第30話 推理、証拠の提示
次の日の昼休み、XXと伊藤が一緒に討論部の部室にやってきた。
「さて、じゃあ話をしようか。そこに2人は座ってくれるか?」
2人が大人しく座ったのを確認し、俺は推理内容を説明する。全ては犯人の説得が目的だ。
「今日話したいのは前田の盗撮の件だ。最近学校掲示板に前田の盗撮写真が上がっていてな。俺と伊藤は前田から相談を受けて犯人を探していた。
今日までに3回か? 盗撮写真が掲示板に登校されていたが、そこにはいくつかのヒントがあった。犯人は背が比較的高いこと、運動部に所属していること、スマホ以外の何かで撮影していること、などだ。
ずっと分からなかったことがあった。それは「なぜ掲示板に投稿するか?」だ。普通に考えると盗撮した写真は自分だけの物にしておきたいはずだろ? それを他人に見せるということはそこに何か理由があるに違いない。そう考えた俺は、それが「承認欲求」なのではないかと仮説を立てた。簡単にいうと、褒められるのが気持ちいいというやつだな。前田の写真を投稿すると掲示板で色々な人から称賛される、それが気持ちいいのではないかと考えたわけだ。
そこで俺は犯人を釣り上げるために罠を仕掛けた。それが掲示板に「前田と野口の2ショットが欲しい」と投稿したことだ。今回の犯人は承認欲求が強い、きっと答えてくれると思った。また、撮影したいと思わせるために前田にはあえてスカートを短くしてもらって、可愛くなった感じも出してもらった。写真を撮りたくなる状態を準備したというわけだ。
後はこちら側で野口と前田が接触するタイミングをコントロールし、そのタイミングで教室内を撮影しておけば完成だ。隠しカメラで撮影した教室内の動画を俺と伊藤は確認し、怪しい動きをしている生徒を探したわけだな。
俺達は隠し撮りしたビデオを見て、撮影のスタートとなる動作をしている生徒を探した。するとお前の動作に気づいたよ。お前は写真撮影をするときに「メガネを2回叩く」動作をしていた。メガネに仕掛けがあると考えたぞ。
調べると、まさに同じメガネをカメラ付きメガネとして発売されているサイトがあったよ。まさかそんなところにカメラがついているとは思わなかったな。逆さまに撮られた前田の写真は、メガネを手に持って撮影したからそう映ってしまったわけだ、そういう謎も説明できた。
さて、溝口。ここまでで反論あるか? 今はメガネをかけていないが、どこに持ってるんだ?鞄にあるのかもしれないが、お前の鞄は今野口と前田に探ってもらっているぞ。もう詰んでいると考えた方がいい」
溝口はずっと黙ったまま俺の話を聞いていた。特に動揺したそぶりは見せないし、いつものように明るい様子でもない。
「はあ、バレたか。調子に乗りすぎたな」
「お前が盗撮したのを認めるんだな?」
「ああ、俺が盗撮した。今井の言う通り、承認欲求? ってやつだよ。可愛い女の子の写真を載せるとみんなが喜んでくれる、それが嬉しかったんだ。俺は昔からグループの真ん中にいるのが好きでな。インターネットの世界でもみんなに注目される存在でいたかったんだろうな」
「なんで前田を盗撮したんだ?」
「わかるだろ? 1番有名な生徒だからだよ。1番反響があると思った、それだけだ。葵ちゃんには申し訳ないことをしたな。本当は1枚で終わる予定だったんだが、思った以上に反響があってな。ついつい何枚も撮影してしまった」
「そのためにカメラ付きメガネを買ったのか。やけに熱心だな」
「これは昔から欲しかったんだ。なんかスパイっぽいだろ? スパイになって裏で地球を救うために活躍する、みたいな映画に憧れがあってな。その真似のつもりも兼ねて買ったんだ。結構鮮明な写真が撮れて、今時の機械はすごいなと思ったぜ」
「メガネはかけたフリだったのか?」
「そうだな。このメガネには度が入っていないからコンタクトはずっとつけていたよ」
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