第18話

目を開けると無骨な床が見えました。状況を確認しようと、立ち上がろうとしますが、身体が動きません。

「私はいったい何を…あれ?」

何度も動こうとしますが辛うじて動くのは首ぐらいです。その、首にも力があまり入らないので、うつむいたまま周囲を見ると窓からは日の光が入って来てるのでおそらく日中なのは確かですね。

しかし、それ以外は分からず、ここが何処なのか、そして何故私は拘束さえているのか分からない。

暫くすると遠くで音がし、誰が近寄ってくるのが分かります。私は足音のする方へ顔を向けると、3人の人影が見えました。何か喋っているのが聞こえるのですが上手く聞き取れません。

そして、私の前で止まると髪を引っ張って無理矢理顔を上に向けさせらてます。その顔は若そうだが、目付きが鋭く、いかにも悪そうな顔ですね。他にも男の仲間だろうか、無表情で立つ男が二人いました。

「こいつが例のパイロットか」

「あぁ、件の機体に酷似した機体から降りてきたと言う目撃証言があった」

この人達は最初から私を誘拐する目的だったのかと感じます。

「俺の邪魔をした恩を返さなきゃなぁ!」

「あんまり手荒に扱うなよ、大事な人質なんだ。こいつを使って有利な交渉を進めるのだから、やりすぎるな」

この口調と邪魔されたと言う、出来事で誰かを予測する。恐らく、目の前の目付きが鋭い男はエクラのパイロットでしょう。他の2人も過激派の人間と予測します。しかし、一回だけ邪魔をしただけで根にもっているとか、どんだけ執念深いんだか。

「サァ!早速やろうじゃないか!」

私はこれから起こる事に覚悟しながらも、雛子やアヤが助けに来ると願った。

数時間後…

「気がすんだか?程々にしとけよ」

散々暴力を受けた頃には既に日は沈み、私の身体は傷やアザだらけになり、全身に痛みが走り、体力も限界を迎えていました。私は残った力を振り絞り、男を睨み付けて言う。

「か…必ず、みん…なが、助けに…来る!」

目付きの悪い男は無造作に地面に寝転がった私の頭を踏みつける。

「あぅ!」

「精々、その仲間の助けを気長に待つんだなぁ!」

そう言うと3人は部屋を出ていきました。 私は誰もいなくなって安心感が出たのでしょうか涙が出てきました。

「雛子…アヤ…助けて…」

その後も連日に渡って暴力を受け続け、まともな食事も与えられない私はそろそろ、身も心も限界を迎えそうになってきた。

会話から分かった事ですが目付きの悪い男はエクラのパイロットでゼストと呼ばれており、2人はゼストの監視員で、名前もそれぞれムーヴァス、ウィンガーと言う名前らしい。ゼストはどうもラツィオがラストフィート姉妹で得たデータを元に他の研究所で能力強化を施した人間だと分かりました。

「なかなかしぶといな」

「そうでなきゃ面白くねぇよ」

辛うじて息をしている私を見下しながら3人は何か会話しているようです。衰弱しきった今の私では何か言っているのを聞くのが精一杯。

「雛子…最後に…会いた…かった…な…」

私がそう思っていると視線の先の扉が突如、吹っ飛んできてウィンガーに直撃する。

「何事だ!」

ゼストとムーヴァスは咄嗟に出入り口を見る。そこにいたのはラストフィート姉妹でした。

「ちょっと!ミレア!もし中に由華音さん居て当たったらどうするのよ!中の様子を確認するまで待ちなさいよ!」

「でもぉ、こぉしたほうがぁ、早いしぃ、あ!由華音さん、発見ですぅ」

「ほんとだー!ゆかみん発見!シレア、連絡よろ!」

「もう、了解よ、お姉ちゃん」

どうやらミレアが扉を蹴っ飛ばしたようです。相変わらずマイペースな姉妹に私は脱力しつつも、ようやく来た救助に安堵します。

「てめぇら、いい気になるなよ!」

ゼストがナイフを取りだし、ムーヴァスが銃を取り出すとイレアが先にムーヴァスの銃を拳銃で撃ち抜く。すると銃は爆発し、砕け散りる。

「舐めるなよぉ!」

ゼストがイレアに襲いかかるが、ミレアがイレアの前に割り込み、ナイフを弾くとゼストを投げ飛ばす。騒ぎを聞き付けたのでしょうか、多数の足音がします。

「ゆかみん、今助けるね!」

そう言うとイレアは両手の拳銃を同時に撃ち、器用に私を縛っていた縄を切る。

私は駆け寄ってきたシレアの肩を借りつつ、立ち上がった時に、周囲を見るとミレアは2人の監視員を一撃で気絶させて、ゼストと素手で戦闘し、イレアは入り口で増援と銃撃戦をしています。シレアは私を窓際の壁へもたれさせると、シレアは何処かに連絡しているようです。

