第30話
真紅の機体に乗り込んだ私雛子はすぐにIFFのデータを書き換えます。アブレイズさんの処方してくれた薬のお陰で禁断症状は収まり、今まで封じられてた記憶や技能が復活したので、機体の操縦やIFFの書き換えも余裕です。でも生身の戦闘だけは苦手です。
「慣れない機体だけど、扱えない訳ではない!」
この機体、エキシージって言う名前みたいなんだけど、エクスフェイトと同じ感覚で動かせる。そこに、お姉さまの癖が入っているので非常に扱いやすい。
「それに、この型番って…って今はそんなの気にしてる場合じゃないね!」
エクラからの戦斧をショートブレイドで受け止めると、腹部に蹴りをいれてフィオから遠ざけます。
「早くアヤさんを治療しないと」
アヤさん、まだ生きているでしょうか。心配ですが、目の前のエクラをなんとかしなきゃね。でも、ちょっとやそっとダメージあたえた位じゃ撤退してくれそうにないし。
「撃墜するしかないかぁ」
向かって来たエクラの戦斧を避けて、高く飛び上がる。何もエクラの得意な距離で戦う必要はないしね。ちょっとセコいかもしれないけど、戦争にルールやマナーなんてないし。
「隙間があるから、上空行くと冷気が…」
エキシージはハッチが損傷しているので隙間から、冷風が入ってきます。
「さむいぃぃ」
暖房が付いているけど、入ってくる冷風の方が多いので上空に行く度にどんどんコックピットの気温が下がります。
「凍え死ぬ前にやらなきゃ」
胸部のガトリングガンを撃ちつつ、腰のレールガンを放つ。1発は左足に直撃するが尚も此方に向かってくるので、ショートブレイドを投げつけます。接近戦の武装が消えるけど、私は遠中距離が得意だから気にしない。ショートブレイドが弾かれるのと同時にビームライフルを放ち、右腕を撃ち抜きます。
「この感覚、兄さん?」
戦って気付きましたがこの感触はゼスト兄さんですね。ゼスト兄さん、私と戦ってる時はずっと手加減してくれてたんですよね。
(雛子か、久しいな)
「あの日、別れてから、私、ずっと探してたんだよ?なのにこんな形で再会するなんて…」
(俺も、思ってなかったぜ)
ゼスト兄さんの声が頭に聞こえてきます。私達、兄妹は過去におこなわれた人体実験により、ある程度の距離ならテレパシーのように会話出来ます。
しかし、エクラは損傷しても尚、襲い掛かってきますので、応戦します。
「兄さん、今からでも遅くない!私と共に…」
(自分の体の事は自分がよく分かる、俺はもう、俺と言う存在が無くなりつつある。だから、俺が俺で無くなる前に早く…)
「兄さん…分かった」
涙を拭うと、左手でロングブレイドを持ち、スラスターを全開にし、突撃します。エクラは攻撃する事無く、左手を広げて待ち構えていますので、私はロングブレイドをコックピットに刺す。
[雛子、俺達は…いい兄妹だったな…]
「うん、そうだね、兄さん…さよなら、いつかまた会おうね…」
[あぁ、さよなら。先に逝ってるぜ]
エクラはエキシージが巻き込まれないようにするためか、エキシージのボディを押し、自らロングブレイドから抜くと落下していき、爆散しました。そして、兄さんの体を再利用されないよう、ビームライフルで完全に消滅させます。
「……よし、早くアヤさんの所に行かなきゃ」
そう思ったとき、何処からか飛んできたビームが右腕に直撃しました。
「きゃあ!なになに?!」
レーダーを見ると無数の敵機の表示が此方に向かってきているようです。
「やっばいなぁ、この状況」
すっかり囲まれてしまい、逃げ場所が無くなってしまった。損傷した機体では離脱も出来そうにありません。
「万事休すってやつね、最後にお姉さまと話したかったな。でも、最後は悪足掻きしますよ」
無数のビームが四方八方から飛んで来るので僅な隙間を見つけて回避し、左手のライフルとレールガンを展開して、周囲の無人機に向けて撃ちます。数機に当たり、爆発するけど、すぐに別の無人機がその空いた空間を埋めました。
「焼け石に水ね、これじゃあ」
エキシージのエネルギーは半分を切っているので全機倒すのは厳しいです。それに回避しながら撃っていますが全て避けれる訳でも無く、少しづつ被弾していき、エネルギーが残り僅かになりました。機体も右腕が肘から無くなり、左足も膝から下が破損、フライトニットも破壊され、武装も殆どを損失しました。
「やっばいなぁ、この状況」
尚も数百機の無人機の軍勢が空を埋めつくしています。
「ゼスト兄さん、思ったより早くそっちに行きそうですね」
全機の無人機のライフルが此方に向くのが見えました。私は死を覚悟し、待ち構えるが無人機は全く動かない。
「あれ?」
私が疑問に思っていると、レーダーに高速で接近してくる友軍の機影が。
「イマさん?でも、あの速度は人間が耐えられる速度じゃない」
その機体は私の上空を通りすぎてフィオの逃げた方向へと行きます。
「何かわからないけど、早くアヤさんの所へ行かなきゃ」
半壊した機体を操りアヤさんの元へ。片足が半分無いので、ライフルを杖代わりにし、歩きます。そして、たどり着いた所にいたのはエクスフェイトでした。
「エクス…フェイトって事は…」
[もしかして、その機体にはひなっちが乗ってる?]
