第11話
「嫌だ。」
雨守……ぃっ……。
「あ、当たり前だよっ。
こんな勝手なことをされて、
信用しろだなんて、無理だよっ。」
だから、他のオトコ
「いやだっっ!!
もう、そんなこと言うの、絶対やめて。
わたし、どれだけ心配したと思ってるの?」
だから、心配する対象を
「言ったよね。
魂が溶けるまで一緒にいるって。」
それは、確かに聞いたな……。
じゃなく
「わたし、真人君が殺人犯でもいい。
真人君の敵を、一緒に殺す。」
……
そんなこと、雨守にさせたくないから
「ちがうよ。
ちがうんだよ、真人君。
わたしの父は、わたしを捨てて一人だけ死のうとしたんだよ。
真人君までそうするの?
わたしを助けてくれたのは、なんだったの……。
死ぬのはいつでもできるけど、
幸せに生きることこそ最高の復讐、じゃない、の……?」
……。
「真人君のいない世界を残そうとするなら、
わたし、突き放されても一緒に逝くから。」
……。
「だから、一緒に住む。」
……は?
「化粧水とかは買わなきゃだけど、
だいたい持って来たから。」
あ、あのなっ
「だって、ここ、1LDKでしょ?
うちよりも広いよ?
わたし、そのソファーで寝られるから。」
じゃ、ねぇよ。
お前、頭おかしくなったのかっ
「なるよっ!
死んじゃうなんて、絶っ対、させないからっ!」
うっ
で、でも、お前、
交際関係にもない未成年の男女が同じ部屋に住むって
「上下三歳以内なら合意年齢、だよ。
わたしはいつでもいいから。」
な、なんか話、変わってないか?
「わたしはいつだってよかったんだよ。
この部屋にあがった時から、覚悟してたんだから。」
っ!?
「はーい、そこまでだよー。」
!?
「さ、沢名っ!!」
って、鍵、開いてな
「いーちゃーん、
高校生のうちは、節度のあるおつきあいをしないとだめだよー。」
「わ、わたしは、ただ、
生きていて欲しいだけで、
元気づけられることなら、なんでもって」
「んー。
じゃ、まーくんが生きてれば、
付き合う相手、だれでもいいんだねー?」
「ふぇぇるっ!!」
「いやー、よかったよー。
わたしもう、ふたりとも、
どっちでもよかったんだけど。
結果、かわらないからー。」
お前はなにを言ってるんだ、地元有数の名家の令嬢が。
だいたい、お前には婚約者が
「あー。そのはなしねー。それ、してなかったんだねー。
向こうの方から、取り消してきたよー。
門の外で土下座されちゃった。」
……は?
「あー、あははは。
あのね、清明君、英語、全っ然ダメだったらしいんだよね。
それ、親にガッツリ隠してて。
カナダだと、忖度なんてないからさー。
メッキがぜぇんぶ剥げた。」
そ、そういうこと……
って、なんでいるんだよ、真矢野。
「あー、これ、言わなかったっけ?
あたしさー、このマンションに越してきたんだよね。」
は、はぁっ!?
「な、ええええっ!!」
こ、これ、雨守もマジで驚いてるなっ。
「いやー、だって、
葉菜ん家のお父上から頼まれちゃってさー。
家賃向こう持ちだし、あたしも一人暮らししたかったし、
こっれはちょうどいいなって。」
た、頼まれた?
「だって、葉菜が住むところだからさー。
一応、チェック入れときたいわけだよ。
親としては。」
お、親としてって、
お前、自分がなに言ってるか
「ん?
あ、そうそう。
ぶぅぅっ!!!
お、お前ら、そんなこと言ってっけど、
超絶イケメン幼馴染が許さねぇだろがっ
「あー。まーくんってば、
それ、言うんだー。」
は?
「あははは。
あのね、ルトはいま、放心状態になっちゃってる。」
……ぇ。
「ほら、障子屋君、結構、信じちゃってたからさ。
障子屋君のご家族、可哀そうに、律儀な人達だから、
関係者全員に土下座行脚してるんだよね。
それで、ルトんとこにもいっちゃった。」
……。
「いやぁ、あたし、知らないって。
あたしはそりゃーもっとずーっと穏便に済ませたかったけど、
根が真面目な人って、ほら、郁ちゃん見てると分かるじゃない。」
って。
あぁ……
「な、なんですか、それっ。」
「郁ちゃんさー、
真人じゃないけど、いくらなんでも、一緒に住むってのは、
学校、認めないと思うんだよねー。」
「っっ!!!」
「ほら、学年三位でしょー?
給付つきのわりといいトコ、推薦で取れるわけだよー。
学校としてはさー、郁ちゃんに、傷、つけたくないんだなー。
真人、退学に追い込まれるよ?」
ぶっ!!
「それでさー、
いま、あたし借りたの、2LDKなんだよねー。
一人暮らしもいいなーって思ってるんだけど、
ちょーっと広いなーって思ってるんだよねー。」
「……ずるくないですか。」
「あははは。よーしよしよし。
あたしは中立だからねー。」
「……留美ちゃん、そうだったの?」
……お前ら、なぁ……。
「だから言ったでしょ?
