第1話
「いたっ!」
狭いコックピット内に鈍い音がする。乗機XJL-9/1、全高約20メートルの機体、フィオレンティーナのコックピット内に居た私は、突如、強い衝撃を受け、目の前のコンソールに思いっきり頭をぶつけた。
「あれ?私、生きてる?しかもこの体は…」
モニターに映る自分の姿を確認して私は確信します。
この体は私の世界で流行ってた対戦アクションゲームの世界と酷似している、と言うかその世界その物でしょう。
そしてこの体は由華音・ルキアル・フリード・ヴァンテージと言う、名前が長っらしい敵側の容姿端麗な士官です。
そんでもって私は飛白瑞穂と言う、ただのゲーマーの女子高生です。突然の出来事に混乱する私だが一つ一つ記憶を整理する事にします。
ここは先程も言ったがゲームの世界でどういう訳か、私はそのゲームに出てくる推しのキャラになっている。そして今乗っている機体はゲームで使いまくってたフィオレンティーナという事もこの身体の記憶から自然と理解した。この機体は強いが扱いづらく、使う人はごくわずかだった。
「ヴァンテージ大佐!大丈夫ですか?」
コックピットを覗きこむように一人の青年、確か整備兵のシャウラだったかな?が表れました。
「あー、うん、大丈夫よ」
ぶつけた額を擦りながら私は答えます。何故ヘルメットを外していたのが疑問ですが。
ふと、見上げると何故か、シャウラは驚いた顔で私を見ています。私はなぜシャウラがそんな顔してるかわからず、考えてしまうが先ほど呼ばれた名前で思い出す。
由華音の本来の性格はクールビューティーと言われているほど知的で美人と言われており、どんな時もクールな振る舞いをすると言うキャラだはず。…記憶が正しければ。なのでさっきのような反応したら違和感を持たれるでしょう。
私は表情を直し、わざとらしく咳払いし、シャウラを見て言う。
「…大丈夫だ、それよりフィオレンティーナの補給は終わっているか?あとさっきの衝撃はなんだ?」
咄嗟に声を低くし、それらしい発言をしたお陰か、バレずにすみました。
「はっ!もうすぐ終わります!衝撃については現在ブリッジと連絡をとっていますが、応答がありません!」
「ふむ…あの衝撃だと、艦が損傷してる可能性がある。補給が終わり次第、退艦準備を艦長に伝えておけ」
私はこの後の展開を思い出す。確かこの後、主人公側の一部の勢力がラツィオの旗艦である、空母アーク・ロイヤルに総攻撃し、轟沈、指揮系統が混乱、次々と主力艦が撃破され、壊滅状態になり、最終的に主人公と総帥がガチバトルしたなーって、その総帥がやたら強かったイメージがあったなーってドリンクを飲みながら考えてた。
「ヴァンテージ大佐!緊急事態です!」
「どうした?」
シャウラが慌ててやって来たので慌ててクールを装う。
「現在確認したところ、対艦ミサイルが右舷に直撃したとの報告が!さらに第二波が接近中との事です!」
「え?」
「ヴァンテージ大佐だけでも発艦させます!準備してください!我々はその後で脱出します!」
一瞬間抜けな声を出してしまったがどうやら聞かれてないようで安心します。私はヘルメットを被り、ベルトを締め、ハッチを閉める。補給が終わったのか機体がカタパルトへ向かう。
[ヴァンテージ大佐、射出準備完了しました。どうかお気をつけて]
「わかった。出る!」
私はそう言うとスロットルを全開にし、母艦から飛び立つ。暫く何もない海原を飛んだ後、振り替えると、脱出挺が続々と海に出ていってるのが見える。
全ての脱出挺が出た直後、第二波のミサイルが着弾していき、大爆発を起こした。
母艦が沈んでしまったので何処に帰るか考えながら飛んでいると前方から急接近してくる機影をレーダーが捉える。
「やっぱり来るのね…」
その機影には見覚えがあった。私の兄がよく使っていたのだから。
「アルグの高性能機、AX-54E、エクスフェイト…」
懐かしい感じがするが目の前の相手が兄では無く、名も知らない敵ということなのだ。確かパイロットは由華音より若いパイロットだったかな?うろ覚えなのは興味が無かったからである。
私はフィオレンティーナと言う可愛い名前とパイロットが美人だから選んだ、と言うシンプルな理由です。
ただ、使いにくく、投げ出しそうになったが努力と根性と忍耐で克服しました。前世で兄と出た公式の大会でも使ってるのは私だけだったし。
[世界は変わらなくちゃいけないんだ!その為にもあんたを倒す!]
前方の敵機体から通信が入る。
内心ゲームではどうやってやってるのか疑問だったが通信をオープンにして相手に無理矢理聞かせていると理解した。この後、由華音は何て言ってたかなーっと台詞を思い出す。
「えーっと…調子にのるな!何も知らない若造が!我々には我々の正義があるのだ!」
そう言いつつ、私は腹部のビーム砲を撃つ。
実際はそんなに歳は離れてない気はしたけど実際に言ってるし、一度は言ってみたかった。エクスフェイトは難なく回避し、ビームライフルで反撃してくる。
当然、撃ってくると思ってたのでこっちも回避し、反撃します。そして、左手のビームライフルを腰に収納し、腰から高周波ロングブレイドを引き抜くと、エクスフェイトは突っ込んできた勢いのままライフルを投げ捨て、大型高周波セイバーを出し、大降りに振り上げこちらに斬りかかる。
貴重な射撃武器であるライフルを投げ捨てて良いのかと思いつつ、私はロングブレイドで受け止める。鈍い音と共にブレイドとセイバーがぶつかる。
しかし、空中では踏ん張れる足場が無い上に相手が全速力で来たため、フィオレンティーナはそのままエクスフェイトに押されてしまう。
このままでは不味いと思い、私はスロットルを全開にし、勢いを押さえる。
[あんたの正義が間違っているのなら、俺が修正してやる!]
なんだかこちらが悪だと言いたげな感じだが実際色々やらかしてる記憶があるから何とも言えない。
「指図するな!青二才な奴に何がわかる!」
喋りながらの戦闘は大変だ、よくゲームではやっているよね。私は相手を押し返し、右腕に付いているレールガンを牽制目的で撃つ。
案の定、エクスフェイトは素早い動きで回避し、腰にある砲身の長い長射程ビーム砲を放ってくる。アニメではビーム同士をぶつけているが当たらなかった場合のリスクが大きいので回避し、右手のビームライフルで相手のビーム砲の砲身を撃ち抜く。
砲身が小爆破するがセイバーを構えて突っ込んでくる。私は右手もライフルを収納し高周波ショートブレイドを持ち、相手に向かって加速し、ショートブレイドで相手の剣を受け止める。両者、そのままの勢いで剣と剣がぶつかった為、内心ショートブレイドが折れないかヒヤヒヤしたが思ったより頑丈そうだ。振動は凄かったが。
[俺はあんたがやったことは知らないが、あんたたちがやった悪事は知っている!]
内心、言ってる事はほぼ一緒だろと心で突っ込みつつ、押し返します。
「世界を統一するには、仕方がない事だ。戦争を終わらせる為にも、平和の為にも!」
[だからといって無暗に弾圧していいわけが無い!それで一体どれくらいの犠牲を出したのか知っているのか?!]
エクスフェイトが再びスラスターを吹かして突っ込んでくる。
「それは必要な犠牲だ!戦争が長引けば犠牲者は増える一方だ!」
私はロングブレイドでなぎ払おうとしたが相手のセイバーに防がれる。
[ならば!戦わずに解決する方法を考えないのか!]
「そんな方法があれば、とっくにやっている。刃向かってくるなら、戦うしかないじゃない!何故それが分からないのだ!」
セイバーを振り払うと、エクスフェイトの腹部に蹴りを入れる。エクスフェイトは落下してくが、途中で姿勢を立て直す。
[だからと言って、無差別に人を殺して良いわけがない!]
…何だか話が通じてないような気がするが、無視しておこう。
「若造にはわかるまい。我々がどれだけ苦悩をしてるかを」
[虐殺する事が、苦悩だと言うのか!]
「平和に仇なす者を消して何が悪い?何がいけない?」
[死体の上に成り立つ平和になんの価値があるんだ!]
エクスフェイトがセイバーを掲げて迫って来たのでレールガンを撃ちます。一発は避けられましたが、もう一発は胸部に命中しました。
「貴様も、平和の為の礎になれ」
この時、由華音は油断してたのだろう、エクスフェイトは煙の中から飛び出してきました。
「なっ!」
[平和の為に必要な犠牲があるもんかー!]
突然、表れたエクスフェイトに驚愕し、隙だらけのフィオレンティーナの左腕を肘から切り落とされた。そして続けざまにフィオレンティーナの頭部に蹴りを打ち込むエクスフェイト。
フィオレンティーナはそのまま立て直せずに吹っ飛ばされると、その先には爆発して轟沈してる友軍の戦艦がいた。
(あぁ、そう言えばこのキャラはここで死ぬんだっけ。でも、私は、生きたい!)
そう思った私はなんとか体制を変え、戦艦が映った瞬間、腹部ビーム砲を戦艦に放つ。戦艦は大爆発し、フィオレンティーナは、爆発に巻き込まれる。爆風に包まれる中、エクスフェイトが何処かへ飛んで行く後ろ姿を私は見ていた。
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