エルフと歩む異世界譚〜二つの時代を生き抜いた高校生、この世界を変える〜

序章 全ての始まり

第1話 転生、そして

 血生臭かった。

 それが、あの時代を数十年生きた感想だ。何度戦いに駆り出されたかもわからない。しかし、数十年生きても、この体は老いることはなかった。それはなぜだか理解できない。

 俺が数十年も戦い続けた、日本、戦国時代。俺はここに落ちる前の記憶は鮮明に覚えている。

 現代日本の病院の中で生まれ落ち、女幼馴染とバカやりながらすくすく育ち、親父にさまざまな武術を叩き込まれながらいつの間にか高校生にまで育っていた。幼馴染に呼び出され、久々に2人きりで帰り、いい雰囲気の中で幼馴染が言葉を発した瞬間、俺はーーー

 そして今、関ヶ原。とある後継者争いで起きた大規模な戦いが、今終わった。俺は西軍として参加していたが、やはり俺の予想通り、西軍が負けた。しかし、親父に叩き込まれた武術のおかげで少なくとも息はしている。だが、このまま応急処置なしだと、俺は死ぬだろう。

「まじかよ」

 俺は無敗だった。

 伊達に『剣鬼』という二つ名がつくだけの実力はあった。

 しかし、この戦い。

 剣鬼でも、流石に限界というものがあると感じさせられた。

「俺は、少し調子に乗っていたのかもな...」

 視界が朦朧としている。

 しかし、俺は不思議と涙が流れない。

「ははは、まだ、生きることを諦めてないのかよ、俺の体...」

 不思議なことに、まだ生きようとしているみたいだ。

 精神的には敗北しているが、本能は生きたいと叫んでいる。

 しかし、体は動かない。

「こんなことになると分かっていながら、なんで俺は...」

 そう、分かっていたのだ。

 しかし、俺は身を投じた。

 結果がこのざま。

 過去の俺が見たら、お笑いものだな。

「結依...」

 あの日、俺がこの時代に落ちてくる前最後に一緒にいた人。

 あの時、何を言おうとしたのか...

 凪も、流石に分かっていた。

「俺も、大好きだったんだよ...結依」

 だんだん、意識が遠のいていく。

 その最後の最後まで脳裏にいたのは...結依の姿だった。

「はは...最後までお前に見守られるのも悪くは...ねぇな...」

 それが、彼のこの時代の最後の思考だった。

 意識を失った後、彼の周りに猛烈な光が現れ、その光が消えた後に中心にいた彼はいなかった。












「...」

 瞼が重い。

 俺は寝ていたのか?

 しかし、俺は確か関ヶ原でー

「?!」

 飛び起き、警戒体制をとる。

 周りの人間?と思われるーーいや、人間も警戒体制をとる。しかし、とある女性による叱咤により、周りの警戒態勢は解かれる。その女性は、俺に真っ直ぐ立ち直った。

「突然の召喚すみません。私はこの国、ルビウス王国の第1王女、レーゼ=ラ=ルビウスと申します。この度は、我々による召喚に応じていただきましたことに感謝と、謝罪を申し上げたくこの場に参じました。まずは、謝罪を受け入れていただきたいのですが...」

 知らない言語らしいが、なぜか聞き取れる。

 理由がわからない。

 考えているうちに、また声をかけられた。

「あの...どうかされましたか?」

「あっ、いえ、少し考え事を...」

「そうでしたか...しばらく時間が必要ですか?」

「いえ、大丈夫です。謝罪も結構です。これも、何かの運命かと思いますので...」

 そうは言ったものの、不可解な点はいくつかある。

 これらは後々考えよう。

「しかし、召喚...か。あの時もそうなのか...?」

「あの...話を進めたいのですが...」

 呟いていたら、またレーゼに話しかけられた。

「あ、ああ...わかりました...いくつか質問しても大丈夫でしょうか」

「ええ、大丈夫です」

「それでは遠慮なく。まず、私を召喚した目的はなんでしょうか?」

「父上から...」

 それからいくつか質問をし、分かったことが複数ある。

 まず、ここは明らかに日本とは違う、また地球がある世界とは明らかに違う存在の世界であるということ。

 次に、俺はどうやら聖剣の主として召喚されたということ。

 また、この王女は国王から情報の統制を受けており、世の常識をあまり詳しく知らないとのこと。

 そして、この王女、レーゼこそが、俺を召喚した主であるということ。

 この世界は魔物に侵されており、その魔物を取り除くため、聖剣の主を召喚しようと、色々試みた結果、俺が召喚されたとのこと。

 ひとまず国王にあってから、聖剣を渡されるらしい。

 国王、か。

 なにやら、きな臭い匂いがしそうだ...



 国王の謁見が始まる。

 ドアが開き、広い空間内に入る。

 奥の玉座には、国王、そして隣にレーゼ王女がいる。

 そして、どうやら宰相などもいる。

 そして部屋の隅には、護衛がいる。

 まあ、国王や国の重鎮がいる部屋なのだから当然か...と思う。

 そして、俺は跪く。

「顔をあげよ」

 国王の一言により、俺は面をあげる。

「この度は聖剣の主の召喚が成功したことを嬉しく思う」

 言葉は続く。

「これまで人類は魔物という脅威により、常に危険に晒されてきた。しかし、聖剣の主が召喚されたからには、奴らを蹴散らすことなど容易!これより人類の反撃を行う!」

 国王がそう宣言すると、場は一気に盛り上がった。

 それほど魔物に苦汁を舐めさせられたのだろう。

 その時の俺はそう、思っていた。

「それでは、聖剣を主の元へと帰す」

 宰相がそういうと、国王が聖剣を手に持ち、俺の前まで来た。

 俺は跪きながら、聖剣を手に取る。

 その瞬間、また場が盛り上がった。

「それでは、聖剣の主殿の試し切り、いや、宣戦といこうではないか」

 国王はそういうと、手でやりくりして誰かを連れてきた。それはーーー

 エルフの奴隷だった。


 は?

 エルフ?

 なんでエルフが魔物とされるんだ?

 俺には疑問だった。

「この汚物を聖剣の手により断罪することにより、この世界に聖戦を起こす火蓋を切るものとする!」

 俺には国王の言っている意味がわからなかった。

 俺には、このエルフが人を見下しているのではなく、怯え、助けを乞うているように見える。

 どうやら、レーゼ王女も考えていることは同じのようだ。

 国王は、エルフの視線に気づくとーーー

 エルフを蹴り飛ばした。

 その瞬間、俺の何かが切れた。

「汚物が。尊大なるこのわしを汚い目で見るでない」

 ああ、そうか。

 この世界にとって、害悪なのは...

 人間なんだ。

「さあ、では聖剣の主よ。この汚物の首をー」

 それが国王の最後の言葉だった。

 聖剣を手に取った俺は、迷わず国王の首を跳ね飛ばした。

「汚物はお前だろ、くそじじい」

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