相当、覚悟決めといたほうがいいよ、って。」
……。
「あ。
言っとくけど、こんなもんじゃないから。」
……は?
「いま、女子のス〇ー〇ーと〇INEで、
真人が殺されかけた、って、
めっちゃ流れまくってる。」
……はぁ。
「あー、わかんないかな。
郁ちゃんみたいなの、いっぱい来るから。」
「!」
「!?」
い、い、いっぱいっ!?
「あのさー、ほんっとわかってないと思うけど、
真人、校内では有名人だからね。
なんせ、葉菜と一緒に校内放送してたんだから。」
そ、それで有名になってるのって、
沢名だけだろうがっ。
「男子の中ではそうかもしんないけど、
女子は、事情、全然違うから。
わかってないついでに言うと、
あたしが殺されそうになった時にさ、
どうして郁ちゃんの言うこと、
そ、それは、
雨守がきちんと信頼を築いてからだろ。
「それは否定しないけど、
郁ちゃん、真人の名前を前面に出してたよ。」
ぇ。
「そ、そうだよっ!
引き籠ってお情けで入れて貰ってるわたしの言うことなんて、
誰も聞いてくれないんだからっ!」
「あー、それはそれで学年三位を舐めすぎてるけど、
郁ちゃんが真人の名前で言わなかったら、
もうちょっと疑われたと思うなー。
そっれよかさ。」
……真矢野。
お前、すっげぇ楽しそうだな。
「うん。
で、それよかさ、真下さんの時の、
あのクラス〇INE、あれ、女子のやつだから。
男子、絶対、入れないやつだから。」
そりゃまぁ、そうだろうけど。
「わかってないなー。
まぁ、今日、学校いったら、
3つ4つ、コクられるから。」
……はぁぁぁぁっ!!
「だって、殺されそうになったんだよ?
こんな凄いハレーション、あるわけないじゃん。
いままでだまーってたコたち、一斉に声、かけてくるよ。
あたしん時、そうだったもん。」
……あ、雨守どころか、沢名まで白目になってる……。
って、っていうかだな。
「あんなことがあったんだから、そっとしとくんじゃないかって?
あはははは、あたしもそう思ったんだけどさー、
違うんだ、支えたく、伝えたくなっちゃうんだなー。
ほら、郁ちゃん見てよ。常識、かっるがると飛び越えちゃったでしょ?」
「はぅわっっ!!!」
雨守、追加ダメージで、口に泡吹き始めたな……。
「……いっそ、今日、休むか?」
「んー。
あたしらはともかく、
郁ちゃん、奨学金だからねー。」
「ず、ず、ずるくないですかぁっ!!」
お前、それはいくらなんでも悪趣味が過ぎるぞ。
時節柄、問題になるわ。
「あはははは、うそうそ、ごめんごめん。
でも、そういうわけだから、覚悟、しといて?」
………いっそ殺されてたほうがよかったんじゃねぇか……。
「で、葉菜、隠すつもり?」
まだなんかあんのかよぉ……っ。
「んー。
そのつもりはなかったけど、
あー、わたし、こないだ、荻野辺さんとお話できたから。」
………。
さらっと、とてつもねぇことを笑顔で言いやがったな。
っ!?
だ、だから、東郷家の奴らが土下座って……
こ、コイツはっ……。
「だからもう、気にしないでいいよー。
言ったよね? わたし、一年の時から、ずっと好きだったんだから。
わたしのほうが、いーちゃんよか、ずっとずっと先なんだから、ね?」
ね、って言われても、だなっ……。
「そ、そんなっ……。」
「おーよしよしよし、
あったしは、マジで中立だからねー。」
お前それ、どこまで本気なんだよ。
「いやー、あたしくらい中立でいてあげないと、
誰とも話せなくなるでしょ? これから。」
これから、って。
……お前ら、なぁ……っ。
*
……はぁ。
「お前らな。
せめてもうちょっと遠くにいろよ。」
「嫌だよっ。」
「なんで?」
「だそうだよー?」
「あのなっ!」
「あははは、これから、毎日こうだから。
だから言ったでしょ?
相当、覚悟決めといたほうがいいよって。」
「真矢野、
お前、マジで楽しそうだな……。」
「あはははは、いやー、
そう見えてるんだったら、
あたしも女優やれそうだと思うよー。
ま、楽しんでいこーよー。」
………。
楽しめっこないわ、こんなの。
……。
ただ。
(わたし、真人君が殺人犯でもいい。
真人君の敵を、一緒に殺す。)
……
もうちょっとだけ、
生きていても、いいのかもしれない。
こんな生活、絶対続くわけがない……、はず、だから。
「さ、修羅場にれっつごーっ!」
お前なっ!!!
夢で見た、疎遠になったクラスメートを助けたら、修羅場がはじまった
第二章
了
(修羅場編に続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます