汚れた魔力の天女を止めて11

「うっ! やばっ……うぎゃ!」


 慌てた薫はいつものメンバーだけを強化していた。

 A級覚醒者の風馬や薫の治療で持ち直したB級覚醒者の右近は気絶しているD級覚醒者を抱えて警戒するように後ろにいた。


 そのために強化された圭たちは前に出るような形となった。

 一番足の速い波瑠はそのままゲートを駆け抜けた。


 そして続いて圭が後ろから押されるようにゲートに飛び込んでみんなも同じく次々とゲートに飛び込んだ。

 圭はゲートから飛び出して畳敷の床に倒れ込み、そこに他の人たちもなだれ込むに飛び込んできた。


「お……重い……」


 結果として圭はみんなの下敷きになった。

 人を抱えた風馬や右近はスマートにゲートから出てきたからそこは助かったと言えたかもしれない。


「ゲートが閉まる……」


 振り返った波瑠が見たのは青白く光るゲートが少しずつ小さくなって最後には消えてしまう光景だった。


“ありがとう”


 ゲートが消える瞬間、どこからか優しい女性の声がみんなには聞こえていた。


「な、なんじゃこりゃ!?」


 みんなが退けていき、圭も救出された。

 若干骨が軋むような感じがあったので治療を受けているとカレンが驚いたような声を上げた。


「カレン、どうした?」


「た、短剣が!」


「あれ……」


「そんなのカレン持ってたっけ?」


 カレンは手にメイスを持っていた。

 ただいつものメイスではない。


 いつものメイスは鉄製でなんの変哲もないものだったのだが今カレンが持っているのは真っ白で大ぶりなものになっていた。

 そもそもカレンがゲートを出る時に持っていたのはメイスではなくイスギスから受け取った短剣だった。


 カレンのメイスはゲート中に置き去りで、知らないメイスに変わっていたことにカレンは気づいて驚いたのである。


『お礼だ。受け取るといい』


「あっ」


 圭の前に短いメッセージが表示された。

 誰からのものかは書かれていないけれど圭にはそれが誰からなのかすぐに分かった。


「イスギスからのようだな」


「そういえば……ゲート出る時にヒドゥンピース達成みたいなもんあったな」


 チュビダスを倒した時にヒドゥンピースの条件達成の表示がカレンの前に現れていた。

 すぐにエスギスのことに話が移り変わったのでほとんど表示のことを意識しないで消してしまっていたのでそういえばぐらいの感覚しかない。


 どうやらヒドゥンピースなるものの達成報酬としてカレンの持っていたイスギスの短剣がメイスに変わったようである。


『破魔のメイス

 イスギスが神になる前の最後に作った武器。

 魔王を倒すために作られたものでエスギスが生きていたのなら渡すつもりだったものを神になってから完成させた。

 昇神したエスギスの力が宿っている。

 使用者に戦いの聖なる力を与えて体を強化してくれる。

 神が作りし武器であり品質は非常に高く魔力の流れや魔法の発動を補助してくれる。

 エスギスの加護により才能の力を強化してくれる。

 魔力適応率が高く使用時に体力と筋力と魔力に補正を得られる。


 適性魔力等級:A

 必要魔力等級:D』


「またなんか良さそうなものだな」


 圭がメイスの能力を確認して驚く。


『八重樫カレン

 レベル55

 総合ランクD(C)

 筋力C(B)(伝説)

 体力C(B)(神話)

 速度D(一般)

 魔力C(B)(英雄)

 幸運E(一般)

 スキル:大地の力(+)

 才能:不屈の再生力を持つ肉体(+)』


 カレンのステータスを見てみると装備の強化込みで総合ランクCに至っている。

 つまりは今のカレンはB級相当の強さがあるということになるのだ。


「すげえな!」


「カレン強い!」


「フィーネノホウガツヨイ」


「ふん、フィーネにゃ負けねえさ」


 B級程度なら完全に高等級と言っていい。

 良い装備も大事というが一つ等級が上がるほどの効果を得られるなら納得である。


「盾の封印解きに来ただけなのに色々とあったもんだな」


 交換条件を満たすために軽く来ただけなのにダークリザードマンと戦い、さらにはイスギスの願いを受けてエスギスとまで戦うことになった。

 どちらの戦いも案外危ないところであって、そんなつもりなかったのにと思わざるを得ない。


 でもそのおかげでカレンの大幅な戦力アップにはなった。


「結果オーライ……なのかな?」


「ピーッ!」


「おらおら! これが私の力だ!」


 カレンがフィーネの頬を引っ張っている。

 ともあれみんな無事だったからいいかと圭は小さくため息をついたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る