第15話

三人で会話しならが歩いて行くとバスターミナルにはラストフィート姉妹がいました。

「あなた達、こういう所でよく出会うわね」

「ゆかみんにひなっちに……知らないお姉さん、こんにちは!ゆかみん達もお出掛け?」

「うん、そうよ」

私がイレアと話しているとアヤが後ろから聞いてきました。

「ヴァンテージさん、この方々は?」

「そう言えば紹介がまだだったね。えっとね、ウィンダムのクルーの…」

「イレアだよっ!よろしくっ!お姉さん!」

「シレアです。よろしくお願いします」

「ミレアですぅ。よろしくですぅ」

「よろしくお願いします…えっと…」

アヤは普段から名字で呼ぶため、名字を名乗ってないラストフィート姉妹には困惑しているのだろう。私はあえて言わないでアヤの反応を見ることに。

「お姉さん、名前は?」

「アヤ・インテンスです」

「じゃあ、アヤやんだね!」

「あ、アヤやん…?」

「アヤさんは、由華音さんとどう言う関係なんですか?」

「副官を…しています」

「アヤさんはぁ、いつから副官しているんですかぁ?」

「に…2年前からです」

アヤがラストフィート姉妹に質問攻めにされているを見ると姉妹のマイペースに着いて行けてないのが分かる。

「お姉様、アヤさん助けなくていいんですか?」

「いいんじゃない?あれはあれで珍しい物が見れたし、それより行きましょ。バスに乗り遅れちゃう」

バスが既に停留所に停まっていたので私と雛子はバス乗り込むと、ラストフィート姉妹もアヤを引っ張って乗り込む。

バスは混んではなく、窓側の椅子に座って少し待っているとバスは走り出しす。アヤは相変わらずラストフィート姉妹の相手をしており、雛子もアヤと話したいのか加勢しているので、今は私一人です。なので流れていく景色を眺めながら記憶を振り返ります。

戦闘中に意識が遠くなり、人格が変わるような時がある。しかし、記憶だけははっきりと覚えているので、人格は変わっても私なのは間違いないでしょう。でも、何故人格が変わるのか分からりません。

「……様、…姉……ら!」

私は時々、自分が誰なのか分からなく時があります。自分は本当に前世で死んだのだろうか。そして、何故この身体に転生したのだろうかと。

「お姉様?聞いてます?」

「っは!えっと何かな?雛子」

「バスがもうすぐ着きそうなので。考え事していましたから声かけづらくてどうしかと」

「あ、うん、わかった」

バスが停車し、運賃を払って降りる。そして階段を登ると広場に出ました。

「わぁ、人が多いですね!えっと何あれ?スペースシャトルが建物の上にある?凄い道路の真ん中を電車が走ってる!」

「あれはアミューズメント施設のオブジェですので本物ではありません。この、ミューンズブリッジシティは少し前まで寂れていましたが、アルグの基地で出来て、都市再生計画により、再発展しました」

「アヤさん、詳しいんですね」

「えぇ、私の地元ですから」

「へぇ、アヤの地元だったんだ」

地元なら詳しいのも頷ける。しかし、何故地元にアルグがあるのにラツィオ軍にいたのだろうか。少し気になるが後で聞いてみようかと。

それにしても懐かしいような感じがする。駅前に似たようなオブジェがあったり、街中に市電が走ってたり、私の地元にも似ている。しかし、最後に見た駅前はこれ程人は居なかったが…。

景色を見ているといつの間にかはぐれてしまいました。

「あれ?皆どこにいったの?」

私は辺りを見渡すと雛子が手を振っています。

「お姉様ー!、こっちでーす!」

私は小走りで雛子達の元へ向かう。

「お姉様、はぐれちゃだめじゃないですか」

「ごめんごめん、景色見てたら遅れちゃった」

「街中を歩くのは久し振りですけど、はぐれないで下さいね」

「はいはい、分かってますよー」

そしてアヤに案内されて入った所は意外にも個人店だった。中はそれほど広くなく、12人ぐらいしか入れそうにありません。

「らっしゃい!おう!アヤちゃんか!久し振りだな!今日はべっぴんさんばかりつれて来たな!」

カウンターの内側にいた蝶ネクタイが似合ってる男性が此方に声をかけてきます。

「お久しぶりです。大将。6人で」

「空いてる所なら何処でも座ってな!」

6人掛けの席が無いのでラストフィート姉妹と雛子がテーブル席に座り、私とアヤがカウンター席へ座ります。

「今日は姉ちゃんと一緒じゃねぇんだな!」

「いえ、姉さんは…」

「アヤってお姉さんいたんだ」

少なくともアヤから聞いた記憶は無いです。もしかしたら設定資料集に書いてあったかも知れないが全部を記憶しているわけではないし。

私は主に機体の所ばっかり見てたし。それにしてもお姉さんってどんな人なのだろうか。私は兄は居たが……元気にしているのでしょうか。

「はい、姉が一人いました」

「へぇ、会ってみたいなぁ!」

「…えっと…今は遠くにいます」

アヤにしては珍しく、一瞬戸惑ったように見えた。語尾も何だか意味有りな感じだし、何かな聞いちゃいけない事を聞いちゃったのかなと、思ったので深くは追及しない事にする。

「そ、それより、アヤ、ここは何のお店?」

「わ、忘れてました。ここは私の家族の行きつけのお好み焼きの店です」

なんとなく目の前の鉄板で察してはいたがやはりそうだったか。メニュー見てもそんな感じだし。後ろを見ると既に雛子とラストフィート姉妹は注文しようとしている所だ。

「アヤのおすすめは何?」

「そうですね、4玉ですかね色々入っていますのでお勧めです」

「じゃあ、それでいいかな」

「では、私も同じ物を」

「はいよ!」

私の目の前で店の大将が生地を作り、焼いています。後ろではイレアが作ろうとしてシレアと雛子が慌ててフォローしている。

「私、ひっくり返しみたかったのよねー!いっくよー!」

「わぁぁ!待ってイレアちゃん!」

「お姉ちゃん!もうちょっと焼いてからだよ!」

何だかあっちはあっちで楽しそうです。

「しっかし、アヤちゃんが友達連れてくるなんてなぁ!」

「いえ、上……はい、一番の友人です」

少し私が睨むとアヤは言い直してくれたので私はにっこりと微笑む。所謂上司の圧力だが、賢いアヤは察してくれたようだ。大将とアヤ会話しているとお好み焼きが出来上がります。

「ヴァンテージさん、箸は使えますか?」

アヤが箸を渡してくるので私は受け取る。由華音は使った事が無かったが、私は記憶を辿り、使い方を思い出して箸を持つ。

「使えたのですね。箸の存在は知らなかったようでしたが」

「え?あぁ、うん。そうなの。アルグにいるときに練習したの」

何とか言い訳したが、由華音は普段からフォークをメインに使っていたし、アヤに何を使っているのか聞いていたぐらい、馴染みが無かった。それが会っていない間に使いこなせていたら驚くだろう。

