第4話「退屈な入学式!」
「えー、この学園の理念といたしましては――」
やばい……。
悪魔的につまらねぇ!
入学式が始まってまだ二十分ぐらい。
だけどあたしは退屈に殺されそうになっていた。
第一だ。
こういう入学式とか始業式みたいなのに、真面目に出席した事なんて一回も無いんだ。
ずっとサボってたから改めて出てみると本当にダルすぎる。
今舞台上で喋っているのは校長らしき人物だ。この話がまぁ、面白くない。
でも私の周りに座るお嬢様も、隣に座る琴音も、みんな背筋を伸ばして真面目に話を聞いている。
やっぱりお嬢様っていうのは別世界の人間なんだ。
あたしとは生物学的に何かが違うんだ。
ちなみにあたし達の後ろには、お嬢様たちの親が座っている。あたしの両親はもちろん来ていない。
パパは出張で地方にいるし、ママは場違い感を感じるし、昼ドラが見たいからだって。
あたしも来てもらわなくて良かったけど。
「――以上です」
あぁ、やっと校長の話が終った。
マジで意味の分からない話をしすぎなんだよ。
だけど次は少し楽しみだ。
なぜなら今から話すのは理事長。つまり琴音のパパだ。あたしもまだ会った事がないから、どんな人かすげぇ気になってたんだよな。
あたしは壇上にその人物が現れるのを待ち続ける。少ししてから、その人物は現れた。
壇上に現れたのは、高級そうなスーツに身を包んだイケメンの男性だった。
薄く焼けた肌に艶のある黒髪。理想の男ランキングがあれば、間違いなくトップ3に入りそうな見た目だ。
でも、なんか見た事あるな。
何で見たんだっけ…………あっ! テレビだ!
テレビでめちゃくちゃ見る人だ。何かのCMとかもやってたような気がする。
イケメンだったからタレントだろうと思ってたけど、琴音のパパだったのか。
それにあの金髪が(あいつの名前忘れた)琴音は日本一の財閥の跡取りだとか言ってたな。
てことはあの人はその財閥のトップじゃん。
いやすげぇー。まじレベチじゃんか。
いや待てよ……そんなすごい人がさ、今更だけど何であたしの入学を許可してくれたんだ?
こんな高貴なお嬢様学校にこんな不良女を入れるなんざおかしいだろ。
ただ娘を助けただけにしてはやり過ぎだし、ヤンキーを裏口入学させるとか、世間体的にリスク大きそうだけど……
なんか事情があんのかな……う〜〜ん、分からん。
まぁ考えても答えが出ない事を考えるの嫌いだ。
高校に入れたんだから全力で楽しむだけだな。
理事長がマイクを握ると、その口を開いた。
「新入生の皆さん。ご入学おめでとうございます」
その声は澄んだよく通る声だった。
理事長の話は確かにつまらなかったけど(入学式の話はそういうもんだろう)、でも声が良かったから不思議と聞いていられた。内容は聞いてなかったけど。
そして、いつの間にか入学式は終わっていた。
めっちゃ疲れた。
※ ※ ※
「あ、見てください。わたくし達同じクラスですよっ!」
隣に座っていた琴音が、嬉しそうな声で言って来る。
その声に反応して、あたしは入学式の終わりに配られた用紙に目を通した。
その用紙には今後の予定とクラス名簿が書かれていて、そこで自分の名前を探すのだ。
掲示板とかに張り出す感じじゃねぇんだな。
まぁ、でも手元の用紙に書かれる方が見やすくていいけど。
自分の名前を探すと、Bクラスと書かれた名簿に自分の名前があった。
その下には西条琴音の名前もある。
「ホントだ。つーか理事長が裏でやってくれたんじゃねぇか?」
「ふふっ、そうかもしれませんね。それに見てください。先ほど出会った天宮さんのお名前もありますよっ」
「えっ」
琴音に言われて、その名前を探すと確かにあった。ていう事はあいつも同じクラスなのか。
いや、マジでいらねー。
酢豚のパインぐらい必要ねぇー。
まぁ……だが文句を言ってもクラスは変わらない。
琴音と同じなだけ十分マシだ。
「では、わたくし達も教室に向かいましょうか」
「だな」
入学式の後は、クラス事に別れてオリエンテーションが行われる。
さて、これからあたしが一年間過ごす事になるクラスはどんなもんか。ここで1年の当たり外れが決まると言っても過言ではない。
祈りを胸に、あたしは琴音と一緒に自分たちの教室【1年B組】へと向かって歩き出したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます