再び塔へ4

「見つかったみたいだ。戦うぞ!」


 シタチュフリスラの視線が圭たちの方に向いた。

 口を大きく開けて一度鳴いたシタチュフリスラは地面を蹴って駆け出す。


「こっち来い!」


 カレンが前に出て盾を構えながら魔力を差し向けて挑発する。


「けっこう力強いな!」


 盾に剣が当たって甲高い音が鳴り響く。

 シタチュフリスラは叩きつけるように何度も剣を振り下ろすけれどカレンは盾で剣をしっかりと受け切る。


 力は強いが剣の扱い方は雑で力が乗り切っていない。

 これなら何発でも受け切れるとカレンはニヤリと笑う。


「おおっと!?」


 シタチュフリスラが盾に噛み付いた。

 牙からダラリと紫色の液体が垂れてカレンはそれに触れないようにシタチュフリスラを押し返して盾についた液体を払う。


「お、くっ!」


 カレンを執拗に攻撃するシタチュフリスラに圭が剣を突き出した。

 シタチュフリスラはグニャンと上半身を逸らして圭の剣をかわして反撃を繰り出してきた。


 シタチュフリスガよりも柔軟で俊敏、反応も速い。


「どりゃ!」


 けれども攻撃は圭だけで終わりではない。

 素早く後ろに回り込んだ波瑠がシタチュフリスラの足の一本を切り落とした。


 四本よりも三本の方が一本あたりにかかっている重量は大きい。

 足を切り落とされたシタチュフリスラはバランスを大きく崩す。


「ふおおっ! シャリン……パーンチ!」


 シャリンもなんとなく連携というものを理解してきた。

 バランスを崩して倒れかけたシタチュフリスラに飛びかかって強打一撃。


 ぐしゃりと音がしてシタチュフリスラご自慢の牙が吹き飛んでいく。


「フィーネ……カッター!」


 さらにフィーネが大鎌を振り下ろす。

 フィーネの体から作られた大鎌はシタチュフリスラの硬い鱗も切り裂いて胴体を真っ二つにした。


「まあ一体だけなら問題ないな」


 進化したものといってもシタチュフリスラもC級モンスターの分類である。

 一体だけ戦う分には大きな問題はなかった。


 シタチュフリスラも魔石だけ取り出して死体はそのまま置いていく。


「ねーなぁー」


 単発のシタチュフリスラと時折戦いながら山の反対側までやってきたが王の墓所なる場所は見つからない。


「一周回ってみてだけど……なければ帰ることも考えようか」


 もう半周回って山の麓を一周して王の墓所が見つからなければ帰るか、それとも山の中腹まで登ってまた一周探してみるかである。

 麓で見つからなかった場合どちらにするのか決まってはいないが仕切り直した方が良さそうだと考えていた。


『シタチュフリスガの巣を探せ! クリア!

 シタチュフリスガの巣から失われた鍵を見つけ出せ! クリア!

 王の墓所を見つけろ! “山の頂上に向かって”


 シークレット

 王の遺品を見つけろ!』


「ん?」


「圭、どうしたんだい?」


 圭が急に足を止めてみんなは不思議そうに系のことを見る。


「急に表示が……」


 なんの意識もしていないのに圭の目の前に表示が現れた。


「あれ……?」


 なんの変哲もない試練表示だと思ったら一箇所だけ違うところがあった。

 王の墓所を見つけろの隣に見慣れない文字が増えていた。


「あっ……」


 他の表示の文字と違っていて少し歪んだような文字で圭が眺めていたら透けるように消えていってしまった。


「何があったの?」


「何かからのメッセージのようだ」


 圭は波瑠の質問にため息混じりに答えた。


「メッセージ? なんて?」


「山の頂上に向かえとさ」


 山の頂上に向かってというメッセージはしっかり見たので覚えている。

 どうしてそんなメッセージを送ったのか、おそらく王の墓所の場所についてだろうと圭は思う。


 ただそれが何故なのかはわからない。

 敵が送ったものなのか味方が送ったものなのか。


 親切な助言のように見えて罠の可能性も十分にあるのだ。


「どうするんだ、お兄さん?」


 圭は山を見上げる。

 相変わらず山の上には真っ白な雪が積もっている。


「どうしようか……」

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