ヴァイスハイト戦記~エルヴィンの章~

 中東諸国を併合し、急速に大国へとのし上がった国、ヴァイスハイト。


 彼達はパワーローダーと呼ばれる核融合動力で動く戦闘用パワードスーツやレーザー兵器やビーム兵器、プラズマ兵器にレールガンの小型携帯化などを成功し、さらには陸上戦艦を作り上げ、急速にヴァイスハイトは世界的影響力を強めていった。

 

 そしてついにヴァイスハイトは日本へも進軍を開始。


 その中にまだ十代半ばの若きヴァイスハイトの兵士、エルヴィン・シュターゼスの姿もあった。


☆ 


 Side エルヴィン・シュターゼス。


 =昼・日本本土・日本戦線某所=


 人がいない廃墟と化した市街地で軍事兵器がぶつかり合う。


 我々の知る戦場と違う点はパワーローダーと言う核融合炉搭載型のパワードスーツが戦場に花を添えているところだ。


 互いに銃弾やロケット砲、ミサイルなどに混じってレーザー兵器やプラズマガン、レールガン、ビーム兵器などが飛び交い、それを潜り抜けてパワーローダーが戦車に白兵戦を仕掛けてパワーアシストとハンマーでスクラップにしたりしている。


 パワーローダー同士がビームサーベルで鍔迫り合いしたり、ヒートサーベルで斬り合ったりともはや何でもありの戦場。


 生身の歩兵が立ち入るにはとんでもないクソ度胸がいるだろう。


 それが今の戦争。


 僕がいる日本の激戦区での戦場だ。

 


 Side エルヴィン・シュターゼス


 僕は大国「ヴァイスハイト」の軍人家系で育った。


 ヴァイスハイトは中東諸国を併合して産まれた新興国家であり、成り上がりと揶揄される声も多かったらしいが今は世界と戦える立派な大国だ。


 現在は極東方面に力を入れ現在は日米連合と戦っているが実質は日本と戦っている。


 どうやら政治的な都合で日米はあまり仲は上手くいってないらしい。


 僕は軍学校を卒業し、ヴァイスハイト製の新型パワーローダー「クリーガーⅢ」を身に纏う。

 

 横長のレンズに戦士のようなフォルム。

 丸みを帯びたショルダーアーマー。

 短時間なら飛行も可能と来ている。

 対弾性能も凄く、ビーム兵器も標準装備。

 

 とにかくヴァイスハイトに相応しいパワーローダーで他の軍学校の同期達と一緒に「フリスト」隊(北欧神話の戦乙女の名)として出撃。


 航空機や陸上戦艦に乗り継いでニホンへと向かうことになった。




 フリスト隊としての初陣は結果だけみれば順調だった。


『敵確認!! 散開しろ!!』


 同期と引率の隊長と一緒にニホン軍と何度か抗戦。


 相手も死にもの狂いらしくパワーローダーの独自開発に成功し、さらにパワーローダー対策もしていて何人か負傷者が出た。


『ニホンの野郎ども死ぬのが恐くないのか!?』


『カミカゼ精神って奴ですよきっと!!』


 などと同期の生徒達がニホン兵に対してそう罵る。

 自分も相手のニホン兵がどうしてそこまでして自殺行為のような戦闘に走るのか理解に苦しんだ。


 ニホン兵はパワーローダーや戦車がなくなっても抵抗を続ける部隊もいて、自殺願望でもあるんじゃないかとも思った。


『相手に対して容赦も油断もするな!! ニホン兵は死に物狂いで反撃してくるぞ!!』


 強面のアルベト隊長がそう檄を飛ばす。

 同期の皆からは鬼教官と言われて毛嫌いされていたが今はとても頼もしく感じる。


 パワーローダーもクリーガーではなく、シュヴェルト(ドイツ語で剣)で格闘戦能力ならクリーガーⅢを上回ると言う機体でアルベド隊長はヒートハルバードで敵を斬り裂いていく。


(躊躇えばやられる!!)


 僕は必死にトリガーを引き続けた。

 パワーローダーの火器は装甲車や戦車、戦闘ヘリを撃墜できるような物ばかりだ。


 今手に持っているのは12・7ミリを使用するパワーローダー用アサルトライフルである。

 12・7ミリ弾事態はとてもありふれた弾薬で破壊力はブロック塀に隠れた人間を塀もろとも人体のパーツを吹き飛ばす程の破壊力だ。(ただし、この弾を使う銃は大抵重い)

 

 弾を受けた敵兵士は次々とバラバラになって吹き飛んでいく。

 中には爆発物に誘爆したのか派手に誘爆して原形も止めずこの世を去った兵士もいた。


 最初はショッキングだが段々と慣れていくのを感じた。



 =夜・日本国内にあるヴァイスハイトの駐屯地の一つ=


 そこで補給と休息を受けつつ、ふとフリスト隊の指揮官アルベド隊長を見掛けた。


 他の仲間は何人殺したとか、パワーローダーの破壊数でエースを決めるべきだとか色々と言っていて、ふと席を外した時だ。


 背が高く体格も軍人らしい白髪の叔父さん。

 駐屯地のハズレにあるフェンスの近くで夜空を見上げ、タバコを吹かしていた。


 思わず近寄り、それに気づいたアルベド隊長は僕を見掛けてこういった。


「俺は部下を全員故郷で帰すつもりでいる。だが難しいだろう」


「ですがニホン兵は――」


「今迄の戦いはほんの序の口だ。ニホンの後ろには大国アメリカがついている。それにこの戦争は――いや俺達みたいな下っ端がどうこう言うべきじゃなかろうな」


「はあ・・・・・・」


「だが覚えておけ。この戦いはいずれ厳しくなる。その時がお前達が試される時だ」


 この時、アルベド隊長が言ってる事は理解できなかった。

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