「え?うん、そうだけど、イレアちゃん?」
[よかったです。友軍機が無人機に囲まれていましたので、ハッキングして動きを止めました]
「そっか、そうだったんだね」
[でもぉ、その機体が友軍反応でぇ、雛子ちゃんが乗ってるなんてぇ、思わなかったですぅ]
「イレアちゃん達、その機体に乗ってるの?」
[ううん、乗ってないよ。それより、早くあややんを治療しないと]
エクスフェイトはフィオの手からアヤさんを受けとると、離脱する準備をしはじめました。
「え?イレアちゃん?」
[ごめんねー、先に離脱するから、ゆかみんとフィオレンティーナよろしくっ!]
「えぇ?!」
エクスフェイトはウィングを展開すると飛びさっていきました。私はフィオに近付き、ハッチを開けます。すると、フィオは此方に手を差し出して来ました。私が掌に乗るとフィオはお姉さまの前まで動いてくれました。
「誰だ、お前は」
「…私です、お姉さま。雛子です」
「あたしに妹などいない」
「私が勝手に呼んでるだけなので。なら思い出せてみせます。瑞穂さん、私とお姉さまを地面に下ろしてください」
「なめられたものだ、お前を殺してからその機体を奪う」
フィオは一瞬戸惑ったような仕草をしましたが、膝を突き、私とお姉さまをおろしてくれました。
「お前の様な小娘にやられる私あたしでは無い」
「私は、小娘じゃない!雛子・セナ・シグネットだ!」
「ラツィオ軍大佐、ヴァンテージ部隊指揮官の由華音・ルキアル・フリード・ヴァンテージが、相手をしてやる!」
私が構えると、お姉さまは一気に接近し、右足でハイキックをしてきましたのでそれを同じく、ハイキックで受け止めます。そして互いにローキック、ミドルキックを繰り出して、相殺すると、続いて私は右ストレートを繰り出します。だが、避けられてしまい、お姉さまの右腕の肘打ちが頬に直撃しました。
「ぐっ!」
続けざまに腹部に膝蹴りをされ、髪を掴まれ上体を無理やり起こされると、ボディブローを数発打ち込まれ、最後にかかと落としを受けてダウンしてしまいました。
「この程度か、期待外れだな」
「まだよ!まだ決着はついてない!」
「いいだろう、立ち上がられなくなるまでやってやる」
振り下ろされた拳を転がって避け、素早く立ち上がり、お姉さまに向き直ると、左フックを受け止め、投げ倒します。 追撃をしようとしましたが、お姉さまの蹴りが2発来ましたので腕ですかさずガードすると、少し離れた隙にお姉さまは立ち上がり、素早く近付いてきて右フックを繰り出しました。それを見切り、避けるとそのまま半回転し、バックフィストをして来ましたので腕を受け止め、捻ります。すると、お姉さまは右肘で私の頬を打ってきましたのですかさず2発目をガードし、後頭部に肘で一撃を入れますと、お姉さまはよろけて離れますので、すぐさま近付いてハイキックを繰り出します。お姉さまはガードして受けとめ、私の左右ストレートを2回弾きますが続いて出した右の肘打ちが頬に当たり、今度は1回転して左の肘打ちを当てる。お姉さまは険しい表情になり、右ストレートをしてきましたが、その前に私の左のミドルキックが脇腹に直撃します。そして、左、右とハイキックをしますが、どちらも防がれてしまいましたのですぐさま右のローキックをし、膝に当てて体勢を崩すと、顔面に回し蹴りを当てて、続いて腹部に突き蹴りを当てる。お姉さまがよろけた所にもう一撃を当てようと、蹴りをしましたが、脚を掴まれ、振り回されて地面に叩きつけられてしまいました。
「あぅ!」
起き上がろうとしましたが胸を踏まれてしまいました。
「少しはやるようだな。だが、それまでよ」
「私は…まだ…」
「まだ、抵抗する意志があるのね。なら、その意志はどこまで続くかな?」
お姉さまはそう言うと次は頭を踏んづけてきました。私は脚を掴みますが直ぐに振り払われ、上に乗ってきました。そして、顔面を何度も殴ってきました。ですが、次第に殴る強さが弱くなっていきます。
「お姉…さま?」
不意に顔に水滴が落ちてきましたのでお姉さまの顔を見ますとを表情は変わらないのに瞳から涙が流れています。
「これは…」
「お姉さま…辛いんですね」
「違う!あたしは!私は…」
お姉さまは私の頬に優しく触れると、突然首を締めてきました。
「あたしを惑わすなぁー!」
「おね…さま…」
息が出来ない中、私はお姉さまの手に触れる。
「どうして…あなたは………お前はぁ!」
一旦は弱まった締め付けが再び強くなる。口調や一人称からしますとお姉さまは少しずつ正気に戻ってきているようですが、このままでは息が出来なくて死んでしまうので何とか振り払わなければなりません。
「お姉…さま…思い…出して…ください!」
私はお姉さまの手を掴み、引き剥がす。
「私は…貴方なんて知らない!思い出すも何も、そんな記憶など、無い!」
お姉さまは私の手を振り払うと、私の胸ぐらを掴み、無理矢理起こされ、顔を覗き込むように近付けてきました。なんだか久し振りに間近でお姉さまの顔の見たら自然と笑顔が出てしまいました。
「よく、この状況で笑顔になれるわね!」
「なんだか…嬉しくて…お姉さまの顔を…こんなにも…近くで…見れる事が…」
「っ!」
お姉さまは一瞬、何かを思い出したような顔をしましたが、直ぐに元に戻ります。そして、拳を振り上げますと、お姉さまは再び私の顔を殴ります。
「死ね!死ね!死ねぇ!」
どれくらいの時間がたったのでしょうか、空は星空が彩っています。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「お姉…さ…ま」
殴られ続けた私は起き上がる体力もありません。
「どうして…どうして、あなたはそこまでするの?」
「だって…私は…お姉さまの…パートナー…ですから」
「パー…トナー…?………ひ…な……?」
「お姉さま…記憶が?」
お姉さまの視線が私の顔の少し下、最近購入した、お姉さまが付けていたそっくりチョーカーを見ているようです。
「雛子…そうだ、探さなきゃ、雛子を…私が…守ってあげなきゃ…」
「お姉さま…私は…ここに…」
しかし、お姉さまは私の事が見えていないのか、立ち上がり歩き出す。追いかけようとしましたが、まだ受けたダメージが回復しておらず、立ち上がれずにいました。
「待って、お姉さま…私はここにいます」
何とか地面を這いずり、追いかけますがどんどん距離が離れていきます。
「お…お姉…さま」
離れていくお姉さまの背中に手を伸ばした時、大きな手がお姉さまを包みました。それと同時に私の前にも大きな手が現れました。
「フィオ?」
フィオはお姉さまを捕まえると、コックピットに入れます。私も力を振り絞り、フィオの手に乗ると、フィオは私をコックピット付近まで連れってくれました。中を覗くとお姉さまはメインシートで膝を抱えて座っていました。私も乗り込み、サブシートに座ります。
「雛子、何処にいったの?私を1人にしないでよ」
お姉さまはうわ言のようにずっと、私を探しています。 その姿は見ていて辛いので早くイラストリアスに連れて帰りましょう。私はコンソールのタッチパネルを操作し、イラストリアスに通信します。
「イラストリアス…聞こえますか?こちら…シグネットです」
[こちら、イラストリアスのフェルテ少尉です。シグネット準尉、ご無事でなによりです]
「ありがとう、お姉…ヴァンテージ大佐を…回収しました。これより…帰還します」
[了解しました。…シグネット準尉、息が上がってますが大丈夫ですか?今からそちらに援軍を要請しましょうか?]
