日常+フィーネ1
早速ミニ問題はあったもののフィーネは圭たちの仲間として受け入れられた。
金属だけ食べるのかと思ったらフィーネは普通に食べ物も食べた。
「ここがペット禁止じゃなくてよかったねぇ」
「ペット……ペットの分類に入るのかな?」
フィーネは圭のところに連れて行くことになった。
波瑠のところはないとして工房か、圭の部屋か少し悩んだのだけどフィーネがマスターノソバガイイと言ったので圭が責任を持って連れ帰ることになった。
一応圭たちが入居している部屋はペット可の物件である。
けれどフィーネをペットというのか、仮にペットだとしてそれが認められるかは別問題だと圭は思う。
多分フィーネをペットだと認める人は少数派だろう。
「イエ?」
「そうだ、ここ……まあここもフィーネの家みたいなもんかな」
正確な話ではここはフィーネの家ではない。
なぜなら今いるのは夜滝の部屋だからである。
圭の部屋は夜滝の部屋の隣だし、圭も夜滝の部屋にいることも多いので半分くらいはフィーネの家であるとは言えるかもしれない。
「そうだねぇ、居候するならお掃除ぐらい覚えておくれよ?」
「フィーネ、ソウジデキル!」
「おや、そうなのかい?」
「フィーネ、メイドノオシゴトデキル!」
「そういえばメイド服着てたよな」
研究所にいた時のフィーネは人型のストーンゴーレムでメイド服を着ていた。
「キレイニスルシゴトモフィーネヤッテタ!」
長らくフィーネは活動休止状態だったために埃などが溜まっていたが研究所の衛生管理はフィーネがやっていた。
「マスター……オトウサンソウジデキナイ」
ケルテンはあまり掃除などを得意としない人だった。
決して綺麗好きとは言えず放っておけばそこらがゴミで溢れかえっていても気にしない。
そこでフィーネが掃除を任されたのだ。
だらしないお父さんとしっかりした娘みたいなものである。
「ちょっと俺と夜滝ねぇみたいもんだね」
「む、私だって掃除ぐらいはできるよぅ? ただやらないだけさ」
「オトウサンモソウイッテタ」
「むむ!」
「ふふ、フィーネの方が上手だね」
研究者気質とでも表現したらいいのか。
研究なんかに没頭すると周りのことが見えなくなってしまう悪癖がある。
ケルテンもそんな感じの人だったのかもしれないなと圭は思った。
「さて、やるか」
そう言って圭は腕まくりをする。
工房の冷蔵庫を見て思い出したのだが夜滝の家に保存してある作り置きも少なくなってきたなと思っていた。
なので工房からの帰りにスーパーに寄って色々と食材を買い込んできていた。
ある程度狙い打ちで買ってきたものもあれば安かったり物が良かったりしたので買ってきたものもある。
袋から取り出して何を作ろうかなんて考えているとフィーネが近くに寄って来た。
「ナニスル?」
「料理を作ろうと思ってな」
「リョウリ? タベル?」
「いや、作るんだよ。とりあえず見ててみ」
フィーネにとって料理は作るものではなくただ食べるものだった。
掃除はするけど料理はしなかったのだなと思いながら圭は先に決めてあった料理を作り始めた。
「ピピ……」
何を作るか決めてあったので圭の手際もいい。
フィーネはそれをじっと見ている。
天下のRSIは寮の部屋も一級品。
台所も素晴らしく広々としたスペースに三口コンロと圭も料理をしていて楽しい環境がある。
「うん……なかなか」
今回作っているのはきんぴらごぼう。
豪華な料理もいいけれどこうした家庭料理は圭も夜滝も好きだった。
「ほれ」
「ピピ?」
「味見だよ。箸は食べるなよ?」
一口きんぴらごぼうを食べてうなずいた圭はフィーネにもきんぴらごぼうを差し出した。
「どうだ?」
「オイシイ!」
「今日のは結構美味くできたな」
フィーネの味覚がどうなのかは知らないけれど美味しいと言ってもらえれば嬉しい。
ちゃんと力をコントロールをしてきんぴらごぼうだけを食べたフィーネを笑顔を向ける。
一部を晩御飯に取っておいて残りをタッパーに移しておく。
その後も料理を作り、フィーネと味見をしながら料理のストックを作る。
「こっちとこっちならどっちが好きだ?」
「……コッチ!」
「甘い方か」
なんとなく興味を持った。
圭は甘い卵焼きとだし巻き卵を作ってフィーネに食べさせた。
フィーネの好みは甘い卵焼きだった。
今のところ買ってきた食材に嫌いはないようだが全体的に分かりやすく甘めな味がフィーネの好みのようである。
ただミスリルも美味いというのでまだまだ不明なところはある。
「フィーネモヤル」
「えっ?」
キュウリを切っていたらフィーネがズイッとまな板の上に出てきた。
「お、おっ?」
フィーネが前足を上げると形が変わっていく。
長く鋭く小さい包丁のような形になった。
もしかしたはこれが真実の目で見たフィーネのスキルの形態変化かもしれない。
「ピピ? ズレる」
そのまま前足包丁をストンと落とすと簡単にキュウリは切断されるが前足包丁にキュウリがくっついたりキュウリが転がったりと上手くいかない。
「こうやって押さえるんだ」
圭は手でキュウリを押さえてやる。
「リカイ」
フィーネはすぐに押さえることを理解した。
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