日常+フィーネ3
フィーネに対抗心を燃やした夜滝が皿洗いをしている間にお風呂を入れる。
うら若き男女が同じ部屋でお風呂まで入っていいのかという話はある。
もちろん引っ越してきた最初の頃は各々の部屋で入浴していた。
けれど小さい頃は一緒に入ったこともあるからいいじゃないかとか夜滝に説得された。
最終的には水や燃料代の無駄になる、続けて入れば節約にもなるだろう?
なんて言われて確かにと思ってしまった。
金銭的な余裕は出てきたけれどこれまで貧乏ぐらしをしてきた圭の貧乏性は簡単には抜けないのである。
美少女が入った浴槽だよ? と言われた時には洗脳が解けそうになった。
けれどタオルの洗濯もまとめてやった方が楽だし、お風呂の掃除も一回で済むと考えるうちに最終的に夜滝の部屋の方でお風呂に入っていくことになった。
「ふんふーん」
「フンフーン」
一悶着あった。
フィーネもお風呂に入ると言ったのだけど夜滝がなら私と入ろうとフィーネを連れて行こうとした。
しかしフィーネはテーブルにしがみついて圭と一緒に入ると言って聞かなかったのである。
フィーネに根負けした夜滝が圭も一緒にお風呂に入るぞと言い始めてなだめるのが大変だった。
結局夜滝は1人でお風呂に入った。
流石に大人になって一緒にお風呂というわけにはいかない。
そしてお次は圭の番。
フィーネも圭について浴室に入ってきた。
見た目的には金属っぽいし機械と言われれば機械のようにも見えるフィーネ。
水大丈夫かなと心配しながら少しずつシャワーをかけてみたけれど全くもって平気だった。
ボディーソープを泡立てて洗ってやるとちょっとピカピカになった。
圭はお風呂が好きだ。
温かくて、誰にも邪魔されない空間。
疲れや悩みがお湯に溶けて消えていくような安らぐ時間。
普段は滅多に鼻歌なんて出ないのだけどお風呂に入る時には気分が良くなって軽く歌ってしまう。
それをフィーネはマネしている。
「さて……肝心のお風呂だけどな」
体も綺麗にしたのでお湯に浸かろうと思った。
そこでチラリとフィーネを見る。
フィーネは決して軽くはない。
言うなれば見た目相応の重さなのであるがずっしりとしていて、とてもじゃないけれど水に浮く感じがしない。
「まあちょっと様子見るか」
危ないかなとは思うがフィーネがどうするのかも気になって圭はそのままお風呂に浸かってフィーネの様子をうかがってみることにした。
「フィーネモハイ……」
「フィーネェー!」
チャポン。
なんてこともない。
フィーネは普通にお湯に入ろうとして、沈んだ。
「ボボボ、ピピ?」
「お、おい、大丈夫か?」
慌てて水の中からフィーネを掬い上げる。
「オユ、キモチイイ!」
圭は慌てたけれどフィーネは全く何も異常がない。
フィーネは呼吸をしているものではないので多少水に沈んだところで気にならないのである。
それでも温かいお湯はフィーネにとっても気持ちがいいらしい。
「うーん……」
フィーネは気にしないようだけどお風呂の底にフィーネを沈めておくのはなんだか圭の気分がよろしくない。
「じゃあこうしようか」
「オフロスキ!」
「そうか、それならよかったよ」
圭は風呂桶にお風呂のお湯を入れてその中にフィーネを入れた。
割とちょうどいい感じにはなった。
「ふぅ」
お風呂で身も心も温まった。
タオルでしっかりとフィーネも拭いてやってリビングに戻ってくるとソファーの上でダラリとしてる夜滝がアイスを食べていた。
「フィーネも食べるかい?」
「ピピ……タベル!」
「どうだい?」
「オイシイ!」
お風呂に入る前にはやや不機嫌そうだった夜滝だけど機嫌は直ったように見えた。
スプーンですくったアイスをフィーネにも食べさせてあげている。
「もっと食べたいかい?」
「タベタイ!」
「ならちょっと聞きたいことがあるんだ」
「ナニ?」
フィーネは気がついていない。
夜滝の目の奥に怪しい光が宿っていることを。
「その……一緒にお風呂に入ったってことは圭は裸だったんだよね?」
「ハダカダッタ」
「てことはあれだよね? 圭の……圭の圭を見たわけだよね?」
「ピピ?」
フィーネは夜滝が何を言いたいのか分からなくて首を傾げるように体を少し傾けた。
「あれだよ……圭の、息子というか……モノというか…………おち……」
「やーたーきーねーえー?」
何をこそこそ話しているのかと思ったら夜滝が聞き出そうとしていることに圭が気がついた。
「い、いひゃいぞ!」
圭は険しい顔をして夜滝の頬を左右に引っ張る。
「フィーネに何聞こうとしたのかな〜?」
「ひょれはあれだよ、圭がどれくらい成長したか……いたたたた!」
フィーネがそこらへんの回りくどい言い方について知識がなくてよかった。
「ち、知的好奇心……ごめんよぅ〜!」
「オチ?」
「フィーネ、今の会話は忘れるんだ」
「ワカッタ!」
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