薬草を探せ!1

 D級ゲートをクリアできようになったので金銭的な余裕も生まれた。

 ファイヤートードは全身買取だったので意外とお高く買い取ってもらえて重恭にボーナスを出しても大丈夫なぐらいな金額になったのだ。


 お陰でお金的なことを考えてセコセコとゲート攻略をしなくてもよくなった。


「忘れ物はないな?」


「ああ、大丈夫だよ」


 神様から言われたことの一つに塔を攻略しろ、みたいなこともあったことを圭はふと思い出したのだ。

 薫のレベル上げも必要だったので後回しにしていたけれどそろそろ塔もまた攻略し始めることにした。


 上九条ゲートのボスであるカルヴァンとエリーナはA級モンスターであった。

 それを圭たちは倒した。


 どうやらほとんどトドメだけだったから経験値をもらえた量は少なかったみたいであるが、それでも一人当たりレベルが5上がっていた。

 薫に至ってはレベルが低かったためか7上がって29にまでなっている。


 塔の低層階ならもう何の問題もない。

 お金に余裕ができてモンスターの回収も特にしなくてもいいので自由に探索することもできることも理由である。


 一度クリアもした階は勝手も分かっている。

 圭たちもあの時より強くなったし薫の分をさっさと攻略した。

 

『女神像に貢物を捧げろ!


 イージャス草 0/10

 ペトラの実 0/10

 コドゥンの葉 0/10


 シークレット

 忘れられた女神像を探せ!』


 そしてサッと四階まで登ってきた。

 結構登ったつもりだったけれど三階のフィーネに関することが出来事が濃密すぎただけで意外と階数は登っていなかった。


 改めて塔の試練を確認する。

 内容としてはお使いのようなもの。


 薬草探しの試練となっている。

 難しいことも何もなく本当に薬草を探し出して捧げるとクリアできる階であった。


 しかし四階は他の階よりも意味のある階でもあった。

 なぜなら四階で採れる薬草は現実に有用な薬草として外の世界でも利用されているからだ。


 医療薬としてだけではなく、健康食品や覚醒者の傷の回復を早めるポーション薬などの材料にもなる。

 だから四階で採れる薬草は今や奪い合いとなっている。


「イージャス草、三本で五万円だよ!」


「コドゥンの葉は今日は一枚十万円だ!」


 そのためにズルい商売までエントランス近くでは行われている。

 多くの覚醒者がエントランス前に集まって、必死になって探してきた薬草を高値で売りつけようと呼び込みをしていた。


 もちろん日本だけでなく他の国の人もいる。

 こんなことがまかり通ってしまうと塔の攻略も滞り、薬草の価格も跳ね上がってしまうので対策が検討されている。


 ただし塔の中は複数の国からアクセスできる無国籍地帯でもあるので取り締まることも難しいようだ。

 エントランス前の取引をやめさせたところで別の場所で同じことが行われるだけになる。


 由々しき問題だ。


「はぁ〜、あんな葉っぱが十万って……」


 四階の状況を聞いたカレンは覚醒者が見せつけるように持っているコドゥンの葉を見てまゆをひそめた。

 あんな葉っぱに十万円出すならちょっとお高めのお肉でも買って焼肉パーティーでもしたいものであると思った。


「でもそんなんなら試練をクリアの大変じゃないですか?」


 薬草が取り尽くされて残っていない。

 試練クリアには薬草が必要なのにどうしたらいいのか。


 薫の疑問ももっともである。

 お金で解決するのが一番手っ取り早い。


 けれど聞こえてくる薬草の値段を考えると試練をクリアできるだけの薬草だけでもとんでもない額になってしまう。


「一応ここの試練も全員それぞれ要求される数が必要なんじゃなくてチームならチームで集めればいいらしいんだ」


 薬草がそれぞれ10個必要。

 圭たちは5人いるので50個ずつ必要というわけではない。


 チームならチームで10個ずつ見つけて捧げればそれでいいというのが事前のネット情報で調べた結果分かった。

 ほんの少しだけクリアのハードルは下がった。


「あとは救済措置……みたいなものもあるんだ」


「救済措置? なんだそりゃ?」


「四階はある意味危険な場所なんだ」


「どういうこと?」


「低層階だと弱いモンスターしか出ないけどここはB級モンスターまで出るんだ」


 呼び込みの声がうるさい。

 だからエントランスから離れつつ事前に仕入れてきた四階の情報を披露する。


「B級!? だとしたら危険すぎないか?」


「でもないんだけどね」


「なんだよそれ?」


「四階は奥に行くほど危険になってるんだ」


 三階から四階へのエントランスから四階から五階へのエントランスまでの周辺は弱いモンスターしか出てこなくて安全。

 しかし四階から五階へのエントランスから奥に進んでいくとモンスターがだんだんと強くなる。


 最奥まで行くとB級モンスターが出てくるということで、無闇に足を踏み入れなければ危ないこともないのが四階なのであった。


「それのどこが救済措置なんだ?」


「エントランス前であんなことしてる奴らが強いと思うか?」


「あー、いや」


 強ければモンスターと戦ってもっと割が良く稼げる。

 ということはエントランス前にいるのは弱い人たちである自然とわかるのだ。

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