俺たちは

あんちゅー

ひとつを2人で

小さな頃から同じものが好きだった。


お互い無理のない程度のわがままで、必ずひとつを半分にして、母親は俺たちに分け与えたっけ。


どっちも物足りない顔をしながら、何となくお互い同じものを手にすると、自然に笑顔になれていた気がする。


大きくになるにつれ、喧嘩することは絶えなかったけど、それでも変わらず俺たちはひとつを2つにしたんだよ。


俺が兄貴だからさ、我慢しとけば良かったのに、わがままで意地汚くてさ、ほんとごめん。


でもようやく、分け合えないものが出来て、それまで以上に喧嘩したよな。


けどさ、こればっかりは兄貴だからって引き下がれなかったんだよ。


なぁ、あの時お前はどんな気持ちだったんだよ。


あの子がお前の手を握った時、俺はお前のことを心底憎んだんだ。


なぁ、お前ばどんな気持ちで今俺の事を見下ろしてるんだ?

聞かせてくれよ、頼むから。

前みたいに笑いながらしょうもない兄貴だって言ってくれよ。


馬鹿みたいだって冷たくなじってくれよ。


頼むよ。


あの子になんて言えばいいか分からない。


こんな紙切れ1枚と、あの子の顔の傷だけを残して、お前は俺に忘れさせてくれないつもりなのかよ。



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俺たちは あんちゅー @hisack

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