カエルは鶏肉の味らしい5
ただ圭も手を繋ぐことに同意はしたけど別に慣れているわけでもなければ何も思わないわけではない。
照れ臭い空気のまま歩いていく。
そんな様子を目撃した重恭は若いとはいいなと思った。
圭と波瑠は重恭と合流してトラックでファイヤートードを集めてある場所まで向かった。
「問題は?」
「なーんもないぞ」
一応確認したけれどカレンたちも他のファイヤートードに襲われるなんてこともなかった。
トラックにファイヤートードを積み込み、圭たちもトラックに乗ってゲートまで戻る。
「お昼にしよう」
良い時間なのでお昼を食べることにした。
食事は大事である。
ゲートの外では重恭が事前にある程度の準備をしてくれていた。
今回のお昼はバーベキュー。
「1体さばいてみるか」
「げっ、食べるの?」
ファイヤートードの肉は一応食用になる。
そこそこ美味しいと聞いているのでせっかくなら食べてみようと圭はモンスター解体用のナイフを取り出した。
これを食べるのかと波瑠は怪訝そうな顔をした。
圭は気にせずファイヤートードを解体し始める。
みんなが食べる分があればいいのでざっくりと肉を取るぐらいでいい。
意外と弾力のある肉を切り裂いて大きめのブロックに切り分ける。
「立派なもんだねぇ」
元がカエルということは頭をチラつくけれど肉になってしまえば他のものと差はない。
すでに焼き始めているお肉などの横にファイヤートード肉も置く。
「圭、どうぞ」
「お兄さん、食べなよ」
「お前ら……」
焼けたファイヤートードのお肉を圭の皿に乗せる夜滝。
ひとまず圭に食べさせて様子見しようとしていることがヒシヒシと伝わってくる。
気持ちは分かる。
食べてみようと言い出したのは圭であるし塩でファイヤートードをいただいてみることにする。
一口サイズに切ったファイヤートードをパクリと口に放り込む。
「ん!」
「大丈夫ですか?」
薫がサッとヒールの準備をする。
「美味い!」
嘘偽りなくファイヤートードの肉は美味しかった。
あっさりとしていながら噛むとジューシー。
すごく良い鶏肉のような旨味が溢れている。
「そ、そんなに美味いのか?」
圭はパクパクとファイヤートードの肉を口に運ぶ。
美味い美味いと言って食べられるとカレンも味が気になってきた。
「ちょ、焼けてんの無くなっちまうだろ!」
隅の方で控えめに焼いていたので数も少ない。
圭が食べ切ってしまいそうなので慌ててカレンも一つ取った。
「あっ、うまっ!」
カレンは焼肉のタレにつけて食べてみた。
多少の勇気は必要だったけど口に入れてみるとなぜ早く食べなかったのか後悔しそうなほどだった。
「もうちょい焼こうぜ」
「そうだな。肉はまだあるしな」
カレンまで食べ始めるとみんな気になる。
最終的には渋っていた波瑠も味は美味しかったと感想を残した。
「それにしてもなんですが……」
「なんですか?」
「その……それ、と言っていいのか分からないですが……あの、なんですかね?」
「それ?」
「ピピ、オイシイ」
「だろ? 私はタレジャブ漬けが好きなんだ」
「…………仲間です」
そこにいたのフィーネだった。
トラックに乗り込むときにはカレンの防具のように擬態していたフィーネ。
いつの間にか普通に姿を現して、普通にカレンとファイヤートードの肉を食べていた。
重恭にはまだフィーネのことは説明していない。
カレンたちが普通に接しているので警戒はしていないようであるがフィーネがなんなのか不思議そうな顔をしていた。
「仲間ですか。まあ……敵じゃないのならいいです」
そもそも色々な疑問はある。
圭がD級ゲートを攻略していることだって重恭からしてみればかなりの疑問である。
圭が元々G級覚醒者であったことを重恭は知っている。
それなのにあれよあれよとD級モンスターを倒せるまでに強くなっている。
このことだって普通には考えられない異常なことであり、どうしてなんだと聞きたくなることもある。
しかし重恭は自分の命を助けてくれ、こうして生活まで保障してくれる圭に感謝をしている。
今の圭は目が輝いて前を見ている。
怪しいところなど何もなく、全幅の信頼を置いている。
だから疑問を抱いても圭が話さないのなら特に聞き出すつもりもない。
「……ありがとうございます、聞かないでくれて」
「みなさんと仲良くしている。敵でなければそれでいいんです」
圭としても何も聞かずに支えてくれる重恭はありがたい存在であった。
「ファイヤートード、どうぞ」
「これはありがとうございます」
直接戦いには参加しないけれども重恭も立派な仲間の1人である。
だいぶ遅くなったけれどフィーネと重恭の紹介も済ませることになった。
「ただ気をつけてくださいね」
「何をですか?」
「モテるというのはいいですがあまり気を多く持たせると愛が憎しみに変わることもある。私の大学時代の同期は女性に刺されました」
「あ、あはは……」
手を繋いでいたの見られたのかと圭は気まずさと恥ずかしさで顔を赤くした。
「心配入らなそうですが……年長者の小言だと思ってください」
「はい……気をつけます」
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