「大丈夫…です」
[了解しました。イラストリアス全クルーは貴方の帰還をお待ちしております。…シグネット準尉、気を付けて帰って来てください]
「ありがとう、フェルテさん」
通信を切り、飛び立とうとした瞬間、フィオがショートし、画面に無数のエラー表示が出て、動かなくなりました。
「どうしたの?フィオ」
"もしかしたら、戦闘のダメージが今になってきちゃったかも"
「え?誰?」
唐突にモニターに文字が表示されました。
"フィオに宿ってる瑞穂だよ"
「さっき、アヤさんの言ってた瑞穂さんって」
"うん、私の事!"
「そっか、よろしくね、瑞穂ちゃん」
"よろしく!雛子ちゃん"
「それで、瑞穂ちゃん、フィオの今の状態は分かる?」
"私は機械に詳しく無いけど、体が動かないの"
てっきりショートしたので操作を受け付けないのかと思ってたけど、違ってたみたい。原因が分かって良かった反面、状況は深刻な事態となってしまった。
「電源は入っているから、通信して回収してもらおう」
再びコンソールのタッチパネルを操作して、イラストリアスに繋げます。
「こちら、フィオレンティーナのシグネットです。イラストリアス、聞こえますか?」
[こちら、イラストリアスのフェルテ少尉です。シグネット準尉どうしましたか?]
「フェルテさん、フィオレンティーナにトラブル発生です。回収をお願いします」
[分かりました。エクスフェイトをそちらに向かわせます]
「ありがとう、フェルテさん」
[いえ、仕事ですので。それより、シグネット準尉、体調が回復したようですね、よかったです。それでは]
「あ、フェルテさん…」
通信が切れてしまったので、メインシートに座ってるお姉さまの様子を確認します。お姉さまは最初見たときと変わらず膝を抱えて座っていました。ですが、顔は俯いており、表情は見えません。
「お姉…ヴァンテージさん?」
「…」
呼び掛けても反応がありません。寝ている…とは思えませんが、刺激して暴れられても困るので、大人しくしてましょうか。
「エクスフェイトが来るまで暇ですね」
"由華音は寝てるし、私とお話しよ!"
「え、うん。いいよ」
1人で待ち続けるのも辛かったので話し相手がいるだけでもよかった。しかし、お姉さまは寝ているのは意外でした。
「瑞穂ちゃんって、フィオに記憶があるって言ってたけど、人工知能なの?」
"うーん、合ってるような合ってないような。信じるかは雛子ちゃんしだいだけど、私は別世界の人間だったよ。気がついたら由華音の中に存在し、いつの間にかフィオにも干渉出来るようになってたの"
瑞穂ちゃん、人間だったって言ってたけど、つまり、転生したって事だよね。
「お姉さまと口調が似ているのはそのせいなのね」
"似ている、と言うよりも由華音が私の記憶を使って演じてるが正しいかな"
「そうなんだ。それじゃあ、元のお姉さまの性格ってどんなのだったの?」
"アヤさんの性格を更に軍人らしさを強調した感じかな。さっき雛子ちゃんと生身で戦ってた時がそうかも"
「なるほど、まぁ、ラツィオに所属してたから当然よね。瑞穂ちゃんも元軍人?」
"ううん、私はただの女子高生だよ"
「女子高生って事は、つまりJKって事だよね!」
"えっと、そ、そうなるね"
「わぁ!リアルJKだ!初めて見た!姿は…無いの?」
"えっと、やってみるね"
すると、モニターに黒の長髪のブレザーを着た美少女が映りました。
「わぁ!可愛い!」
"えへへ、ありがとう"
「私も着てみたかったなぁ」
"雛子ちゃんならまだ間に合うよ!"
