世界崩壊後の戦い

羊丸

第1話 世界崩壊

 

 普通の日常、明るい生活をそれぞれの人々が送っている中、突然世界が崩壊した。


 それはまさに突然のことだった。大きい地震が起きたかと人々は思ったがそれは違った。


 海から見たことない大きい怪物たちが次々と起き上がったのだ。その怪物たちは誰だって知らない。むしろ知る由もない。


 人々は逃げ回ったが、その怪物たちは次々と建物を潰

し、逃げ回る人々を捕まえては食べていった。


 自衛隊に軍隊を起こしたが、その怪物たちの力には叶わず、挙句に戦争に行った人たち、全員が死んでいった。


 その中、ある2人の母子が逃げ回っていった。母は高校の制服姿の息子の山本春樹に手を掴まれながら一緒に懸命に走り続けていた。


 後ろには、頭に鹿の角を生やし、ゴリラの顔をして牙むき出しの真っ白いフワフワな体をした怪物が鋭い爪を持ちながらその母子を追いかけている。


 母子は息を切らしながら走っていると、母が思わず何かに足を引っかけ、その場に倒れてしまった。


「母さん!」


 春樹はすぐさま跪いた。


「大丈夫?」

「えっ、えぇ。でも、足をくじいてしまったわ」


 母は足を押さえながら息子に言った。


「春樹、早く行きなさい。お母さんのことはほっといていいから」


 母がそう言ったが、春樹は涙目をしながら首を振った。


「そんなことするかよ! 俺が担いで行くから」


 春樹は母を担ごうとしたが、母は担ぐのを否定した。


「いいえだめよ。そんなことをしたら逃げ足が遅くなる。おまけにあの怪物に食べられてしまうわ。いいから、貴方だけでも逃げ切って、早く行きなさい!」


 母は春樹を強く引き離すと、後ろからあの怪物の声が聞こえてきた。母は涙を流しながら強く叫んだ。


「逃げなさい! 貴方だけでも、生き残りなさい!」


 母の言葉を聞いた春樹は、唇を嚙みしめ、全速力で走り続けた。


 そして、母は足を押さえながら手で口を押え、泣くのをこらえた。


 すると、後ろから鋭い痛みが走った。胸を見てみると、あの怪物の爪が刺さっていた。次々と流れていく血を見ながら、母はその場で息を引き取った。


 春樹は走り続けながらも、心の中で母に謝り続けた。



 朝の小鳥が鳴く音が耳に響く中、春樹はソファの上で寝ていた。薄い布のせいで眠気がすっかり覚めてしまった。


 春樹が寝ていた場所はボロボロの低いマンションだった。外からは大きいい足音や鳴き声が響いてくる。


 そんな中を逃げながら、このように寝て過ごしている。


(はぁ、最悪な夢)


 あの事から一か月、今でもあの怪物たちが崩壊した街でウロウロしている。鳴き声が耳に焼き付いて、イラついてしまう。


 あの時春樹は逃げ続けてはいたが、どうしてもその場に置いて行けずに引き返した。


 戻ると母が座っていたところが血に染まっていた。その光景を見た春樹の中に入っていた堪忍袋が切れてしまい、母親を殺した怪物を殺すために、ともかくあまり目立たない黒のタンクトップに着替え、黒のスキニーパンツに着替え、黒の靴下に黒のスニーカーに着替えた。


 少し大きめのハンターバックの中に、治療用の物や飲み物とわずかな食べ物や飲み物を入れた。


 警察署に行き、銃や保管されていた刃物を入れた。弾だってちゃんと何個か入れた。足に右利きの足銃ホルスターポーチを付けて、そして銃の下には同じく大きいナイフが入れるぐらいのナイフホルダーを付けると、旅を始めた。


 今のところ母を殺した怪物はまだ見当たらない。あの怪物は一体どこにいるのかを春樹は何回も思った。


 重くため息を吐きながらながら春樹はもぉ動かない冷蔵庫の中に入れていた缶詰めを一つ取り出し、お皿に乗せると、地面に置いた。


「ほら、キキ」

「ニャー」


 春樹の下にいるのは一匹の黄色い綺麗な目をした黒猫だった。この黒猫は数日前に旅先の途中で見つけた黒猫を見つけ、ご飯を上げると、その黒猫は春樹に付いていくようになっていった。むしろなついていた。春樹はその子の名前を「キキ」とした。


 キキは貰った缶詰を笑顔で食べていた。春樹は近くのコンビニにあったまだ食べられるサンドイッチを食べていた。残りのご飯はカバンの中に入れ、そして上着を履き、この部屋にあった缶詰を何個か入れた。


 朝ごはんを食べ終わり、歯磨きをし、銃に全弾が入っているかを確認をし、刃物も入っているかを確認をした。バックを担ぎ、扉を開けながらキキに声を掛けた。          「キキ、出るぞ」


