第2話 現状把握と推理
「犯人に心当たりはないのか?」
「ないわ。ただ、葵はすごいモテるから、多分葵のことが好きな男の誰かじゃない? で、掲示板で自慢したかったんだと思うけどね、俺はこんな写真持ってるんだぞーって」
ファンなどによる犯行であると野口は考えているようだ。
「女の子の可能性も否定できないけどね。恨みに思ってていて、晒しあげて満足しているのかもしれないし」
伊藤が口を挟む。
「でも恨みを晴らすとか、そういうのならもっと過激な写真をあげてもおかしくないか?」
俺は疑問を口にする。そう、掲示板の写真は普通に誰かと話している前田を隠し撮りしただけの写真である。ファンなら喜ぶかもしれないが、それ以上の価値があるとは思えない。
「それはそうね。ただ、今後どんどん過激になっていく可能性も否定できないわ。更衣室での写真とかね」
「まあ可能性は2パターンだな。ファンによる行動と恨みによる犯行。どちらも男女の可能性があると見てもいいと思う。女性のファンもいるだろうし、振られて恨みに思う男子もいるだろうからな」
俺は黒板にパターンを記載する。伊藤と議論する時はよく黒板に議論内容を整理して記載することが多い。話が拡散しないように重要点を記載しておくのだ。
「そして今、写真が上がったということは、最近何か起こったのではないかと推測はできる。前田さん、心当たりはないか?」
「うーん、告白されるとか? 最近は同級生じゃなくて先輩とか後輩が多いからなあ…… さすがに違う学年の生徒がいたら目立つと思うんだよね」
「同級生で葵にアプローチするというのは去年でひと段落ついちゃったもんね。ただ2年になって同じクラスになった人なら何か新しい感情を持ってる人はいるかも。好きになった、とか逆に嫌いになったとかね」
前田の言葉に野口が続ける。同じクラスになった人、つまり俺達のクラスメイトだな。
「川崎とか三橋とか怪しいんじゃない? あいつらいつも二人でスマホ見てニヤニヤしてるし。掲示板とか書き込んでそうだよ」
川崎俊介と三橋佑輔のことだろう。俺達のクラスメイトで、二人で一緒にいることが多い男子だ。どちらもそれほど明るいキャラではないので、クラスの端っこにいるタイプではあるが……
「涼子ちゃん、決めつけは良くないよ。別にあの人達がやったっていう証拠があるわけでもないし」
窘める前田。確かに現時点での決めつけは不要な先入観となってしまう可能性がある。できる限りフラットに見るべきだろう。
「話は戻るが、同級生や同じクラスメイトで、最近何か出来事があった生徒はいるか?」
「うーん、わかんないなあ。男の子に好きになられることもよくあるし、逆に女の子に嫌われることもあるからね。ふとしたことで発生するイベントだからこっちからでは気づけないんだよねえ」
首を傾げる前田。これがモテ過ぎて困る、という奴か。
「恋愛以外は特にないか? 部活とか、日常でトラブルとか」
「うーん…… 特にないなあ。普通の日々を過ごしているよ?」
「私もトラブルなんかは特にないと思うよ。ファンが来た、なんてこともないし。普通の女子高生生活だと思う。告白イベント以外は」
前田と野口の回答は否定的だった。やはり恋愛がらみなのかもしれないな。
「わかった。ありがとう。もう一度写真を見せてくれるか?」
俺は写真をもう一度確認する。そこであることに気づいた。
「訂正するよ。どうやらこの写真を撮ったのは男の可能性が高いな。明らかに斜め上から撮った写真だ。立ち上がって一定の高さから隠し撮りしたものだろう。スマホで撮影したのかそれ以外かはわからないが、背の低い人がこの角度から写真を撮ったとすると相当怪しい行動をとっているので誰か気付くだろう」
写真は立って会話する前田を見下ろした風になっていた。前田より背が高いのは間違いない。背伸びして撮影、などの行為をしていれば誰か気付く。
「俺と同じくらいか、少なくとも170cmはありそうだな。女子でそのサイズの生徒は非常に限られる。男子の確率が高いだろう」
「確かにそうね…… 正しい推理だと思うわ」
伊藤も同意してくれた。
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