第4話 暗殺者集団

 俺は領主の招聘にも答え、街でパレードと言う恥ずかしいのもやった。


 笑顔で市民に手を振らないといけないそうだが、まあ、それでも刺客がやって来た。


「覚悟おおっ!」


「死ねえええっ!」


 でも弱かった。


「ダブルインパクト・コロセウム・ダンシングッ!」


 奴らは俺のフィニッシュブローを交わすことすらできず、骨がグチャグチャになって吹き飛び、やっぱり伸身の三回転半をキメて堕ちた。


 普通の銀等級だと思って刺客を出したんだろう。暗殺ギルドとは思えない失態。


 多分どこかの誰かが「奴は銀等級、いやそれ以下だっ、いつもお荷物で使い物にもならなかった」「そうそう、奴には銀等級ですら勿体ない、銅級か鉄級だ」「この私の指導の下でなければ、まともに討伐すらできなかった。私の素晴らしいスケジュール管理あってこそ」「俺が交代で出勤してやらなかったら、とっくの昔に欠勤続きで首になってた」と言って、暗殺ギルドに出す金すら惜しんで、全財産没収される前に頼んで、逮捕されて最前線送りになる前に発注して行ったんだろう。


 暗殺ギルドの方も、料金相当の奴を送り込んで、「銀等級以下? そんな訳ないでしょう、貴方方の指摘が間違いだった」と言って、失敗したのは発注元の認識がおかしかったことして、再発注扱いにするだろう。


 何度か受注して「おかしい、奴が金等級な訳がない」「そんな馬鹿な、どうして失敗したんだ?」「ですから、送り込んだ人物は金等級でも楽々倒せる人物でしたよ」と言いながら、そこらで雇った適当なチンピラ送り込んでるんだろう。


 最前線送りなのもバレていて、何度か集金したら捨てられて、「暗殺ギルドは指定の暗殺さえできなかった」な~~んていうと殺人教唆で今度こそ処刑される。


 料金ケチって銀等級以下の一般人料金しか出さなかったからだ。どうせ全財産没収されるんなら、俺から奪った金を全額出して、金等級以上、白金級の料金払うべきだったな。


 次も来たら隠し口座とか持ってるはずだ。



「申し訳ありません、警備上の不備で暗殺者の侵入を許すなど」


 いつもの執事さんか家令の人が謝ってくれてる。


「いえ、パレードですから。誰でも入れるようガバガバですし、前のギルドマスターからの刺客でしょう。財産没収されても暗殺ギルドに払う金持ってるみたいですから、金の出所を洗ってやってください」


