第7話 学年1の美少女の親友との会話

「おっす、どうだった?」

 電車に乗った所で野口に話しかけられる。

「ああ、普通だったよ。家こっちなのか?」

「そう、家こっちなんだ。葵元気そうだった?」

「ああ、特に気になる点はなかったが…… 最近不調なのか?」

「いや、私の前では普通だけどね。大丈夫かなあと思って。盗撮とか気味が悪いからね」


「ああ見えて意地っ張りな所あるからね、葵。無理してないか心配だよ」

「そうか…… まあ色々あるんだろうな」

 人気者には人気者の悩みがあるのだろう。さっきもそれを匂わすような発言はしていたもんな。


「ちなみに怪しい人いた?」

「いや、特に。ただすごい色んな人に見られたよ…… 俺が不審者の気分だったよ」

「ああ、それは…… 葵が男の子と帰るの珍しいからねえ」

「らしいな。明日変に注目を浴びないことを祈るよ」


 スマホを見ている野口。

「今の所掲示板には何も書かれてないね。まあまさかここに来て彼氏が出来た、と思うこともないんじゃない?」

「前田、告白全部断ってるらしいな。タイプの男性がいないと聞いたが……」

「そうらしいよ。タイプじゃないので、って全部断っているらしい。葵の好きな男性のタイプは学校の3大謎の1つらしいからね」

「残りの2つの謎が気になるな。それはさておき、野口も知らないのか?」

「うん、いつも秘密って言われる。よくわからないんだよね。女の人が好きと言うわけでもないとは思うけど……。葵、最近韓国ドラマにハマっているみたいで色々話してくれるんだけど俳優の誰々がかっこいい、って言ってるからな」


「そうなのか。じゃあ男は全員NGってわけでもないんだな」

「うん、私、よく色々な男の子に葵の好きなタイプとか聞かれるんだけどね。わからない、としか答えようがなくて困ってるの」

「ああ、確かに探りを入れるやつ多そうだな……」

「そうだよ。で、私が隠してるみたいになって気まずくなるんだ…… 本当に知らないのに。あ、でも好きじゃないタイプはわかるよ。暗いタイプはあんまり好きじゃないみたい」


「暗い? あまり喋らないやつってことか?」

「そうそう。川崎と三橋がニヤニヤしながら話しているの見て、気持ち悪い、って溢していたからね」

「ああ、まああれを気持ちよく感じる人はいないとは思うが……」

 教室でニヤニヤしながらコソコソ話している奴らをポジティブに見る奴は少ないだろう。

「そうだけど、葵がそんなこと言うの珍しいから覚えてた。二人のことが嫌いなのかはわからないけどね」


「あんまり悪口とかは言わないタイプか?」

「そうだね。基本周りが悪口を言っていたら笑って話聞いてるだけのタイプだね。まあ、やっぱ目立つから性格悪いと言われないように気をつけてるんだと思うけどね」

「なるほどな」

 野口の話を聞いても、普段のイメージでも前田は完璧な人という近寄りずらさはない。ただ、悪い話を聞くことはない。本人も色々努力しているんだろうな。


「とりあえず盗撮犯に関しては川崎や三橋が怪しいと思うわ。いつ見ても二人で学校掲示板見てるんだもん。今日も溝口が弄ってたけど、絶対常連だと思うな」

「ああ、話していたな。いつも見ているのか…… それは気をつけておいた方がいいな」

「うん。今日の帰り道では見かけなかったけど。これで掲示板に写真上がらなかったら、逆に怪しいかもしれないね」

「逆転の発想だな」


「じゃあ私、ここで降りるから。また明日ね」

「ああ、じゃあな」

 野口と別れる。俺はまだ二駅先に家があるのでここでお別れだ。一人で電車に乗りながら、前田と野口と話したことを振り返り考えを巡らす…… よく考えると、前田について詳しくなっただけだったな? 


 とはいえ、盗撮犯については現時点で出来ることは何もない。また盗撮されるのを待たないといけないのが歯痒い所だ。ただ、盗撮が悪化して変な写真とかが撮られることにならないといいが…… いや待てよ。逆に誘ってもらうか? 際どいポーズをしてくれと前田にお願いするか? いや、流石に無理だな。


 ふと携帯を見ると、前田さんから「よろしくね」とラインが来ていた。俺も「よろしく」と返事をしておいた。前田は意外と絵文字とか使わないタイプなんだな。」

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