 春樹の声を聞いたキキは、すぐに立ち上がり、外に出た。春樹はゆっくり扉を閉めると、再び歩き出した。


 今のところ、怪物達はあまり暴れていない。空まで届いている怪物の方が落ち着いているのと落ち着いていないものもいるが、人間の背より少し高い怪物の方が暴れ回っている。生きている人間がいないか探し求めているのだ。


 今いる所は丁度広島県辺りだ。春樹が元に住んでいた場所は広島の隣の山口県の為に、そこから旅が始まった。


 腕時計を見てみると、時間は朝の八時となっていた。春樹はため息を漏らしてから辺りを見渡してみた。


 潰れた車、倒れながら花火を散っている電柱、そして今にも倒れそうなビル。ヒビが入っている地面、窓には血が所々に付いている。


 そろそろどこかで腕時計の電池を見つけなければ時間がわからなくなってしまう。


 そんな光景を眺めているうちに、前から何かが来る音が聞こえてきた。春樹は銃に手を掛けようとしたがやめた。


 目の前には木や草が体中に生えている人間の形をした巨人だった。この巨人は十月のはじめに出た怪物だ。春樹はこいつの名前を”森の巨人”と名付けていた。


 おまけに小さいカラスまで木に止まり飛んでいる。


 春樹はキキにどくように言い聞かせ、隅っこに行った。森の巨人は春樹に眼を向けずに大きい足を鳴らしながら歩いて行った。


 春樹は森の巨人が去ると再びキキに声を掛け、歩き始めた。そして歩き続けていると、何処からか何かを食う音が耳に聞こえてきた。


 春樹は血相を変え、走り出した。キキも慌てながら後を追いかけた。春樹は走りながらも、何かと場所が分かる。


 走り続けながら色んな角を曲がり続けた。そして、古びた建物の角を曲がると、春樹は眼を見開いた。


 そこには大きいケルベロス、大きい頭を三つ持ちながら目の前の女の人を仲良く食っていた。食われている女は涙を浮かべながら死んでいた。ケルベロスは春樹の足音に気が付いたのは、唸り声を上げながら振り返った。


 ケルベロスが振り返り、春樹の姿を見ると目の色を変えた。キキは威嚇をしていたが、隠れるように言いつけた。


 ケルベロスは鳴き声を上げると、春樹に向かって走ってきた。 春樹は銃を取り出し、走りながら打ち続けた。


 ケルベロスと距離が近くなると、打ちながら飛び越え、毛皮をしっかり掴んで背中に乗った。


 背中にいる春樹を食おうとするケルベルスは暴れながら振り落とそうとした。


 けれど春樹は素早く右と左の頭の脳を打ち抜いた。左右にいた頭を打ち抜くと、素早く降りた。


 ケルベロスは背中が楽になったことに安心をしながら再び鋭い、小さい赤い目を春樹に向けた。春樹はゆっくりと立ち上がり、様子を伺った。


 死んだ二つの頭を持ちながらも、真ん中の頭のケルベロスは両方の仲間の首を食いちぎり、その場に捨てた。すると、頭が無い所から頭がどんどん生えてきた。春樹は驚きながらも、観察をしていた。


「へぇ、まさかの首が生え変わるケルベルスか、何だそんな顔をしてさ、」


 春樹はニヤつきながら話していると、ケルベルスの体から光が出てきた。


(まさか)


 春樹が予想をしそうとしたとき、ケルベロスは怒りの様な声を上げながら三つの頭の口から火が放たれた。春樹は素早く窓のコンクリートの壁で火を避けた。まさに間一髪だった。


(やばいな、このままだと焼け殺されるな)


 炎を出すとしたらそれを裂けるとしても三つの口から吹き出すのを避けるのにも困難だ。絶体絶命、どうするかと考えていると、


「にゃー!」


 向こうから鳴き声が聞こえてきた。春樹は覗いてみると、キキがケルベロスの顔に張り付いている。すると、ケルベロスは頭を思いっきり振ると、キキは壁に激突をした。


「キキ!」


 キキの名前を呼ぶと、ケルベロスは春樹に向かって顔を向け、再び火を吹いたが、春樹はその炎を避けながら銃を撃とうとすると、地面から氷の刃物がケルベロスの体に刺さり、体がたちまち凍り付いてきた。