「畏まりました、隠し口座など持っていないか調べておきます」


 生き汚い奴らだから、後何度か襲撃がありそうだ、家の方も足が付いてるから、領主に匿って貰うか安宿行脚だ。


 暗殺ギルド的には、パレード以外にも数回襲撃して全部失敗したら「困りますねえ、お客さん、事前申告と全く違うじゃないですか?」と違約金請求する事だろう。


 安っっすい、そこらの路地で阿片食ってるような、小銭で雇えるチンピラだから、暗殺ギルドの腹は痛まない。



「眠れない……」


 初日は領主に保護を求めて、贅沢なベッドで寝たけど眠れない。


 元ギルドマスターもケツの穴掘られまくって、隠し口座を吐かせようとしたけど、吐かなかったらしい。


 ナベワタも指の生爪剥がされて、麻酔無しで歯を抜かれても吐かなかったらしい。


 余計俺への恨みを募らせて「畜生、絶対に後悔させてやるっ!」と叫んでたそうだから、また襲撃はある。


 公開の場所で殺せなかったから、今度は夜襲だろう。



「眠れない……」


 眠れなかったので物音に気付いて、天井側に移動。


「まだ布団が温かい」


「近くにいるぞ」


「家の方は留守だったから、ここにいるのは間違いない」


 安っっすいチンピラの暗殺者だから、内部から手引きがあったとは言え、初日に領主家に侵入できたのは褒めてやろう。


 それでもベッドの下を覗き込んだ程度で、シャンデリアの真上に人間がぶら下がっているのは気付いていないようだ。


「カゲヌイーーーーッ!」


 影縫いと言っても、影に何か差して暗示で動けないようにするのではなく、痺れ薬で動けなくする手法。


 俺は覆面などして、床面から溜まっていく痺れ薬を吸い込まないように処置。


「何いいいっ?」


「馬鹿なっ?」


「フフフ、風下に立ったウヌの負けよ」C白土三平


 俺は天井から痺れ薬を超える毒薬を撒き「春花の術」を暗殺者に馳走してやり、ニンジャとしてのスキルを使って全滅させてやった。


 対人の場合はこういうスキルも必要なんだ、覚えておけ。


「死んだか? ふふ、地獄を見て指一本動かせまい」


 俺はフェニックス一輝のセリフを言い、氷河のマーマが無残に崩れ落ちて、沈没船も深海に落ちて行った夢を見せてやって、気概死したような氷河の胸を貫通攻撃してやり、マーマのロザリオが無ければ死ぬようなフィニッシュブローも入れてやった。



 翌朝、内部から手引きした人物も捕らえられ、暗殺ギルドは使えるカードを一枚消費した金額も請求する事だろう。


 まさか暗殺ギルドも、夜襲しておいて天井にぶら下がって逃げおおせ、メンバーを春花の術で倒す魔法使いで、影縫いまで使える奴が銀等級レベルとは思わないだろう。


 また請求金額が跳ね上がり、奴らの懐が寂しくなり、拷問の強さも増すだろう。



「眠れない……」


 領主家で襲撃されたのも謝罪されたが、安宿巡りして偽名で逗留。


 環境が変わっても眠れない。


 昼間に何度かショートスリープして、ガバガバ水飲んでたので便所にも1時間おき。


 心は休まらないが、体は休めたような気がしたので、晩飯食って便所にも行った。


 この部屋に警報仕掛けて、ベッドには爆薬置いて、ベッドを改めようとしたら鉄球を周囲に撒き散らす地雷型の爆薬設置。


 こう言う非人道的な物品は前世からの知識だ。視力程度は奪えるだろうか?



 日が暮れた所で窓から天井に向かい、数軒先の屋根の上で休む。


「ボウンッ!」


 来た。


「ぎゃああああっ!」


「うわあああっ!」


「目がっ、目がああっ!」


 ラピュタのムスカみたいに悲鳴上げるのまでいて、まんま素人丸出し。


 ドアの外で警戒したり、階下で逃走経路確保する奴も置かないで、全員ベッドに向かって、爆発する瞬間まで仲良く視聴。


 もしかすると素人相手に襲撃が成功した体験があるのかも知れないが、今回は見事に大失敗。


 俺は認識阻害の魔道具使ってチェックインしたので、このまま部屋に帰らないでもいい。


 でもちょっかい掛けて半死半生ぐらいにして、番屋で盛大に喋って貰う。


「俺は金だけ貰って雇われただけだ、誰かは知らない」


「多分暗殺ギルドだ、俺達は騙された」


 的な回答で「暗殺ギルドってこんな杜撰な仕事をするんだ」と思わせるだけで十分だろう。


 ギルドの方が「こんな高度な相手なら、最初っから言って貰わないと」と違約金が跳ね上がり「払わない」「お前達が失敗しておいて」とホザくと、お客でなくなって始末される側になる。


 結構な事だが、違約金はどんなことをしてでも支払わされる。


 オマエラ出先の現場で、暗殺ギルドと事を構えた事無いだろうから、知らないだろう。



 那由多?の距離を光に速さで移動し、また屋根の上を荒木調で走り、宿屋の主人が起き出す前に、肋骨を全部砕く程度のフィニッシュブローを決めてやると、悪は滅びた。


「メサイア・クロス・エクステンデッドッ!」


「ぐはああっ」


「げはああっ」


 二人とも破片と光線で目が見えなくなった程度で、一人足りなかったので、片目生きてる奴はヨロヨロと階段下りて逃げようとしてたから、ソイツもシバいて昏倒させておいた。


「うぐううっ」


 捕まる前に死ぬのが作法だが、阿片食って路地でガンギマリになって転がってるような奴らなので、暗殺ギルドの失態として計上された。


 多分、牢屋の中で殺されるだろう。



 マスヲさんみたいに、インパール作戦失敗して、死のロード帰って来て、ビルマで戦死もしないで、捕虜になって恥ずかしながら生きて帰って来たのは、駅前でヒロポン食ってガンギマリで転がってるのが普通。


