第3話 猩猩獣人のアルフォンス
とりあえず口に含んだ分は飲み込まなきゃ。
口の中にずっと不味いのを入れておくわけにもいかないし。
意を決して飲み込んだものの、これ以上食べるのは厳しい。
この世界は全て激マズ料理なんだろうか。
異世界物は漫画アプリで読む程度だったけど、私の料理無双が始まっちゃう!?
あ、でも無双できるほど料理上手くないや。
コンソメとか麺つゆがないと無理だ。
空腹ではあるが、この味だと三日くらい絶食した後じゃないと食べられないと思う。
仕方がないので次にパンを
プルプル震えるくらい指先に力を入れるものの、少しめり込むだけで毟れる気配がないのだ。
困っていると、子フェンリルが私の足元に来てテチ、と肉球を
『どうした
子フェンリルの言葉に小さい狼獣人も首を傾げている。
どうしよう、正直に不味いって言ったら失礼だよね。
そう思って困っていたら、玄関のドアが開いた。
「ただいま、
家に入って来たのは、最初に見た大きな狼獣人。
その狼獣人と共に、食事の準備をしてくれた小さい狼獣人とそっくりな子と、成体になってないくらいの服を着たオランウータンがいた。
「か、可愛い……!!」
「「「『は!?』」」」
思わず私の口から漏れた言葉に、狼獣人達と子フェンリルの声が重なった。
なぜなら私の視線は頭髪が薄く、地肌が見えていて、一部だけ長くなっている前髪をチョイチョイと
わかってる、わかってるよ。
友達からはカッコいいの感性は普通なのに、可愛いの許容範囲が海より広いと言われている私が特殊なのは。
だけど可愛いんだもん!!
「フッ、可愛い……か。むしろカッコいいだとは思うが、こいつらに比べたらお嬢さんは素晴らしい
アルフォンスはファサッと額に垂れた前髪を跳ね上げ、黒目がちの目を細めて笑顔を向けてくれた。
あまりの可愛さに胸の前で手を組み、うっとりしながら返事をする。
「
アルフォンスの堂々とした態度に、つい敬語で答えてペコリと頭を下げる。
「サキか、可愛らしい名前じゃないか、その食事は口に合わないのでは? ユーゴの料理は一見普通だが、味が最悪だからな」
「ユーゴ?」
よかった、この料理がこの世界の平均とかじゃなくて。
内心ホッとしつつ、アルフォンスから出た名前に首を傾げる。
「……僕」
味が最悪と言われたせいか、食事の準備をしてくれた方の小さい狼獣人がションボリしながら答えた。
あわわ、ここは何て言うべき!?
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