第12話

イラストリアスに着艦し、機体から降りるとアヤが出迎えてくれました。

「見事な指揮でした。ヴァンテージ大佐」

「ありがとう。ねぇ、アヤ」

「何でしょうか?ヴァンテージ大佐」

「私、ラツィオを抜けて大佐じゃないから、名前でいいよ」

「そうは行きません、私はヴァンテージ大佐の副官です」

「じゃあ、大佐は禁止で。上官命令です」

「…かしこまりました、ヴァンテージ…さん」

アヤが少し照れた顔で言うので私は珍しい物が見れたと満足する。

「大佐!」

呼ばれて振り向くとそこにはシャウラがいました。

「シャウラ!久しぶりね!」

「大佐?ですか?」

「え、あ!うん、ラツィオを抜けて丸くなったのかな?」

「そう言う事でしたか」

何とか誤魔化したがいずれ本当の事を話さなければ。

「大佐のフィオレンティーナ、見た感じ、同型機のパーツを組み合わせあるようですが」

「えーっと、やっぱシャウラにはばれちゃうね」

「長年、大佐の機体を整備してますから。それより、フィオレンティーナをアップデートしましょう」

「ありがと、シャウラ、フィオをよろしくね」

「はい!」

「ヴァンテージさん、皆さんがブリーフィングルームでお待ちです。早く行きましょう」

「分かった」

私は雛子とアヤと一緒にブリーフィングルーム行く。そこには機動兵器のパイロットの方々がいました。

「大佐!お久し振りです」

「大佐!ご無事で!」

私が入るなり、周囲に集まり、声をかけてきます。笑顔で対応すると共に、こんなにも慕われていたと言う事を実感しました。

「皆さん、再会して話したい事がありますと思いますが、今からブリーフィングを始めます」

アヤがそう言うとパイロットの方々は私の前に整列し、椅子に座りました。私はアヤに促されて巨大なモニターの脇にある椅子に座ります。雛子はイラストリアスのパイロットに混じっていました。そして、よく見ると、ちゃっかりミナとサリナもいます。

「整列しましたね、では始めます。今回、ヴァンテール大佐を保護してくれましたアルグの戦艦、ウィンダムの救援です。レーダーによりますと、アルグ過激派に囲まれて危機的状態との事です。なので、イラストリアスは現在、ウィンダムのいる空域へ向かっています。尚、フィオレンティーナは現在改修中ですのでヴァンテージ大佐はアルテミューナでの出撃となりますので、ボーセル少佐にはアタッカーでの出撃をお願いします」

「了解だ!」

「シグネットさんはアルテミューナが1人乗りなので、ショットを貸します。それに乗って甲板からイラストリアスの護衛をお願いします」

「はい!」

「では、ウィンダムを捕捉次第、連絡しますのでそれまでは休憩しててください」

ブリーフィングが終わりましたのでストレッチしてると、部屋の後ろで雛子とミナ、サリナ、スイハ、ロジェスティラが仲良く会話してるのが見えました。

「私が言わなくて無事に仲良くなれたようね」

すると、パイロット達が私の元に集まって来ました。

「ヴァンテージ大佐!ぜひ、お話を聞かせてください!」

「え、えぇ、良いよ」

私はこれまでの経緯を話しました。そして、話終えると、皆準備の為、何処かへ行きました。

「お疲れ様です、ヴァンテージさん」

一息ついてるとアヤが珈琲持ってきてくれました。

「ありがと」

珈琲を飲みながら私はアヤの事を思い出します。

アヤ・インテンス大尉。名字は違うが恐らく、ヴァンキッシュ大将の妹でしょう。何故、名字が違うのか分かりませんが。

ラツィオでは大佐以上になると、業務も増えてくるので部下の一人を副官に出来る。由華音が選んだのは当時、唯一私に反抗的な態度をとっていたアヤでした。副官になった後も態度は変わらなかったが、一緒に任務をこなしていくら内に態度が軟化していった経緯があった気がします。

「ヴァンテージ大佐、ようやくゆっくりと話せますね」

「えぇ、そうね。アヤはアーク・ロイヤルから脱出した後はどうしてたの?」

「ヴァンテージさんから脱出命令が出た後、艦長以外は全員脱出しました。直ぐに味方の艦に救助され、ラツィオのノースシーロード基地へ。アーク・ロイヤルを失ったヴァンテージ部隊は完成されて放置されてた大型空母イラストリアスを受領、ヴァンテージさんの捜索を任務を開始しました」

「そして、あの海域で再会って事ね」

「そうです。まさか、ヴァンテージさんがアルグになっているのは予想外でしたが」

「あはは…私もこんな事になるとは思ってなかったよ」

「でも、こうしてゆっくり会話出来るのは良いことです」

珈琲を飲み干すと、誰かの端末から着信音がします。

「失礼、はい、分かりました。ヴァンテージさん、ウィンダムがいる海域に近付いたようです」

「分かった。出撃するね。雛子行くよ」

「はい!」

「では、機体に案内します」

アヤを追いかけるように部屋を出て、通路を歩いているアヤの隣に並んで歩きます。

「こちらです。ヴァンテージさん」

「これが、アルテミューナ」

歩きながら見上げるとフィオレンティーナと良く似ている。リフトが上がり、アルテミューナの胸部付近たどり着くと隠されていた蓋を開けて中のレバーを引くとハッチが開きました。

「どうぞ」

「ありがと、アヤ」

私は笑顔でアヤにお礼を言うと中に入り、電源を入れる。ハッチが閉まると、モニターが映り、文字が表情されます。


'XJL-12/P ALTEMYUNA'


「型番からするとフィオの後継機なのね」

実際に外見も似ているが、それだけであり、固定武装はレールガンと腹部のビーム砲のみ。他の違いは複座では無い、ライフルが一丁、ミドルブレイド一本と、まるでテスト機のような武装です。

「武装が少ないわね」

[アルテミューナは新型機としてのテストとしての側面が強いので、武装が少ないのは仕様です]

「分かったわ」

僚機が発艦していく中、準備を終えた私は順番を待ちます。そして、台座が動きカタパルトへ。

[アルテミューナ、発艦準備完了です。ヴァンテージ大佐、お気をつけて]

「ありがと、でるよ!」

スロットルを最大にし、最大推進状態リヒートにするとカタパルトが作動してアルテミューナを空へ打ち上げる。アルテミューナにも、フィオレンティーナ同様に空を飛ぶためのバックパック、エールユニットと呼ばれる、翼と追加スラスターの付いたユニットを付けています。

私は高度を上げ既に編隊を組んでいる僚機を確認し、合流します。

[ヴァンテージ大佐が来ましたので行きましょう]

ボーセル少佐のアタッカーが先行し、私がその後を、周囲を僚機が、最後尾にエストとアヤの機体がいます。

「アヤ、その機体、片腕無いけど大丈夫なの?」

[主な役割は索敵メインですし、片腕だけでも戦えます。それに、ヴァンテージさんが守ってくれると信じてます]

「まぁ、そうだけど」

[レーダーに反応あり、数は30。エクラはエストと別空域で交戦中です]

「30か、エクラが居ないなら、苦戦はしなさそうね。それにしても、あの娘、いないと思ったら…」

[ですが、数が多く油断は禁物です]

「分かってる。それじゃ、私が先行して注意を向けるね」

私は乱戦している空域へ飛んで行き、射程に入った1機をレールガンを狙いを定め、一瞬止まった瞬間を狙い、発射する。命中し、爆発すると、アルテミューナに気付いた2機が此方に向かってきたので右腕で抜刀と同時に2機を切り裂き、爆発に紛れて加速すると、黒煙から飛び出して1機を袈裟斬りにする。

[お見事です!大佐!援護します!]

僚機がやってきてライフルを連射し、私の回りにいた敵機が避けきれず、3機落ちていく。

「味方の撤退を支援する!付いて来て!」

[了解!]

通信から威勢の良い返事が返ってくるのを聞いて、私はスラスターを吹かし、ウィンダムに群がっている1機を切り落とし、近付いてきた1機を振り向き様に回し蹴りを、アルマスが回転しながら落ちていく所をウィンダムの副砲が撃ち落とす。そして、私を落とそうと敵機が来るが、すかさずウィンダムが近付けさせないとばかりに主砲を放ち、2機が落ちて行く。

[ゆかみん!助けにくるって信じてたよ!]

「お世話になったもの、見捨てるわけないじゃない」

由華音はイレアの腕前に感心しつつもウィンダム所属のアルマスがウィンダムに格納されていくのを確認したら、スラスターを吹かし、ライフルで右側にいた1機を撃墜しつつ、高速で近付いて1機を袈裟斬りにする。そしてアルテミューナが飛び上がると、背後にいたウィンダムから放たれたミサイルが飛んで来て驚いた2機が避けきれずに被弾し落ちていく。違う所で僚機が敵機を囲み、2機落としていた。

こちらは私を含めて8機となるが、相手はまだ13機と数で負けている。しかし、こっちには高性能なアルテミューナがあるので戦力差は問題は無いと考える。

「敵機の数は僅かだ!油断せずに行くぞ!」

[了解!]

由華音はレールガンを2発撃つと直撃した機体と避けたが掠れた2機が爆発し、散開した僚機が2機落としていく。

「ウィンダムの狙いは正確だ。あたしの合図で指示した方向へ回避せよ」

由華音は指示を出しつつ、近付いて来た1機を切り捨てると、追いかけてきた1機を誘導し、ボーセル少佐が切り刻む。

相手もようやく分が悪いと思ったのだろう、少し離れた所で集まって編隊を組みはじめました。

由華音は今の内にウィンダムの回りにいた僚機の元へ行くと、ウィンダムから通信が入る。

[ゆかみん、ゆかみん、スモーク・ディスチャージャーを撃つから敵機の位置よろしく!]

