堕ちた天女2
「それにモンスターが観測できなかったか……」
そこが一番引っかかると剣心は思った。
大体の場合モンスターの姿は確認できるものだが時折モンスターが見当たらないことがある。
姿を隠すのが巧みなモンスターである場合やある程度近づかないとモンスターが現れないなんて場合もある。
ただ通常のゲートと違いそうな雰囲気があることは感じていた。
「入っても封鎖されなかったということはレッドゲートではない……しかし上九条ゲートのようなこともあるからな」
特殊なゲートの例としてレッドゲートが挙げられる。
入るとゲートが変化を起こして攻略するまで出られなくなり中の難易度も変化する。
調査に入ってレッドゲート化しなかったことを考えるとレッドゲートではなさそうであるが、入って進行した後にレッドゲート化した上九条ゲートの例があると剣心も頭を悩ませる。
「おじい様、竹下さんと連絡が取れました。いつでも動けるそうです」
剣心の門下生は意外と多くいる。
今東北に行っている門下生の他にも門下生がいた。
さらには今は門下生でなく他で活動している覚醒者もいて、風馬はそうした覚醒者に声をかけていた。
剣心と風馬のためならばと声をかけた覚醒者たちの多くから色良い返事が来ていた。
「竹下も来てくれるか。これだけいて、村雨さんも来てくれれば問題もないか。話してみよう」
それなりに頭数は揃った。
そこに圭たちも加わってくれると立派な攻略隊になる。
どのようなゲートであれリスクがないなんてことはない。
判断するのは圭たちであると剣心は話をしてみることにした。
「少しいいかな?」
「あ、はいどうぞ」
部屋で休んでいた圭のところに剣心が訪ねてきた。
ちょうど他のみんなも部屋にいたので都合もいい。
「ゲートの測定が終わった」
剣心は圭にゲートの調査結果を伝えた。
「よければ手伝ってくれるか?」
やや不安定さが目立つ、不確定なことが多いゲートであることを包み隠すこともなく伝えて協力を要請した。
「ええ、もちろんです」
「返事が早いな。協力感謝する」
元々協力しようと思っていたし集まっている間にもみんなと話して協力を要請されたら受けようと話はまとまっていた。
「人が集まる都合があるから攻略は三日後に行う。それまでゆっくり体を休めておいてくれ」
「あの……」
「なんだ?」
「急なお願いなんですけど少しだけゲートに入ってもいいですか?」
「ゲートに?」
剣心は驚いたような顔をした。
圭が攻略を焦っているようには見えない。
手柄を独り占めするような性格にも思えないし何かの事情がありそうだと感じた。
「……村雨さんの目には普通の人には見えないものが見えている」
圭には何かの目的があるのだろう、そう剣心は思った。
「何があるのか分からないのでゲートから離れないように」
「分かりました。ありがとうございます」
『イスギスがゲートの中であなたを呼んでいます!』
お礼を言う圭の視界には消しても消しても出てくる表示が見えていたのであった。
ーーーーー
「またなんなんだろうね?」
「イスギスってあれだろ? 盾に関わってるやつだろ?」
しっかりと装備を身につけた圭たちはゲートの前にいた。
普通のゲートなら覚醒者協会が周りを封鎖するのだが攻略するギルドが決まれば任せることもある。
今回のゲートは剣心に任されていて、緊急時の連絡用に二人の職員を残して後は戻ってしまった。
ゲートの見張りも覚醒者協会の職員二人と右近と左近の交代で行っていた。
「気をつけてくださいね」
「ありがとうございます」
今の見張りの左近に見送られて圭たちはゲート中に入った。
「聞いてた通りの場所だな」
「中世風の町並み。ちゃんとしていれば綺麗そうなんだけどねぇ」
ゲートを抜けるとそこには町があった。
現代風の町ではなく古いヨーロッパなんかにありそうな町並みが続いている。
しかし建物はボロボロで何かの戦いがあったような跡が見られる。
ゲートの後ろに目を向けてみると城壁と門があった。
圭たちがいるのは城壁に囲まれた町の中であり、門から入ったすぐのところにゲートがあるようだった。
門は大きく破壊されてもうその役目を果たすことは不可能な状態である。
「なんだか陰鬱とした雰囲気があるな」
空は曇天で重たく黒い雲が一面を覆っている。
今にも雨でも降り出しそうな空のせいか全体的に町中も暗く、ゲートの中にいるだけで気分が盛り下がるようだ。
モンスターの姿もなく静かなゲートの中をキョロキョロと見回す。
「ゲートの中で呼んでるって言ってたのにな」
何かの反応があると思って入ってきたのに今のところ何もない。
「違うゲート……だったのかな?」
ゲートとざっくり表示には書いてあっただけでどのゲートとは特定されていない。
圭はこのタイミングで現れたゲートが関係していると思ったのだけど違ったのだろうかと首を傾げる。
『イスギスがあなたのことを呼び寄せます!』
「えっ」
また表示が現れた。
その瞬間に圭の視界は光に包まれて体が浮かび上がるような感覚に襲われた。
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