小問題、大問題1
世界で色々な動きがあることなど圭たちは知らない。
圭たちには圭たちの問題があった。
まずは日常生活がある。
大きな事件などなくとも日常の生活を過ごすことも大変で大切なのである。
圭と夜滝は麻痺ん棒の実験を続けていた。
いくつかのゲートを回って麻痺ん棒の有効性を試した。
麻痺ん棒も万能というわけにはいかなかった。
どんな敵にも確実に毒の麻痺効果が出るわけではなかった。
使用方法が槍の形態で刺すという都合上接触時間は短くて与えられる毒の量は限られる。
D級モンスターなら間違いなく効果は発揮される。
C級になると少し結果は変わってくる。
多くのモンスターに麻痺ん棒の効果はあるのだが一部に効かないモンスターもいた。
さらには効き始めるのが遅かったり効果が弱いモンスター、あるいは早く効果が消えてしまうモンスターや2回目は通じないモンスターもいた。
B級のモンスターだともっと毒が通じる相手が減る。
つまりは使うモンスターや状況を考えれば有効であるが何でもかんでも使えばいいということじゃない。
圭の能力で分かればもっと楽なのだけどモンスターを相手に真実の目で見てもそのモンスターの習性や説明が分かるだけで能力そのものは見れないので何が原因なのかも分からない。
今後も攻略チームに使ってもらって有効なモンスターを調べて分類していく必要がある。
そうしたレポートを夜滝は仕上げていた。
一方で波瑠の大学推薦入試も迫っていて波瑠はそちらに集中していた。
波瑠の成績や頭なら心配は少ないが片手間には出来ない。
そしてカレンは装備の製作に勤しんでいた。
刀鍛冶のように優斗と2人で槌を振るったり細かい縫い物をしたりと色々作って練習している。
「うーむ……難しい問題だねぇ」
そうした中でもみんなで時間を見つけては集まっていた。
夜滝も頭がいいので波瑠の受験対策にアドバイスをしたり、ちょっとした息抜きのような感じもあった。
「私こういうのセンスないからな」
カレンが悩ましげにため息をつく。
いまは夜滝の部屋でみんな集まっている。
圭は日常の仕事に加えてギルド設立の準備も進めていた。
水野に相談したら二つ返事で手伝ってくれることになった。
そうは言っても難しいことは多くない。
必要な書類を揃えて提出すればいい。
実はまだカレンは覚醒者登録を行なっていないのだけど圭を始めとして夜滝、波瑠、和輝、優斗の5人をギルドメンバーとして登録することでギルド設立の条件は満たした。
ギルドの場所も自宅でよく、書かなきゃいけない書類も複雑なものはない。
法人化する方はもっと面倒な手続きなどがあるけれど法人化しなければ圭でも難しくはないのだ。
ただ大きな問題が一つ。
「ギルド名なぁ……」
ギルドの名前をどうするかである。
法人化しないのであれば申請して変更することもできるのだがどうせなら良い名前にしたい。
他の人からなんだそんなことと思われるようなことであるがこれからそのギルド名の下で活動していくのにちゃんとした名前は必要だ。
圭の独断で決めるわけにはいかないのでみんなで考えることになった。
和輝と優斗はみんなが決めたものなら好きにすればいいと言って4人で考えているのだけどなかなかいいアイデアも浮かばない。
「もう圭のギルドでケイギルド……」
「それは俺が嫌」
流石に自分の名前を全面に押し出すのは恥ずかしい。
たまにそうした名前にしているギルドはあるし、それを否定するつもりなんてないが圭がそうするつもりはない。
波瑠は使えそうな単語を書き出して組み合わせられないか考えている。
「ザ・スマートタレント……」
しかし波瑠もネーミングセンスはない。
なぜみんなネーミングになるとセンスが死滅するのか。
「ただ私たちは圭が集めた。圭が才能を見抜いて圭が私たちを導いてくれる」
「そうだなぁ、なんかそんな感じの名前にしたいよな」
「別に俺は関係なくても……」
「えー、どうせなら圭さんっぽい感じがいいよね」
「見抜く……導く……リード。才能……アビリティ……リードアビリティ……うーん、もうちょっとそれっぽくしてリーダビリティギルドなんてのはどうだい?」
「おっ、なんか良さそう!」
「ちょっとストレートな感じはあるけど口に出してみるとなんかオシャレ!」
リーダビリティギルド。才能を導くギルド。
普段毒棒君とか麻痺ん棒とか謎のネーミングをしている夜滝から飛び出してきた横文字の名前にみんながおおっ!っとなる。
それっぽくていいのではないかと圭も思う。
「俺もいいと思う。他に意見なきゃこのままいこうと思うけど……どうかな?」
「私はリーダビリティギルドに賛成!」
「私も良いと思う」
「いざこうして良いと言われると照れるねぇ。もちろん言い出しっぺだしいいに決まっているよ」
「じゃあ後は和輝さんと優斗君にも確認して、よかったらこの名前で申請しようか」
「やった! 決まり!」
「頭を動かしたらお腹が空いたねぇ」
「ハイハイ、今日はお鍋です」
「みんなでつつくお鍋はいいねぇ」
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