 米軍相手のパンパン(売春婦)やってたサザエに拾われ、用心棒として雇われ、京大出なので情夫としても採用。


 フネさんは戦後の後添えで、満州にでも渡っていて、帰って来るまでにロシア人にレイプされて、中国人にレイプされて、朝鮮人にレイプされて、腹の中の子供は引き上げたらすぐに堕胎させられ、子供産めない体にされた。


 母親死んでるのでカツオとワカメは誰から生まれてくるのか? 血液型B型なのはもうサザエしかいない。


 米軍とのハーフで、カツオは髪の毛生えるとトウモロコシみたいな茶髪か赤毛なので、ちょっと生えるとサザエが鬼のような顔してバリカンで一分に刈り上げ、


 ワカメは偶然黒髪で、カツオみたいに青い目とか茶色い眼してないので安全。


 中学生ぐらいのサザエだったので、二人とも父親の子として戸籍登録。


 戦後の世相を笑い飛ばす設定の漫画だが、ヒロポンネタも多くガンガン出てくる。


 俺の時代には「よりぬきサザエさん」が出版されていて、穢れた事実は全部封印された。



 やっとこさ宿屋の主人が起き出して来て、瀕死で転がってる奴らを番屋にしょっ引いて行き事情聴取。


 何であそこにいたのか? 何をしていたのか? 吐かされる前に、番屋に放たれてる暗殺ギルドの草に殺されるかも知れない。


「やあ、兄さん、いい腕だな?」


「やあ、監視か? 屋根の上とはいい話し合い場所だ」


 懐柔策に出たのか、依頼通り始末しに来たのか、屋根の上で暗殺ギルドの奴に話し掛けられた。


 丁度下側のやじ馬からは見えない絶妙な位置に立って、裏通り側でも下には聞こえないように話された。


「今回この程度で手打ちしたい。路地で拾った野郎ならいくら死んでも構わないが、精鋭を出してもあんたに殺される。ウチにはミスリルリザード殺せるほどの奴はいない。依頼者は適当な嘘をついて値切って来て、銀等級以下なんだと言い張ってたが、そうも行かないようだ。違約金か依頼者殺してケジメは付ける、あんたも暗殺ギルドに対して何も詮索しない、これでどうだ?」


「ああ、依頼者側の嘘やら作り話、違約金じゃなくて遺産全額没収、依頼者の命で購って貰う、これでどうだ?」


「分かった、それで手打ちにしよう」


 ギルドの監視者は、襲撃者三人の口を封じてから消えた、綺麗な手際だ。



 家に帰ってみたが、雑な仕事で俺の家の中にある金目の物を漁ったようだが、後続部隊が寸分たがわぬ場所に片付けしてくれていて、割れた花瓶とか食器は、新しい物に置き換わっていた。


 これも綺麗な手際だ。殺し屋イチさんがアイススケートの靴みたいなので、親分とガキマ〇コ殺して射精してイった後みたいに、綺麗に片付けられていた。


 貴重品やら現金は、持ち歩いていたから無事だった。


 両替屋の口座やら土地の登記所まで持ち歩いてたから不便だったが、これだけ無事なら困らない。


「眠れない……」


 シーツも枕も、ズタズタに切り裂かれていたのか、新しい物に交換されてた。


 別に同じ枕でないと眠れない訳ではないが、眠れない。


 暗殺者に狙われて数日渡り歩いただけだが、神経が研ぎ澄まされていて眠れない。


 日が高くて大通りで人の声がしている間は、ショートスリープできるようになったが、やっぱり魔獣を相手にしていた頃のように、脳が半分以上起きているから眠れない。


 最初は便利だったが、永久に使える技ではないので、三時間睡眠の奴らみたいにはいかなかった。


 50日後に死ぬ電通社員みたいに、眠れないから生きられない。


 暗殺ギルドの奴らみたいに、神経研ぎ澄ましたまま眠らないで生きて行こうか? でも阿片が無いと生きられない。


 オクスリでシャキシャキにカクセイして生きてみても良いが、幻覚とか妄想見て、トビオリとかクビツリするのは避けたい。


 やっぱり暗殺ギルドに入れて貰って、阿片初心者でもぐっすり眠れるようにして貰おうか?


「眠れない……」


 今日も自律神経失調症で眠れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る