主人公は記憶喪失である。ふと気づくと椅子にガムテープで拘束されていたわけだが、何故拘束されているのか分らない。その後、何とか拘束を解き部屋を出ることには成功したが、残された謎のメモ「16 いまだ」の意味を探る内、驚愕の事実を知ることになる。塗りつぶされた文字、床に転がる女性の死体。その場所で一体何が起こったのだろうか?
切々と語られる異常事態。読者の集中を途切れさせない魔力がこの作品にはある。セピア色のフィルム映画を見ているようなざらついた雰囲気のせいか、読んでいる間中ざわざわと胸騒ぎが止まらない。短編ながら非常な満足感を得られるのでお勧めだ。どうかこの圧巻のオチを見て欲しいと切に思う。これは令和のドグラ・マグラなのだ。