私は今、気付いたがここはビル4階相当の高さがあり窓から脱出は不可能です。更に唯一の出入口でイレアが銃撃戦しているので、逃げる事もままならない状況だ。

「ミレア!そろそろ時間よ!」

「はぁーい」

ミレアは緩い返事をするとゼストを回し蹴りで窓とは逆方向へ蹴り飛ばし、壁に叩きつけると、気絶したのか、項垂れたまま動かなくなる。

そしてミレアは急いでその場を離れると、何かが日を遮り、突如壁を突き破ってから何かしらの機体の腕が現れます。

「うわ!え?」

そして、機体の腕を伝って1人の人影が降りてくのが見えました。

「お姉様!大丈夫ですか!…酷い怪我です…!」

「あ…雛子…」

私は雛子とシレアに支えられて雛子が乗ってきた機体のシートに座る。雛子も後ろに座り、ハッチを閉めると直ぐに飛び立ち、建物から離れます。モニターを見ると後方で戦闘が行われていました。その中にはアルテミューナとエスト、アルトゥーラが確認できました。

2機が次々と敵機を落としているその光景を見ているとミレアとイマの通信を傍受します。

[イマさん、例のパイロットさん、いつの間にか逃げられちゃったですぅ]

[ミレア、あれほど油断しないでと言ったのに]

[申し訳ないですぅ。空いた穴から飛び降りるなんて予想外ですぅ]

[ですぅって、貴女と互角にやりあっているのだから、4階ぐらいの高さなら飛び降りると考えなさいよ]

イマとミレアが会話が通信しているのを聞いていると、ゼストは雛子が開けた穴から飛び降りたようですね。

ラストフィート姉妹同様、強化しているのならあれぐらいの高さでは問題無いのかもしれません。

それよりも心配なのはゼストが逃げた事。今、エクラに乗って追撃しに来たら雛子では対応出来ない。今の所は追撃してこないがこのまま見逃す訳には行かないでしょう。

[由華音さん!エクラがそっちに向かいました!私達もそっちへ向かうけど足止めされてて間に合うか分からない!]

[待ってて!ひなちゃん、ゆかねちゃん。こいつら殲滅させたら行くからね!]

「え?え?どうしよう。お姉様は戦えそうにないのに…」

雛子はスピードを上げて逃げようとするが気が付くと既に後ろにいます。

「わわ!」

雛子は慌ててエクラのメイスをロングブレイドで受け止める。しかし、防戦一方でこのままではこちらがやられてしまうかもしれません。

(私がやらなくては、あたしが雛子を守らなければ)

私は力を入れ、操縦桿を握る。全身に痛みが走るが構わず動かす。

「お姉様?」

「雛子…あなたは…私が…あたしが…守る!」

由華音はメイスを弾くと蹴り飛ばして距離をとる。由華音はその隙に今乗っている機体を調べる。

「武装は…なるほど、そう言う事か」

由華音は瞬時に理解し、エクラに挑む。体勢を立て直したエクラはメイスを仕舞い、戦斧を両手に持ってこちらに向かって来るので由華音は腕に格納されているビームガトリングを左腕のみ展開して撃つ。エクラは回避しつつ、接近して来るのでガトリングで牽制し、右手のライフルを移動予測方向へ撃つ。すると、回避しそこねたエクラの左肩に命中し、左腕が爆散するが、尚も突っ込んで来るので由華音ライフルを仕舞い、小剣を取り出して戦斧を受け止めると、腹部のビームを撃つ。

しかし、エクラは撃つ直前で気付き、距離をとるが由華音はそれを隙と捕らえ、接近し、ロングブレイドを振り下ろす。エクラは戦斧で受け止めようとするが、私は僅かに軌道をずらし、戦斧の柄を切る。

「まだ、抵抗するのなら、容赦しない!」

機体を加速させ、急接近させると無防備な右腕を肩から切り落し、頭部に剣を突き刺す。

「雛子は、あたし私が守るんだからぁ!」

腹部のビーム砲を撃ち、エクラの胸部を撃ち抜く。由華音は腹部を蹴り、ロングブレイドを抜くとエクラは暫く落下していく。

「雛子…無事でよか…た…」

「お姉様?お…様…」

私の意識はここで途切れた。

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