私は出来上がったお好み焼きを格子状に切って食べます。

「っつ!けど美味しいね。流石アヤのお勧めね」

「喜んでいただけたなら光栄です」

その後も会話をしつつ、食事をするのでした。

「美味しいかったねー。そっちはそっちで楽しそうだったね、雛子」

「えぇ、イレアちゃんを止めるのに必死ですた」

「お好み焼き、おいしかったね!」

「でもお姉ちゃん、次からはもうちょっと大人しくしてね」

「でもでもぉ、お姉ちゃん上手だったよぉー」

私達は店を出た後、特に目的も無く、街中を歩きながら会話をします。すると、サリナの診察が終わったのか、ミナとサリナも合流しました。

「そう言えばアヤ、眼鏡は変えてないのね」

「はい、他に持っていないので」

せっかく私服なのに、眼鏡が変わってないんじゃ台無しだ。しかし、アヤは確実にお洒落目的じゃないだろう。

「アヤって視力悪いの?」

「そうですね、ヴァンテールさんが思ってるより悪いかと」

「そうなんだ。一回取ってみて。素顔が見てみたい」

「え!?えっとその…」

アヤなら快諾してくれると思ったので意外な反応です。

「あれ、嫌だった?」

「いえ、そう言う訳では…」

もしかしたら大勢いるので恥ずかしいのかも知れない。強制するつもりは無いが見てみたい気持ちもある。

「じゃあ、外してみて」

「…分かりました」

アヤはそう言うと、眼鏡を外しました。少しつり目気味な瞳が印象的な美女です。少し照れている顔が可愛い。

それにしても、誰かに似ているような

、気のせいかもしれないが。

「わぁ、アヤさん可愛い」

「アヤやん、可愛い!」

「アヤさん、眼鏡無くてもいいですね」

「アヤさんー、可愛いですー」

「あ、ありがとうございます」

「裸眼も可愛いけど眼鏡無いと不便でしょ?、アヤ、せっかく私服だし、眼鏡も変えよ!」

「え?…え?」

私はそう言うとアヤの手を引っ張って近くの眼鏡店へ入る。先ずはアヤの視力を確認する。

「0.2…アヤ、予想以上ね」

「そうですね、小学生の頃からこの視力ですので」

因みに私は2.0、ミナは1.8、雛子は1.6だった。驚異的だったのはラストフィート姉妹とサリナで測定不能だった。本人達曰く、6.0以上はあるとか。身体能力強化は伊達じゃないらしい。アヤの視力が分かった所でフレームのデザインは私が選ぶ事に。雛子と相談しつつ、複数を選び、実際にアヤに付けて確認します。なんだか妹の眼鏡を選んでいるようで私は自然と笑顔になる。そして私は悩んだ末に決めました。

「よし、これにしよう!」

私が選んだのは赤のアンダーリムの眼鏡。アヤのイメージを保ちつつ、お洒落感を出した物です。

「うん!いいね!」

代金を私が支払い、アヤに早速着けて貰う。そしてそのまま店を出ます。

「ありがとうございます、ヴァンテージさん」

「いいのいいの。私がそうしたかったんだから」

眼鏡は意外と高く、払う直前になって手持ちが足りない事に気付いたが、変える訳にもいかないので最近、回収したカードで一括払いに。貯金残高も一瞬、桁を間違えているんじゃないかと思うぐらいだったから大丈夫でしょう。無事に認証したし。

私はそんな事を思いつつ、一行は本屋へと入る。ラストフィート姉妹はともかく、アヤが別行動したいとの事なので許可をし、私は雛子と折り紙を一式買いました。

私は忙しそうに見えて自由な時間があるので結構消費します。勿論、折った物はクルーにあげたり、部屋に置いたりしている。内心、迷惑じゃないかと思っていますが、こっそり見ると、凄く喜んでいました。流石に一部は破棄していますが…。

