伍【詮議の魔――扉を破りし事】・14
<side 玄海>
用事を済ませた帰り道、警察局内で北条静鳳と出会った。
『彼』の引き渡しで来ただけだから、嫌な顔に会っってしまったというのが少し顔に出てしまったらしい。
「嫌な顔をしますね」
「いや、それは申し訳ない」
彼女は顔を伏せた。
「あ、あの……おじさんから聞きました。優秀な後輩だったと」
「ああ……ちゃんと言っておくべきだったな。兵部卿にはお世話になったんだ」
「ええ。なので、生意気を言って申し訳ありませんでした」
一度頭を下げ、こちらをじっと見た。
前とは違う、うるんだ瞳。
そうすれば、少しだけは可愛げがある。
「若い子に、そんな見られると照れるぞ」
「え、ああ……申し訳ありません」
そのままするりと横を抜けていく。
「あの」彼女は振り返り、俺を呼び止めた。
「あの、ですね……今度、おじさんの昔話を聞いてもいいですか」
「なら、飯でも行こう。良い店、連れてってやるよ」
彼女は少しだけほほ笑んで、小走りで去っていった。
なんだったんだ。
「……」
今度は小鹿がこちらを見つめていた。
「なんだよ」
ただ信じられないものをみるような目だった。
そんな目で見られるような言われはない。
「あの、玄海さん……この前行ったとこじゃない、いい店って知ってます?」
「ああ? あの店でいいだろうが」
「本気で?!」
なんだよ、と小鹿を見る。
「土御門家でお世話になっているお店、紹介します。こっちにしてください、絶対に」
「どういうことだよ」
「知りませんよ、こっちが聞きたい」
俺は、訳が分からなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます