第一話

「···と、出だしはこんな感じで···っと」

 皆さんは小説は書いたことがあるだろうか、このような単語の羅列が出るので言うまでもないが、私はある。

 ガチャン、その音で思考の一辺が飛んでいってしまう。いい言葉が思いついたのに、そう思いながら音の出所に私は目を向ける。

「緑さん、もう少し静かに開けられませんか」ドアの開閉を行った人物に私は不満をこぼす。

「ああごめんなさい」「···考え事してたかしら?」その人物は申し訳なさそうに眉をハの字に曲げながら話す。

 は[渋川 緑]・・・私が執筆に集中していたここ、【都市伝説調査所】の管理人だ。···少し含ませた言い方をしたが、

 理解し難いが、そういうものなのだと割り切れと言われてしまったのだから、深くは聞かないことにしている

「こんな事で物書きする方にも問題があるんじゃないかな」・・・妙な文字の書かれたパーカーを着たカメラを弄る少年が私に反論する。彼は[華山カヤマ 蓮]、いつもカメラを弄ってばかりいるので身内からの多くからはレンズと呼ばれている。

「しかしレンズさん、この場所ほど小説を書き上げるのに最適な場所はだな···」

 ガチャン

 私が内容の後半を溜めて言おうとしたとき、都合悪くドアが開く。

 ドアの向こう側からは煙管キセルを持った女性が姿を現し、さも当然のように私を押し退けながらソファに座った。

 この無礼な態度を取る女性は···彼女について述べようとした瞬間、口を開く。

「依頼が入りんした」

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