第13話 聖国と戦争、処刑宣告有り

 王宮


 眠れない…… 銀行権やら港湾使用権の金は入ったが眠れない。


 また十メートル級のデッカイ皇帝の前に呼び出された。


「聖国と教会が本格的に敵になった」


「はあ……」


 どうやら聖国の聖騎士、聖別された武装と鎧を持った、この国をぶっ殺すためにあるような国が宣戦布告して来たらしい。


 俺本人はまだアンデッドになっていないが、安楽の籠手がないと眠れない生活をしているので、アンデッド堕ちも近い。


「処刑宣告も出てな、周辺国も賛同して、この国の領土を分割統治する気だ」


「まあ…… 暗殺ギルドの手下を使ってゲリラ戦、腕利きの冒険者を集めて夜襲して、最終決戦までに十階梯魔法で皆殺しにしたらどうにかなると思いますけど?」


「ウム、その方法で頼む、任せた」


 短い会見が終わって次の奴が入室。信用されてるのはいいが、国家存亡の危機にも平然とし過ぎ。



 周辺国からは、お付き合い程度に大体二、三千人が来る予定。


 そのまま居座って分割占領しようとしてる所は倍ほど。


 聖国からは少なくとも五千人。周囲四カ国ぐらいいるから八千人から一万二千人。合計一万三千人から一万七千人、多いよ。


「誰かある?」


「はっ」


 大型案件なので、暗殺ギルドの親玉に指定してやった奴が来た。


 拷問部屋からは救い出したので、治療も行き届いたのか手足も目玉もそろっている模様。


「大型受注だ、皇帝相手だから金は気にするな、聖国が敵になった。周辺国も全部」


「それは豪気ですな、周辺国全部に聖国? 私ら下っ端では受け切れませんなあ」


「まあそう言わずに、ゲリラ戦仕掛けて混乱させて、遅滞行動するだけでいい」


「はあ、昔の仲間も全員集めますんで、高くつきますぜ」


「構わない、実入りが減った奴でも引退した奴でも、腕が立つなら集めてくれ。どうせ金では動かないような奴らだろう?」


「そういう事で。シビれるような殺しをやるか、敵に潜入してダブルスパイをやるような、気が狂ってる奴ばかりでねえ」


「あ~~、情報部にぜひ欲しいねえ」


 情報部的な物まで任されてしまってもう手一杯。


 本来、情報戦するような奴は頭が良すぎるか、気が狂っていてダブルスパイでもやって、何時見付かるか楽しみに待ってるようなアタマオカシイ奴じゃないと務まらないと思うが、何故か俺。


 コチコチの役人やら騎士では務まらないから、早急にリクルートしなければならない。


 それも情報部一課とか力の二課とか、パンプキンシザースまでリクルートが必要。


 代々草入りしてるような奴からは、これ幸いと逃げられた。


「と言う訳で情報部の首脳も、現地で潜入する奴も募集中なのでヨロシク」


「はあ、伝えときやす」


 話が終わると消えたが、ここ王の謁見場のドアの外。いいのか?


