第7話 お兄ちゃん、マッサージしたる!

「勉強教えてくれたお礼に、マッサージしたる。お兄ちゃん、今日も部活で体いっぱい動かしてきたんやろ?」


「ほら、うつ伏せになって。――そうそう。じゃあ、まずは足の裏からいくでえ」


「もみ、もみ――もみ、もみ――」


「力加減はどうですか~、お客さん。――なんてな」


「どう、気持ちええ?」


「部活でいっぱい走って疲れたやろ? ウチが気持ちようしたるから、お兄ちゃんはリラックスしといてや」


「ふくらはぎもパンパンや。ゆっくりほぐしていくからな」


「もみもみ、もみもみ――」


「次は上半身やな。お兄ちゃん、ちょっと上に乗るで。……大丈夫? ウチ、重くないかな?」


「肩凝っとるな。最近疲れ溜まっとらん? ――そう、それやったらええんやけど。東京来て半年言うても、慣れないこともまだまだあって大変やろ? 一人暮らしやし。しんどくなったらいつでもウチに電話してきいや。おしゃべり付きおうたるし、またこうやってマッサージしに来たる」


「救世主にも休息は大切やで」


「もみもみ、もみもみ――」


「――お兄ちゃん、マッサージ終わったで」


「気持ちよさそうに眠っとったな。お兄ちゃんがリラックスできたみたいでよかったわ」


「マッサージには自信あるねん。動画とか見て色々勉強したから」


「え、なんでマッサージの勉強をしたか? そりゃお兄ちゃんに……な、何でもないっ! 今のは聞かへんかったことにしといて! 分かった?」


「ふぅ……。せや、罰ゲーム思いついたで」


「ほら、お風呂のとき話したやん、罰ゲームするって」


「あ、もしかしてお兄ちゃん、ビビっとるん? お兄ちゃんもかわええとこあるねんなあ」


「ふふっ。そんなにむきになって言い返さんでも」


「分かった、分かった。お兄ちゃんはむきになっとらへん。……そういうとこがむきになっとる言うんやけど」


「何でもない。ほな罰ゲームの内容発表するで」


「耳掃除や」


「お兄ちゃん、耳弱かったやろ。子供の頃、ママに耳掃除されるの、いっつもイヤイヤ言うとったやん」


「治った? 怪しいなあ。ほんまかどうか、ウチが確かめたる」


「ほら、お兄ちゃん、ウチが膝枕したるから」


「……いつまで抵抗しとるつもり? 耳掃除が嫌なら、もう一度お風呂で洗いっこする? 今度は途中でやめて言うても、最後までしてもらうで」


「分かればいいんや、分かれば」


「綿棒? ウチが持っとるから大丈夫や」


「ほな行くで――かきかき、かきかき――どうや、気持ちええか?」


「もっと優しく? こちょこちょ、こちょこちょ――これでどうや?」


「お兄ちゃん、めっちゃ眉寄っとるで。やっぱり耳弱いんやんか」


「あっ! 動いたらあかんって。鼓膜が傷ついたら大変やろ。ほら、大人しくしといて。これは罰ゲームやねんから、ちゃんとウチの言うことを聞かへんと」


「こちょこちょ、こちょこちょ――こうしてるとお兄ちゃん、赤ちゃんみたいや。おっきな赤ちゃん。そんでウチがお母さん」


「別に馬鹿にしとらんって。お兄ちゃんはいつだってウチの救世主やねんから」


「ほら、機嫌直してえや、お兄ちゃん」


「もうっ! いつまでもねてる子にはお仕置きが必要みたいやな。――はむ」


「えへへ。お兄ちゃんの耳、ピクッてなったあ。ウチの甘噛み、そんなに気持ちよかったんか?」


「ほらほら、機嫌直してくれへんと、もっとはむはむしちゃうぞ」

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