雪代 マイナ
Side 雪代 マイナ
この国、日本は少年少女達に救われた。
それは奇跡でもあり、同時に日本の大人達の情けなさを世界中に知らしめた結果となった。
私もそんなダメな大人の一人だ。
天王寺家の反乱から暫く経ち、私は記録を纏めることにした。
☆
私は元々は竹宮高校担当の監督官であり、言うなれば学徒動員として戦場送りにされた竹宮高校が反乱しないように監視するのが主な仕事だった。
この仕事は多くの人間が精神を病んだ。
大人が後方でふんぞり返り、子供に武器を与えて前線で戦わせる。
その現実に、精神が耐えきれる方が異常なのだ。
その理屈で行けば私も異常者なのだろう。
竹宮高校や比良坂学園はまだいい方だった。
当然壊滅した高校もある。
と言うか竹宮高校や比良坂学園みたいな学校が異常なのだ。
後から知ったが色んな勢力が裏から手を回していたらしいが、それでも彼達の戦果は異常だった。
だが、それをどうこう言うのは、まるで少年少女達が死んでほしいみたいなのでこれ以上の言及は避けておこう。
☆
私は今でも後悔している。
死なせてしまった少年少女達のことはもちろん。
無力な自分。
無力な自分を哀れむ事しか出来ない自分。
悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
私はどうしてこうなってしまったのだろう。
私はどんな大人になりたかったのだろうか?
少なくともこんな大人ではなかったはずだ。
☆
少年少女達を語る上で避けられないのが一方的な国家反逆罪からの逃亡劇。
敵味方を巻き込んでの核ミサイルの使用も正気を疑ったが、まさか散々扱き使った少年少女達まで殺そうとするとは思わなかった。
少し考えれば分かる事だが日本を牛耳る大人達に良心と言うのはとうの昔に無かったのだろう。
その後も逆らう者は全て武力で黙らせていく姿勢はもはや独裁国家のソレだった。
そんな地獄の中でも少年少女達は戦った。
理由は様々だ。
それでも子供達がダメな大人達のために未来を切り開いてくれた。
私に出来るのはその無力さを忘れないことだ。
忘れずに、そして次に活かして同じ過ちを繰り返さないこと。
もう二度とあんなふざけた愚行の数々をしてはならない。
そのために今できる事は悲しい事に軍備増強だ。
アインミレニアの一件で世界中がボロボロ。
特にヴァイスハイト帝国はダメージが大きく、暫く大きな軍事行動は起こせないだろう。
だが日本は天王寺家のクーデター騒動で砂上の楼閣に等しい。
だがそれを建て直すのは私達、大人の役目だ。
もう子供達は十分この国に尽くしてくれた。
後は大人の役目だ。
この国を建て直すために一生を捧げる。
二度と子供を学徒動員にしない国をつくる。
それが私達、大人のするべきことだ。
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