第4話 チュートリアルその2
「とりあえず、ぶつかってきたことくらい謝れ馬鹿!!!」
「ふげっ!!!」
思いっきり頭を殴る。なんかものすっごい音がしたが、しょうがないと思う。こいつが反省すべきだ。
「あはは……ファル、そういうとこだよー」
「はあ、怒らせたら一番怖いのは君が一番知ってるだろうに。君も学ばないね」
後ろでファルに対し声をかけている二人も、俺たちの幼馴染だろうと思う。
「えっとー……名前は?」
「ふふっ、私はルリア。こっちはウェルン。こっちでもよろしくね?」
「なっ……僕の自己紹介が盗られた……こほん、まあいいでしょう。僕も、よろしくお願いします」
「ああ、ちなみに僕はファントムだ。こっちでも、よろしく」
僕たちはお互いに握手をする。その直後、再び頭の中に声が響く。
《冒険者登録を確認。クエストが進行します。続いては冒険者協会の訓練場へと向かってください》
どうやら、チュートリアルが進んだようだ。なら、とりあえずはチュートリアルを進めようかな。
「じゃあ、僕はチュートリアルするから」
「そうなんだ。あ、そうだ。フレンド登録だけしておこうよ! チュートリアルクリアしたら一緒にやりたいし!」
「わかった、いいよ」
そんなこんなで、フレンドという欄にファルとルリアとウェルンの3人が加わった。フレンドであればゲーム内メッセージをすることが出来たり、フレンドとパーティを組んだときに経験値のボーナスがついたりする……らしい。まあ恩恵を受けるとしたら少しあとになるだろうね。
「じゃあ、訓練場へレッツゴーです」
♢♢♢♢♢♢
数分歩いてようやく着いた。場所自体はさっきの説明で軽く教えてもらっていたけれど、如何せんこの建物は大きいから移動に時間がかかったのだ。
「ん? 新人か?」
「はい」
先客がいるようだったが、見てみると1人気配がまるで違う強そうな人がいて、他は僕と同じような感じ。つまりはまあ、これがチュートリアルの場所であってるってことなんだろう。
「……てめぇは剣士だな、じゃあこっちだ。とりあえず剣を振ってみろ」
強そうな人……これからは教官と呼ぶが、教官に言われた通りの場所では、同じく剣士のプレイヤーたちがへろへろになって剣を振っている姿を見た。
「これは……よし、しょうがない」
現状を見た僕は、こうならないために教官へと話しかける。
「すみません、剣を振る手本を見せてくれませんか?」
「ああ? 手本だぁ? ……へぇ、てめぇはそこら辺のとは違うってわけかよ。面白ぇ、見せてやる」
僕の差し出した剣を取り、色々な剣の振り方を見せてくれる。剛剣や柔剣などの様々や流派の技だ。どれだけ技の引き出しがあるのか少し怖くなる。が、だいたい覚えた。
「――よっ、ほっ。せいっ!」
見た技を自分の中で噛み砕いてかけあわせたり改善したりしていく。そしてそれは、自身にのみ使えるたった1つの新たな体系となる。
「……はっ、やっぱりてめぇは凡とは違ったか。久々におもしろいもんが見れたぜ」
傍から見ればただの
「よし、合格だ。お前はもう行っていいぞ。魔力に関することが学びたけりゃ、この奥にでもいきゃ教えて貰えるさ」
周りにいた他のプレイヤーたちは目を丸くする。なんで自分たちはダメでそいつはいいんだ、と抗議をしようとするも、すでに疲労で体が動かなかった。
「あん? なんだ、不満か? 俺は”教官”としての立場を担ってんだ。教えてくれって言われたら教えるに決まってんだろが。勝手に早とちりしたのはてめぇらだ」
その言葉を聞いたプレイヤーたちは動ける人から次々に教えを乞いにいく。僕は、その光景を見ながら、一言だけ残す。
「ありがとうございましたー」
そうして、一瞬のうちに戦闘訓練を終わらせ、言われた通り奥の方へと歩みを進めていくのだった。
「はははっ! グラストの訓練を1発で終わらせるなんてね! 凄まじいセンスを持っているようだ。で、その天才クンはここに何を学びに来た?」
「魔法……もしくは、それに関連した技術を」
「うん、魔法か。魔法ねぇ……」
奥へ向かうと、眼鏡をかけてローブを羽織っているいかにも魔法使いという感じの人が立っていた。僕のほかにきているプレイヤーはいないようだ。今はこの人……ラルフさんに話しかけられてる最中というところである。ラルフさんは、魔法という言葉に対してなにか言いたげだ。
「魔法……魔法って言うのはね、職業が魔法使いの人にのみ許された技なんだ。一応聞くけど、君職業は?」
「剣士ですね」
「なら、君に魔法を使うことはできない。けど、魔力操作なら使える。人によってはこっちのほうが使い勝手がいいって人もいるんだ」
魔法の真実と代替案について話ながら、魔力操作についての詳細を説明してくれる。
まず、魔力操作には複数種類があるらしい。体内で魔力を操作して魔力を活性化させるものと魔力を体外に出して具現化、その後魔力のみで攻撃やらものの形成なんかをするものの二種類なんだとか。後者の方は靄である魔力を操作するからイメージと造形力の二つが高いレベルで必須になるから難しいのだとか。ちなみに、魔力はMPとイコールだと思っていいと思う。
「まあ、体外に出すのもできるに越したことはないから基礎だけ軽くやってみよう。じゃあまずは魔力を感知……は、出来てそうだね」
魔力の感知、多分だけど【魔力操作】があるから多少そこが関係しているのだと思う。実際、これが魔力と呼ぶものであってるのかはわからないけど強く意識すれば動かせるかもしれない、と感じるものがあるのはわかる。
「よーし、じゃあまずは体内で循環させてみよう。こればっかりは感覚だから、詳しくは教えられないんだけど、コツくらいなら教えられるからどんどん聞いて!」
体内で循環……循環か、体の隅々までいきわたらせなきゃいけないよな。それなら、なにかに乗せて運ぶのが一番手っ取り早い? 体の中を隅々までって考えるなら……血液か。ちょうどこの間習ったところだ。血管に魔力を流す……そして、流れに乗せて一気に循環させる!
「……ははっ、これも一発? とんだ才能マンだな。なんかちょっと怖くなってくるね。ふぅ……っと、いい調子だ。そのまま動ける?」
「動けますよ……っ!」
軽く動いてみようとすると、想定以上の出力が出て近くの壁に勢いよくぶつかってしまう。
「これが、みんな使ってる初歩技術、魔力による身体強化だ。あ、今君がぶつかった理由だけどね、魔力ちょっと流しすぎかな。もう少し抑えてみて!」
「は、はい……」
いてて、とついた土埃を払いながら先ほどいた位置に戻る。次は、体外に出してする魔力操作だ。
「これはまず、体外に出すってのが難しい。空気中には魔力が含まれてるんだけど、その魔力と俺たちの中にある魔力は似ているようで別物だからね。そこをならすところから始めないと」
さっきは結構すぐ出来たが、今度は中々……いや、かなり難しい。しかし、やればやるだけコツが掴めそうな気がしてくる。
それから十数分、何度も何度も魔力操作を繰り返していたのだった。
♢♢♢♢♢♢
読んでみて面白いな、と思っていただけたら、★3やフォロー、♡などよろしくお願いします! 更新の励みになります!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます