父あるいは母の面影1
鍵も手の中にあった。
あとは門に向かえばよく、そのために第四階層に行く必要がある。
向かうための方法には階段を降りるか、落下口と呼ばれるものから落ちるか、テレポートポータルを使うかであるとルシファーは説明してくれた。
階段とテレポートポータルは第三階層から第二階層に登る時にも聞いたのでいうまでもない。
落下口というのは噴出口の逆みたいなものである。
ざっくりと説明すると風が出てこない噴出口で落下口に落ちると下の階層に行くことができる。
噴出口と同じく管理している人なんかいないもので無料で自由に使える。
ただし落ちていくという都合上ちゃんと着地できなきゃ危険らしい。
第二階層に来る時には噴出口を使ったので落下口を使うのかなと圭は思っていた。
けれどもルシファーはテレポートポータルを使おうと提案した。
テレポートポータルは第四階層にも繋がっている。
交渉材料となる食料品もあるのだから落下口を使わずテレポートポータルで行った方が安全かつ楽である。
ついでに他にも目的があった。
「テレポートポータルの方は無事で助かったな」
門がある町は大きく、テレポートポータルも同じ町にあった。
階段は崩壊していて使えず門の調子は悪いが、テレポートポータルの方はいつも通りに動いていた。
やはり階段が使えないためかテレポートポータル周りにも悪魔が多かった。
テレポートポータルは広場のようになっているところにあって複雑な魔法陣が地面に描いてあった。
眺めているとお金を払った悪魔が魔法陣の真ん中に立ち、魔法陣が光って悪魔が消える。
文字通りのテレポートであった。
逆に何もないのに魔法陣が光って悪魔が現れたりもしていた。
他の階層からもここにテレポートしてくるようである。
「四体分、第四階層まで」
テレポートポータルを管理している悪魔に声をかける。
大きな杖を持った腰の曲がった悪魔は圭たちのことをチラリと見た。
今フィーネはまた人型を解除して圭の服の中に隠れている。
そのまま出しておくとテレポートポータルで移動する人数に含まれてしまうからだ。
圭たち三人とルシファーを含めて四人分の移動をお願いする。
「支払いは?」
「物で頼む」
「第四階層まで高いぞ」
「一人一つ、これでどうだ?」
「これは?」
「人間の食べ物だ」
圭は事前に取り出しておいた食べ物を悪魔に渡す。
今回用意したのはパウチタイプのもので温めるだけで食べられるものである。
「……ならば四つか?」
「もちろん」
「よかろう」
落ち着き払ったような顔をしているが目がギラリと光ったのを圭は見逃さなかった。
人間の世界では数百円ぐらいの代物であるけれど悪魔にとっては人間の食べ物は大きな価値を持つ。
理解はできるのだけどとても不思議なものであると思わざるを得ない。
四つのパウチを渡すと悪魔に魔法陣の真ん中に立つように促される。
圭たちが魔法陣の真ん中に立つと悪魔が杖を大きく振る。
すると魔法陣に魔力が広がって光り輝き出す。
体が浮かび上がりそうになる感覚に襲われてパッと目の前が暗くなった。
ーーーーー
「さっさとポータルから退けな」
特別なこともなく瞬く間に景色が変わっていた。
第二階層では多くの悪魔がいたけれど第四階層はポータル周りにあまり悪魔もいない。
第二階層のテレポートポータルを管理していた悪魔とよく似た悪魔が気だるげな目をして手を振る。
「これで着いたのか?」
あまりにもあっけない到着にジャンも少し疑っている。
「ふむ、着いたぞ」
「確かにこの手軽さなら金が取れるな」
噴出口がなんだったのかと思えるぐらいに一瞬で簡単に第二階層から第四階層に移動できた。
管理をしてお金を守るのも納得だし、お金を出して利用するのも納得だった。
「早く退けろ」
第二階層の悪魔に比べて第四階層の悪魔はやや態度が悪い。
周りには他に悪魔もいないので急いで退ける必要もないだろうと思いながらもトラブルは避けたいので言われた通りに移動する。
『あなたにゆかりのある悪魔があなたの存在に気づきました!
あなたのことを見つめています!』
「あっ……また……」
テレポートポータルから退けた圭の前に表示が現れた。
以前不意に出てきた表示と同じ文言が書かれている。
第二階層にいる時には出なかったのにどうしてまた出てきたのだと少し不安になるけれど、気にしたところでどうしようもない。
圭は表示を消してひとまず気にしないことにした。
「誰かに話を聞こう」
門に向かいたいところであるが第四階層にある門の場所は分からない。
そのためにまず門の場所から調べなければならない。
だからテレポートポータルを使ったという側面がある。
なぜならテレポートポータルは町中にあり、テレポートポータルで移動すれば町中に移動できて近くに話の聞くことができる悪魔がいる可能性が大きいからであった。
「人型の悪魔が多いな……」
適当に町中を歩いて悪魔を探す。
第二階層の町よりも悪魔の数が少ないのだが、悪魔の違いに圭たちは気がついた。
第二階層の悪魔はモンスターにも近いような異形の姿や動物のような姿をしているものが多かった。
対して第四階層にいる悪魔は人間のような形をしている悪魔が多い。
ツノが生えていたり肌が青や赤といった人間にはないような特徴は持つものの二足歩行で手足がさらりとしている形としては人間に近いものがあった。
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