第14話 伊藤との調査

 授業が終わり、生徒が続々と教室を出ていく。水泳部は今日は部活動は休みの日だ。少し調査をしよう、俺はそう考えて伊藤に声をかける。

「なあ、放課後ちょっと水飲み場の調査しないか? 何かヒントがあるかもしれないし」

「そうね。部活の前にちょっと行きましょうか」


 校舎を出て、グラウンドに出る。テニスコートはグラウンドの端、体育館の隣にある。

 テニスコートの前に水飲み場を発見する。テニスコートがよく見える場所だな。俺と伊藤は水飲み場に歩いて行った。


 見たところ、グラウンドから最も近い水飲み場のようだ。給水器が3つ設置してある。テニスコートを眺めると、写真と角度が一致した。

「撮影場所はここで間違いなさそうだな」

「ええ。そうね。ここからテニスコートを取れば同じ写真を撮影できそうだわ」

 伊藤がスマホを見せながら言う。


 人が来たので少し脇に逸れて俺は伊藤と状況整理を続ける。

「結構水を飲みにくる人多いな」

「そうね。夏は暑いしね。大体飲みにくるのは野球部とサッカー部、陸上部かしら」

 グラウンドで練習している部活の生徒がたくさん水を飲みにくる。制服でグラウンドにいる俺らは完全に不審者だ。なんでいるのか? という目線を感じる。


 俺はちょうどその時にクラスメイトの川崎が水を飲みに来ているのを見つけた。声をかける。

「おお、川崎。卓球部もここにくるのか?」

「え、うん……。 グラウンドでランニングすることもあるから……。」

「体育館を使う時は使わないの?」

 伊藤が口を挟む。川崎は困ったように目をキョロキョロしている。

「体育館の前に給水器があるからそっちを使うかな……」

「そう、ありがとう」

 川崎は不思議そうな顔をしたままグラウンドに戻っていった。


「卓球部も使うんだな」

「グラウンドを使用する部活の生徒は皆、という感じなんでしょうね」

「というか…… 思ったより利用者多くないか? こんなところで盗撮できるのか?」

 そう、数分に1回は利用者が現れるのである。こんなところでカメラやスマホをかざしていたら相当な不審者扱いされるのではないだろうか?

 

「そうね、これは予想外だったわ。こんな人気な場所だったとはね。スマホやカメラをかざしていても違和感がない人か、誰にもバレないようにこっそり撮影する機材を使ったかでしょうね」


「あ、今井くんだ。調査してくれてるの?」

 部室から顔を出しているのは前田だ。伊藤もいるのだが…… 見えていないのだろうか?

「ああ、そうだよ。やはり、ここから撮影されたんだろうな。しかしここ思ったより使う人多いな。びっくりしたよ」

「そうだね、こう暑いと水は必須だからね。誰が来てたか、なんてわかる人数ではないなあ。ただ、あんまり女テニじっと見てたら変態扱いされて警戒されるよ? 気をつけてね?」


「じゃあ、私は部活行ってくるから。なんかわかったら教えてねー」

 そう言うと前田はテニスコートに向かって行った。

「ねえ、私無視された?」

 不機嫌そうな伊藤。

「いや…… 見えてなかったんだろ。角度的に」

「まあ確かに1回も目が合わなかったけど。嫌われてる……わけではないよね?」

「ああ、そう思うぞ。というかそんな接点ないだろ」

「それもそうね。とりあえず私は部活に戻るわ」

「おう、お疲れ。俺は帰ることにするよ」


 帰り道、わかったことを頭の中で整理する。

 まず、水飲み場で撮影されたことは確定だろう。ただ、目立つ場所にあり、生徒も多く訪れる場所にあるので隠れて撮影することは難しそうだ。超小型カメラやボールペンのような機器でこっそり撮影したのか? しかし水飲み場に制服で現れる生徒はおらず、基本ユニフォームや体操服を着た生徒しかこない。ユニフォームを着てボールペンを持っている、そんな人がいれば目立つのではないだろうか? それに角度的にも背が比較的高い人が少し高い位置から撮っているようだ。身長が俺と同じ175cmくらいであれば撮影機器は直立して肩よりも高い位置にある必要があるだろう。そこにも違和感を感じる。


 少しずつ明らかになっているようで、相変わらず謎が多い事件である。そして…… 気になるのは「次はもっとすごいのを期待ください!」という犯人と思われる掲示板の投稿。次は犯人は何をする気なのか?

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