「わかった!」

由華音は通信を切り替え、僚機に繋げる。

「各員、ウィンダムがスモーク発射するので散開し、敵座標を特定してあたしに送れ!」

由華音の後ろにいたウィンダムからスモーク・ディスチャージャーが放たれ、敵機とアルテミューナの間にスモークが展開される。僚機は散開すると、敵座標がアルテミューナに送られて来るので座標をウィンダムへ送り、射線上の僚機には回避方向を指示する。

そしてウィンダムから主砲が放たれ、3機撃墜する。

「主砲を避けた所を狙え!」

僚機は散らばり、それぞれの位置に付く。ウィンダムの主砲を辛うじて避けた所を狙い撃ち、2機を撃墜、1機をボーセル少佐が袈裟斬りに。そして最後の1機がスモークから出て来た所で接近すると、敵機はライフルを此方に向けてくるが、由華音は撃つ前にその腕を切り落とし、腹部に剣を刺し、動かなくなった敵機を蹴っ飛ばして抜くと、敵機は暫く落下した後、爆散する。

「終わったか……………あたしは、私はいったい…」

戦闘中、何かに突き動かされていたような感覚だったが、なんだったのだろうか。

[大佐!大佐!どうかいたしましたか?]

「あ、あぁ、問題無いわよ。私は一旦、ウィンダムに着艦するから、貴方達は先にイラストリアスへ帰投して」

[了解です!]

[じゃあ、私達は先にウィンダムへ帰投しますね]

「うん、また後でね、サリナちゃん、ミナちゃん」

いつの間にかエクラを撃退したエストがいました。

僚機を見送った後、暫く私は自信の記憶を整理していました。戦闘中、私は自分を見失っていたような気がします。

「私はいったい…」

[ヴァンテージさん、的確な指示、お見事でした]

アヤの乗っている機体は武装はあるが損傷しているので戦闘には参加せず、索敵した後はイラストリアスの甲板にいたのだろうと思った。

イラストリアスに帰投しなかったのは、私の指示を待っていたのかなと。それよりィンダムに着艦する事を伝えなければ。

「アヤ、ウィンダムに着艦するわよ」

[かしこまりました]

私はシレアにウィンダムに着艦すると伝えるとウィンダムの後部のハッチが開きます。私とアヤは速度と高度を合わせて着地し、そして指示された場所に機体の固定を確認したら降ります。アヤも隣に止め、降りてきました。

「おう!嬢ちゃんおかえり!」

「アンステッドさん、ただいま」

「ん?そっちの嬢ちゃんは?」

アンステッドがアヤを見つけ、訪ねてくる。

「あぁ、この方は…」

私が言おうとするとアヤが手で遮りました。

「ヴァンテージさん、ここはお任せください。初めまして、ヴァンテージ大佐の副官をしております、アヤ・インテンス大尉です」

アヤは一礼する。

「お、おぅ、どうも。それより、嬢ちゃん、艦長が呼んでたぜ。ブリッジにいってやりな」

「ありがと、アヤ、向かうよ」

「はい」

私が先行し、アヤが半歩後ろを歩きいて行きます。そしてブリッジへと繋がる扉が開くと、熱烈な歓迎を受けました。

「ゆかみん!」

「由華音さん」

「由華音さぁん」

ラストフィート姉妹が私に抱き付いてきます。

「ど、どうした?!急に」

「えへへー、何となく」

「ヴァン……」

アヤが呼んだような気がしたが、気のせいでしょう。

「由華音、仲直りは出来たようね」

後ろから声がしたので振り向くとイマさんがいました。私は抱き付かれて気が付かなかったが少し前に入ってきたようです。

「あ、イマさん。うん、そうなの」

ラストフィート姉妹が離れないので動けないがイマがラストフィート姉妹に離れるよう促すと大人しく離れます。

「ヴァンテージ大佐、仲間と和解出来てなによりじゃ」

「艦長…」

ヴァルカン艦長が立って微笑んでいます。

「あれ?ケイさんは?」

「ケイは仲間を庇って、機体が損傷し、大怪我を負ったから、医務室で治療中よ」

「そっか」

治療中なら安心です。それにしても、仲間を庇うなんて、ケイらしいですね。

「そう言えば由華音、雛子は?姿が見当たらないけど」

「あ、イラストリアスの甲板に忘れてきちゃった」

「あら、由華音らしいわね、迎えに行きましょうか。確かイラストリアスはウィンダムも着艦出来るぐらいの大型空母だったわよね?」

「よくご存知ですね。はい、そうです。イラストリアスは次期ラツィオの主力空母として設計されますので、ウィンダムぐらいなら着艦出来ます」

「確かに、上空から見たとき、大きかったけど、何メートルあるの?」

「全長900メートルです」

「900!?よく、今まで無傷だったね」

「武装も装甲も強力ですから」

「では、イラストリアスに向かいましょう、艦長」

「そうじゃな」

ウィンダムは方向を変え、イラストリアスを目指しました。

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