呼んでいる事に抑えきれない嫉妬心を覚えた。
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