 ああ、阿片漬けで眠らないで過ごして、狂わないで済む方法聞いておけば良かった。



 侵攻が始まると国境の砦や村々は、逃げ出した奴以外皆殺し。


 難民大量で騎馬してる騎士に追いつかれると脂肪。


 恨み骨髄の周辺国なら分かるが、聖国にまで同じ扱いをされているようだ。


 うちの国はもう破門されてるから「異教徒」には何をしても良いのか、殺しまくってレイプして火を放って帰って来れないように加工してオシマイ。


 占領後は別の住人でも連れてくるのか、既存の異国民の住人は不要らしい。


 出来るだけ早急に聖国本隊を叩いておかないと住民全滅の刑。


 五方向から来ているので、そっちは新設した暗殺ギルドと、冒険者ギルドに緊急クエスト入れたのでどうにかする。


 ゲリラ活動しかできないが、どうにもならないけどどうにかする。


 前任者のギルドマスター達が腐り果てていたが、新しいギルドマスターは顔見知りやら、苦労人の引退した爺さんを当てたので、多少はマシになっているはず。


「じゃあ俺は、飛竜に乗って現場行って、聖国相手してきます」


「ウム、頼んだぞ」


 一応騎士やら魔法兵やら一般兵は派兵されたけど、信用されてるのか、別動隊は俺と冒険者一同だけ。


 勝つ方法は無くもないが、聖国を完全に敵に回す。残存兵力がいれば全員こっちに来るぐらい怒り狂う。



「竜騎士隊、出動っ! 出動っ!」


「おおっ、おおっ、おお~~~っ!」


 連中やたら気合入ってて、乾坤一擲の決戦場に有力な冒険者を送り出すと、皇帝直属の衛兵から承って気合入れたらしい。


 二人乗り程度なので、いつも通り操縦士付きの飛竜の後席に有力冒険者達搭乗。


「発っ進ぃ~~~んっ! 帽っ振れ~~~っ!」


 何か「無茶しやがって(AA略)」みたいな感じで発進、血管切れそうな大声出してる地上員に送り出されて出動。


 空に上がって操縦士も手を振って地上に挨拶を返す。


 感動的な場面なのだろうが、もう乗り慣れてるから、そろそろビジネスクラスにしてくれ。


 それでも道中後席で寝る芸を披露してやり、長年移動中にしか寝れなかったのを思い出す。


「うん、やっぱり飛竜の後席は寝やすいなあ、ZZZZZZZ……」


 飛竜特有の上下動とか、馬車でガタガタ揺られないと眠れない。


 今度王城に馬車置いて寝てみよう。



 決戦場


 二時間ほど飛ぶと現地到着、デカイ声出してる操縦士に叩き起こされた。


「将軍閣下っ! 現地に到着しましたっ! これ以上接敵すると、聖国の飛竜に察知されますっ!」


 誰が将軍だ? 俺か。第一軍の将軍は地上軍連れてる将軍だけど、散兵の将軍扱いなのか?


 人数足りないからエルフ王とか銀行権貰ったり、情報部長まで仰せつかってる。


 うん、きっとこれは俺を眠らせないための罠だ。リクルートが済んだらすぐに引退させて貰おう。


「川沿いの敵が布陣してる近くに降ろしてっ!」


「はあっ! 飛竜隊降下っ、降下ぁっ!」



 そろそろ夕方で、接敵して間に川があったから、双方そのまま布陣。


 本日中の戦闘は無さそうで、両軍ともテント張って(性的な意味ではない)晩飯の準備中。


 まあ、この世の名残に晩飯と酒ぐらい食わせてやろう。


 連絡はあったのか無かったのか、憲兵か達板の兵士がすっ飛んで来て誰何された。


「何者かっ! 官姓名を名乗れぇっ!」


 こっちも血管切れそうな大声で、遠方から槍構えたまま叫んで来る、ウルセエよ。


「当方王宮直属飛竜隊であるっ! 将軍閣下と冒険者一同をお連れしたぁっ!」


 こっちもウルセエ、耳元で叫ばないで欲しい。



 飛竜隊には下がって貰って、俺ら冒険者だけでカチ込む。


 人間の軍隊で五千人程度、七魔将の軍ほど怖いわけじゃないし、魔法士がいてもお貴族様のお上品なお公家集団。せいぜい七階梯か八階梯の魔法だけで、十階梯のお下品な魔法なんか使えない。


 強敵もちっさいゴーレム程度で、七魔将の軍みたいに凄まじい魔獣をテイムしてる奴もいない。


 つまりは楽勝と言う事、まさか七魔将殺した奴がいる軍に、勝てるとでも思ってるのか? コイツラ?


「おう、マーシではないか、久しぶりだのう」


「はあ、お久しぶりです。今日の所は俺が十階梯魔法ぶち込んでやりますんで、残った兵隊が向かってきたらお願いします」


 ベテランの引退した冒険者の爺さんも連れて来た。故郷ではまだ現役で、頼まれたり魔獣が出たら退治してやってるそうだ。健脚でお達者過ぎる。


「そろそろかのう?」


「はい、そろそろ行きますか?」


 こっちでも晩飯食って準備して、夜襲も奇襲も無いのを確認してからブッ放つ。


「ホーリームーンライト」


 七魔将二人も殺して、七魔将の軍二つ壊滅させたから大幅レベルアップ。


 ついに夢の十階梯魔法、白魔法の最上位を唱えてやった。


 火力が欲しかったからサムライなんかもやったが、その上位には行かず司教飛ばして三次職の賢者に。だから白魔法でも使える。


 聖国の軍隊だからこその白魔法最上位、次第に周囲が真っ暗になり、敵軍の周囲だけが真昼より明るくなってきた。


「なんだぁっ! この光はあああっ!」


「あ、足が塩にぃっ!」


「助けて、助けてえっ!」


 聖別された武装を持っているはずの聖騎士、ゴーレムマスター、従魔師、一般兵、魔法士までが略奪に加わってやがったのか、大半の奴らが塩の柱へと変わって行く。


 どいつもこいつも「異教徒」なら何してもいいと思ったのか略奪強姦して、教会に逃げ込んだジジイババアを周囲から取り囲んで、掬いもしないで火をかけて焼き殺しやがったんだろう。


 国境の砦の奴らも全員脂肪、15,6の若い新兵だけに「国に行って助けを呼んでこい」という任務を与えて逃がし、他の奴らは枕を並べて討ち死に。


 村から逃げ出して、山に隠れたり谷底に降りたのだけが助かり、難民として逃げた奴らまで追い付いたら殺した奴ら。生きていても仕方がない連中は死刑。


「身体が石にっ、助けてええっ!」


 罪が軽かった奴でも石化を食らって石に。教会に入ると年寄りとか山に登れない子供と母親ばかり、レイプしないで焼き払って殺さないで、逆方向向いて味方連中から教会を守った善良な連中だけが生き残れる。


 教会の聖騎士のくせに「異教徒は殺してもいい」なんて言いながら住民殺して略奪レイプした連中は塩の柱に加工されて生き恥。いや死んでるか?


