新幹線太宰治
太宰治は人間失格になったので、新幹線になっていました。
ヒューンヒュヒュンヒューーン
速いぞ、速いぞ、新幹線だぞ、わーい、わーい
太宰治は人間には適合できなかったが、新幹線には適合できたので、楽しい日々を送っていました。
しかし、そんな太宰を嫌う乗り物たちもいました。ある日、年老いた電車が話しかけて来ました。
「太宰くん、若造のくせにすごい速さだ。無事故で人間にも大人気だね。しかし、世間の乗り物たちの嫉妬は怖いぞ。ちょっとは自重した方がいいんじゃないかね。」
これは、人間時代に気づいたこの世の真理の使いどきだぞ。太宰治はわくわくしました。
「世間とは、あなたなのです、あなたが嫉妬しているのです、ビビビビビービビ、ビビビビビーーッ!!」
太宰治は新幹線になって自己肯定感が高まっていたので、堂々と言い放てました。
年老いた電車は完全に言い負かされてしまい、プライドがひどく傷つきました。
ドッカーーーーン
ショックのあまり自爆してしまいました。
太宰治はこの件に関し強い罪悪感を覚えました。
年老いた電車が自爆してしまったのは完全に私のせいだ。私は間違ったことを言った覚えはないが、彼を酷く傷つけてしまったのは事実だ。真理は時に人を傷つけるのだ。なぜあんなにはっきりと言ってしまったのか。それに、なぜ私は新幹線なのだ。なぜあの老電車は電車なのに、私は新幹線なのだ。私なんかが新幹線になってよかったのだろうか。なにか努力したわけでもないのに。申し訳ない、申し訳ない。
太宰治は新幹線であることに罪悪感を感じるようになり、以前のように速く走れなくなってしまいました。そして、ある日、全く走れなくなりました。
新幹線、失格。
もはや、自分は、完全に、新幹線でなくなりました。
太宰治は新幹線失格になったので、飛行機になりました。
フラーイフライフラーイ
飛行機すごいぞ、空飛べる、楽しい、楽しい、わーいわい
完
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