「でも、私、学校に通った事ないし…」
物心ついた頃には既に教会で暮らしてたし、教会が破壊された後は何処かの研究所に連れて来られて怪しい実験や薬を打たれ、機体の操縦訓練をし、その後は戦場を渡り歩いていたので、特に何とも思わなかったが、アルグの穏健派に保護されてから色々な事を見て、教わり、学んで、色んな物を知った。その中でも、学生と言う存在に憧れを抱いた。今思えば私も年齢的に通ってても不思議ではないよね。
"大丈夫!まだ間に合うよ!今からでも通えばいいよ!"
「そっか、今からでも間に合うよね!それにしても、瑞穂ちゃんの制服姿可愛いね!」
"ありがとー!"
[雛子さん、聞こえますか?回収しに来ました]
目の前にエクスフェイトが着地すると同時に、シレアさんから通信が入りました。
「はぁい、お願いします。瑞穂ちゃんお話出来て楽しかったよ」
"私もお話出来て楽しかったよ!ありがと、雛子ちゃん。またね!"
瑞穂ちゃんがモニターから消えると、エクスフェイトはフィオを抱えて飛び立ちます。
運ばれている道中で暇潰しにとエクスフェイトの改造箇所をシレアさんから聞きました。
型式名、AX-52EA、正式名所、エクスフェイトオートメイテッドと、言うみたいです。脚部にジェネレーターを移設し、更にもう1つ追加したした事によってパワーが上がっているようです。
そして、元々ジェネレータがあった場所と取り外したコックピットの部分に、キャパシタと推進剤のタンクを増設、バックパックはアルテを参考にして、戦闘機形態に変形し、アルテの倍以上の速度を出せるそうです。有人機のアルテはリミッターが設定され、出せる速度は決まってますが、エクスフェイトは理論上、いくらでも出せるそうです。実際は衝撃波で自壊するみたいなので出せる速度は決まってるそうですが。人形形態でも無人機なので、肘、肩、脚にスラスターを増設し、機動力は有人機を遥かに上回るようです。更に格闘はミレアさん、射撃はイレアさんが担当し、シレアさんが回避、ハッキング、電気信号を読み取って動きを予測したり、予測射線を味方と共有する等、敵機にしたくありません。ベストコンディションのお姉さまやイマさんが組んでも敵わないんじゃないかと。
「でも、シレアさん、遠隔操作なんでしょ?電波が妨害されちゃったらどうするんですか?」
[その時は自動的に全ての通信を遮断、セキュリティの強化を自動的にしてハッキングを防止し、AIに切り替わります。AIとは言え、私達の思考パターンを組み込んでいますので、シミュレーション上ではフィオレンティーナとアルテミューナのタッグに勝っています。それにAIには学習機能がついてまして、長引く程、相手が不利になっていきます]
「そうなんだ、1回戦ってみたいな」
[雛子さんが記憶を取り戻してどれくらい強くなったのか、試してみるのもいいですね]
「記憶を取り戻した私は以前より、強くなってるよ?」
[それは楽しみです]
そして、基地に着き、フィオはエクスフェイトに抱えられたまま、格納庫へと運ばれて、空いているスペースへと置かれます。機体が固定されますとハッチを開け、外に出ます。メインシートに座ってるお姉さまはまだ寝ているようですのでそろそろお起こしましょうか。
「ヴァンテージさん、起きてくださーい」
すると、お姉さまはゆっくり顔を上げます。
「ふわぁぁ、よく寝た。ここは?」
「ミューンズブリッジ基地ですよ」
「ミューンズブリッジ基地?」
お姉さまは周囲を見回した後、私の顔を不思議そうに見つめてきます。
「んーっと、貴方は誰かな?」
「え?私の名前忘れちゃったの?」
「忘れたもなにも貴方とは初めて会うし…てか、貴方、顔が痣だらけじゃない、大丈夫?」
「えっと、階段から落ちちゃって…」
適当に誤魔化しましょうか。それにしても何だかお姉さまの様子が変です。名前を言えば思い出してくれるでしょうか。
「雛子ですよ」
「雛子?知らない娘ですね?」
お姉さま、記憶喪失になってしまったようですが、口調を聞く限り以前のお姉さまに戻った感じなので一安心ですね。色々話してればきっと思い出すでしょう。
「えっと、とりあえず外に出ましょうか、ヴァンテージさん」
「?違いますよ、私の名前は飛白瑞穂ですよ!」
私は頭を抱える事になりました。
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