 春樹は一瞬何事かと思ったが、すぐに我を返りキキに寄り添った。幸いキキは震えながら春樹のお腹に顔を埋めた。生きていると感じると、安堵が漏れてきた。


 すると、後ろから冷たい感触が肌を触れた。


「危機一髪だな。青年」


 後ろから低い男の声が聞こえてきた。春樹は振り返ってみると、そこにはとても美しい馬と同じ大きさの白い狼だった。


 春樹は一瞬警戒をしたが、すぐにその警戒は溶けた。白い狼の片足に傷が付いている。


「けっ、ケガをしていますよ!」


 春樹はそう言ったが、白い狼は春樹に近づくと、キキの傷ついた体を舐めた。すると、たちまち傷は治り、キキは元通りの丈夫な体の姿になった。


 春樹は、その光景に驚きそうになった。


「あっ、ありがとうございます。それと、貴方の傷も手当てしますので、ここに座ってください」


 春樹は素早くバックの中から救急箱を取り出し、消毒液を布にしみこませ、軽く傷を叩きながら血を拭きとり、包帯を巻いた。


「ありがと、それと青年。名は何という」


 白い狼はお礼の言葉を述べると、春樹に顔を向けながら言った。


「春樹です」


 春樹は緊張を走らせながら言うと、白い狼は「そうか」と口にした。


「俺の名はウィル。他の怪物と同じように見えるが、本来は傷ついている人達を助けるものだ。そして春樹、君の戦いをさっき遠目で見ていたよ。君は怪物と戦っている時に悪意に塗れている。まさに狂気そのものだ。今までの人とは違う匂いがする。」


 ウィルの言葉を聞いた春樹は口を嚙みしめながら語り出した。


「俺は、他の醜い怪物に母さんが殺されたんだ。それで俺は母さんの怪物を殺すために旅をしているんだ。それの何が悪いんだ」


 春樹は強く言い張りながらウィルに言うと、ウィルは突然大きい白い尻尾を振ると、強く雪の結晶が飛び散り、渦を巻いた。


 渦を巻きながらドンドン細くなり、遂には雪の渦は弾けたる音を響き渡せた。春樹は思わず目を閉じ、警戒をしながら眼を開けると、目の前には古い剣が浮いていた。


「持ってみろ」


 ウィルはそう言うと、春樹はゆっくり立ち上がり、目の前にある剣を握った。


 思ったより剣は氷の様に冷たく、ずっしりと重い。おまけに背中に背負えるよう紐が付いている。


 春樹は剣を抜いてみた。刃物は綺麗に銀色に輝いている。


「すごい、何なんですか。この剣は」


 あまりの衝撃に、春樹はウィルに問いかけると、ウィルは剣を眺めながら説明をした。


「その剣は特別な者にしか持てない剣だ。それは化物達にとっては折れない剣だ。そして、よそ者が握るとすぐに水の様に溶ける。たとえ温かい場所にいたとしても溶けない剣だ。君は特別な人物として剣を持つことが出来るんだ。春樹」


 ウィルは剣を握っている春樹に言いかけると、春樹は剣を眺めながら『選ばれた者』と言う言葉を心の中で繰り返していた。


「えっ。でも、それはどうやって決められ」

「あぁ、お前の心に勇敢と勇気、怪物どもを倒す決心の心だからだ」


 すると、ウィルは顔を近づけては、お言った。


「春樹よ。私と一緒に旅をしないか。俺はお前の紳士な心と共に怪物達を倒していこうではないか。どうだね」


 ウィルは真剣な眼差しながら言うと、春樹は剣を鞘にしまい、紐を背中に背負って立ち上がった。


「えぇ、良いですよ。一緒に旅をしましょ。それから、協力し会いましょうね」


 春樹はウィルを見下ろしながら言うと、ウィルは鼻で笑った。


「誇らしいな、それでは俺の背中にも乗って歩こう」

「えっ、けれどケガが」

「いいんだ。さぁ、遠慮せずに乗りなさい」


 背中を見せながら言った。春樹は申し訳なさそうに思い、キキを抱き上げ、ウィルの背中に跨った。


 跨ると、氷の様に冷たいはずが温かく感じる。まるで母のぬくもりの様に感じる。


 モフモフの背中の毛並みを春樹はそっと撫でた。見事な鮮やかな毛並みに思わず感動しそうになった。すると、後ろから赤子の様な鳴き声が耳に聞こえてきた。ウィルは立ち止まった。


「赤ん坊の泣き声か?」


 ウィルは後ろを向きながら春樹に行った。


「行ってみよう」


 春樹がそう言うと、ウィルは泣き声がする方向まで歩いた。泣き声がする方に向かうと、そこには段ボール箱に入ったまだ幼い小さな赤ん坊が布に包まれながらも、顔を赤くしながら泣いている。


 春樹はその光景を目の当たりにすると、目が熱くなってきた。春樹はその子を他に生きている人間に渡そうと考えた。


 自分達と一緒にいれば危険なことが沢山ある。そして、いつかあの怪物たちに残酷に殺されるかもしれない。


 そう考えながら抱き上げようとすると、向こうから他の男の声が聞こえてきた。


「おい! あそこから赤ん坊の声が聞こえてきたぞ!」


 叫び声を聞いた春樹はその声に安堵をし、新しい仲間、ウィルと言う不思議な白い狼と共の旅が始まった。

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