私と雛子は用が済んだのでアヤとラストフィート姉妹を探しに行きます。

「アヤどこ行ったんだろ?」

私と雛子は別れて探す事に。ふらふらと歩いている内に漫画やラノベのコーナーへたどり着きました。

「流石にこんなところには…」

いないと思っていたが見慣れた横顔を発見します。

「あ、アヤ?」

紛れもなくアヤがラノベコーナーで真剣な表情で本を選んでいます。話しかけようかと悩んでいたらアヤがこちらを見ていました、驚いた表情で。

「ヴァ、ヴァンテージ…さん…?」

「…えーっと、私の用事が終わったからアヤを探しに…」

非常に気まずいが見てしまった物は仕方がない。固まっているアヤの元へ歩いていくき、手に持っている本を覗き見ます。

「エルドラド、遥かなる君を求めてIV。へぇ、アヤってファンタジー好きなのね」

読んだ事は無いが表紙のキャラの服装や、名前的にそんな感じだろうと勝手に想像します。すると、アヤが嬉々とした顔で語り始めました。

「はい、私達は普段から命のやり取りをしていますのでこう言う非現実的な世界に憧れると言いますか…」

話していると途中で我に返ったのか、止まる。

「アヤ?どうしたの?」

「いえ…レジに行ってきます…」

そう言うとアヤは本を持ったままレジへ向かう。その背中を見送るとセナがやってくる。

「あれ、お姉様アヤさんは見つかりました?」

「あ、うん。今レジに行ってるから」

暫くしてアヤとラストフィート姉妹が戻ってきました。

「イレアちゃん達も一緒だったんだ」

「はい、レジで出会いました」

「そっか、探す手間が省けたね」

目的は達したので私達は店を出ると外は既に暗くなっていました。

「あー、もうこんな時間か、バスがなくなる前に帰ろっか」

「そうですね、帰りましょ、お姉様」

そしてバスに乗り込み、基地へと戻ります。私はイラストリアスに戻ろうかと思ったが、まだ私物がウィンダムにあるのでアヤ達と別れてウィンダムの部屋へ戻る。そして、買った物を机の上に置き、ベッドへ寝転がる。

「はぁー、疲れたぁ。やっぱここはリラックス出来るなー」

「イラストリアスにも私室あると聞きましたが?」

「んー、やっぱ誰かと居るのが落ち着くって感じかなー」

イラストリアスでは広い部屋を私一人で使っているのでなんとなく落ち着かないので私は誰かと一緒の方が落ち着くのです。今、雛子は髪をほどいて櫛でとかしていました。何度も見た光景だが、ついつい美しくて見とれてしまいます。

「どうしました?お姉様」

「あ、えっとね、雛子の髪が綺麗だなーって思って」

普段からポニーテールにしているのでほどくと意外と長い。そしてさらさらしています。

「そうだ!お姉様もやってあげますね!」

「え?うん…」

雛子は私の後ろにまわり、持っていた自分の櫛で私の髪をとかします。前世ではショートカットだったので櫛を使う事は無かったのですが由華音は腰まである長さのロングヘアなのでとかしがいがありるのでしょう。それにしても誰かに櫛をやってもらうのは癒されます。気持ち良くてなんだか眠たくなり、意識が無くなりそうになった瞬間、雛子が離れる。

「終わりましたよ、お姉様」

私は自分の髪を触ってみる。とかす前よりもさらさらになっているのが分かります。普段から手入れを欠かさないが櫛をやるだけでこんなになるとは驚きですね。

「ありがと。ねぇ、雛子って転生とか信じる方?」

「え?突然なんですか?お姉様」

「えっとね、ちょっとさっき行った本屋でそう言うのがあったから…」

「なるほど、今そう言うのがブームですからね。私は、そうですね…別世界に行けるのは面白そうです。お姉様はどうなんですか?」

「私は…」

今まさにその状態だ。しかし、私は本当に転生したのか疑問な所である。人は他人になれるのだろうか?何故私はフィオレンティーナを操縦できるのか、ゲームとは違うのに。

「お姉様?どうしました?」

「あ、ううん、なんでもない。そうね、私は転生を信じているかな」

「そうなんですか。あ、お姉様、実は誰かの生まれ変わりとかと言う自覚とかあるんですか?」

「そ、そんな事無いよ。多分…」

一瞬慌ててしまったが恐らくバレてはないだろう。

「そうですよね、普通は自分が実は誰かの生まれ変わりって思わないですよね」

そう言って雛子は笑います。私もつられて笑いますが内心では笑えない状況です。今のこの体には前世の自分と肉体の持ち主の由華音の記憶が混ざっている状態だ。その事を話すべきか、それとも秘密にするべきか、親しい雛子になら話しても良いかもと思いますが今は信じてはくれなさそう。いつか話す時が来ると私は思いたいのでした。

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