 そんな連中を送り出したり、聖騎士に任命した奴らは生き恥。


 大司教だか大僧正だか知らないが、出世のために教会を利用して、ホモだから信者の男の子の幼児や少年を性的虐待したり、ょぅじょにイタズラし続けて来た連中は、大恥晒して追及される。


「何故聖別された装備を持つ聖騎士までが塩化させられてるのか?」


 一般兵やらクソ貴族の魔法兵、コネ入社のお貴族様の騎士、従魔師なんかは殺戮に参加してゲラゲラ笑ってるのが普通だから死ぬ。


「おお、壮絶じゃのう、敵兵と言えど気の毒なぐらいじゃ」


 修羅場や地獄を見て来たはずの爺さんも、人間の軍隊が破滅して行く所を見て気の毒がっていた。


 敵のキャンプ場と言うか布陣して夜間の休憩に入って、飯でも食って大半は寝る所だったようで大混乱。


 監視の兵が白魔法に気付いた時点で手遅れ、伝説の十階梯呪文、神話の時代で炸裂したことがあっても、絵物語や神話の口伝の中にしか出て来ない十階梯呪文。


 まさか敵兵の中に使える奴がいるとは思わなかっただろう? でも七魔将の軍殺し尽くせる奴なら、焼き払ったり電撃入れて殺されるとか、予想できただろうに。


 キンニクのアンデッド、皇帝親征があっても俺とほぼ同じ、八階梯か九階梯呪文で全滅してただろうから、聖国の判断がおかしい。


「聖騎士連れて行ったらアンデッドには勝つる」


 と思い込んでたんだろうが、ここに「神の軍団」だったはずの連中は、神の神罰を食らって、大半塩の柱にされて潰えた。


 聖国だけに善人が多かったのか生き残った連中がいたが、こちらに向かってくることも無く、恐怖に駆られて食料も水も持たずに一目散に逃げだして行った。



 まあ、翌朝に飛竜に乗って移動して、周辺国から来た奴らも順番に塩の柱に加工。


 仲間達が周囲で「助けてっ、助けてっ!」と叫びまくりながら塩の柱になったので、生き残れた善人も泣き叫びながら逃げて行った。


 国境付近から散々、殺戮略奪レイプをくりかえして来た奴らだったので、七割から八割は塩の柱か石像に変換プレイを食らって死んだ。


 石像になってるのも、足を圧し折って倒すか、地面に叩きつけてやると破損するので死ぬ。


 数か月間石にされたまま、意識だけはある状況で置かれると、狂ってしまって社会復帰も不可能。


 壁を背にして頭を抱え、何かあらぬことを叫び続けるだけの生き物になる。



 一般兵のお仕事は、塩の柱から装備を外してお財布も回収。使える金属と剣や鎧は回収、完全に塩になってるのは放置。


 石像は蹴り倒して壊し、死なせてやる。情報引き出す奴以外は解呪しない。


 雨が来ると塩が溶けてしまい、この周辺は不毛の「呪われた土地」になるがキニシナイ。


 川も塩で汚染されて洗い物以外に使えなくなるが、大したことはないのでキニシナイ。


 教会とか寺でも建立して供養しないと、万単位の死者が出たので、幽霊からレイスなどのアンデッドが大量に湧く。


 アンデッド帝国にはふさわしい姿だが、一般市民的には古戦場跡地はどうなんだろう?



 王宮


「聖国と周辺国の兵士、ホーリームーンライトとサンライトで始末してきました」


「ご苦労、しっかり休んでくれ」


 このヴァンパイアロードのオッサンは、敵味方の兵力差を知っていたんだろう。


 督戦隊みたいなのもいて、勝ったらすっ飛んで帰ったので、ガッツリ報告されてるだろうから詳しくは言わない。


 自分で出兵しても同じ、俺を行かせたら勝つると計算済みだから、エルフ国取り返す方に力入れて、大返しもさせずにそのまま。


 ソッチは無人の野を行くだけで、他の七魔将の兵が出て来てるのを潰すだけ。


 何でもダークエルフの第一王子様が周辺国から兵を借りて、故郷に戻ってどうにかしようとしたらしいけど、七魔将の兵団に攻められて脂肪した模様。


 本来こっちの姫様と、どっちが早く帰って社稷を立て直し、牛耳を取って覇を唱えるのか競争になるはずが、何か知らないうちに勝手に消えてた。


「残りは何か叫びながら逃げ出したので、国に帰ってどれだけの目に遭わされたか、証言させるのに放置しました」


「ウム、休んだら次は、聖国が立ち直れないほど叩き潰して来て欲しい」


「はあ……」


 眠れない、聖国と周辺国全部潰しても眠れない。

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