酷い人たち1
波瑠と優斗のテスト期間が終わった。
もう少しのんびりしていたっていいのだけど優斗のお願いでモンスター狩りを行うことにした。
リウ・カイの事件で色々なことがわかった。
父親のことや鉄鋼竜の心臓のこと、和輝なりの思いなど一回で飲み込むには大きすぎる出来事であった。
しかしその中でも優斗は自分なりに考えて職人として進むことの決意をより固くした。
職人として大事なのは技術や素材に対する理解度も必要であるが武器を知ることもまた必要である。
優斗は気が小さくモンスター相手にもなかなか戦う勇気が出せないでいた。
だが今回の事件をきっかけに優斗も勇気を出してみようと思った。
圭たちにモンスターの狩りに同行してもらうことをお願いした。
当然圭たちはそれを快諾した。
ついでにレベルアップも狙えるのだから断る理由がない。
ちょうどいいゲートがないかも探したのだが行きやすい距離にあるようなゲートはほとんどギルドに押さえられてしまっていて1日攻略権で貸し出しているところもなかった。
なので自由狩猟特別区域の方に出向くことにした。
いつもは安全地帯と呼ばれるモンスターの少ないところから程近い低級モンスターしか出ないところで狩りをしていた。
けれど圭たちもレベルアップして等級も上がったのでもう少し奥で狩りをすることにした。
「優斗、そっち行ったよ!」
「ははは、はい!」
圭と波瑠とカレンで上手くモンスターを誘導する。
等級的にはF級からE級の間ぐらいになる小型の猿のようなモンスターであるブルーアイズモンキーが逃げて優斗の方に向かった。
目が青いのではなくて目の周りの毛が青くて青く見えるからブルーアイズモンキーというのだ。
「ひ、ひぃっ!」
「こら、そんな腰が引けていては倒せるものも倒せないぞ!」
ガチガチの装備に身を包んだ優斗が及び腰で剣を振った。
能力値的にはそこそこな優斗であるがなんせ腰が引けすぎている。
ブルーアイズモンキーはスピードタイプのモンスターである。
速度の能力値が低い優斗が引けたように攻撃しても軽々とかわされてしまう。
「逃がさないよ!」
優斗の剣をかわして横をすり抜けて和輝のところに行こうとしたブルーアイズモンキーの背中を波瑠が切りつけた。
ブルーアイズモンキーよりも波瑠の方が速く容易く追いついた。
「波瑠、ナイス」
「いえーい!」
波瑠もテストのストレスがあったのか今日は少し戦いが荒っぽい。
「優斗……」
「わ、分かってるけど体がどうしても固まっちゃって……」
戦おうとするだけ成長しているがまだまだそれでも動きは固い。
能力が高くてもこの分なら圭の方が強いぐらいである。
それでも狩りを始めた最初はひどいものだったのでマシになった。
体力値が高いためかブルーアイズモンキーに殴られても少し赤くなるだけで済んでいたが和輝は深いため息をついていた。
「圭!」
ブルーアイズモンキーは残念ながら素材としては使えない。
なので魔石だけ取っておく。
圭がナイフを取り出して魔石を取り出そうとしていると木の上からブルーアイズモンキーが圭に飛びかかった。
「……ありがとう、夜滝ねぇ」
短い爪、だが人の皮膚ごときなら簡単に切り裂ける鋭さを持っている。
必死に伸ばされた手は圭に届くことなく止まっている。
空中でブルーアイズモンキーは水に串刺しにされていた。
やったのは夜滝。
バイペッドディアのゲートがブレイクを起こした時和輝を守ろうとバイペッドディアと戦った。
その時にボスバイペッドディアも倒して夜滝はレベルアップした。
なんとその際にスキルまで覚醒した。
『平塚夜滝
レベル31
総合ランクF
筋力F(F+)(一般)
体力F(F+)(一般)
速度F(一般)
魔力D(D+)(伝説)
幸運F(英雄)
スキル:思考加速
才能:魔道的並列思考』
さらには魔力もさらに上がって総合ランクでFになった。
覚醒者等級でいうならE級相当になる。
夜滝のスキルや才能は完全に魔法向きであった。
魔道的並列思考は世の中でダブルキャストと呼ばれる能力で異なる魔法を同時に発動させるものである。
よく両手でそれぞれ別の絵を描くようなものと表現される技能の1つだが魔法使いたちに言わせると両手どころではなく両手両足で異なる絵を描くような難易度らしい。
「ふふふん、これも新しいスキルのおかげだね」
そして新しいスキルである思考加速。
こちらはノーキャストマジックと一般に呼ばれるものと近い。
魔法は即発動できるものではなくてキャストタイムと呼ばれる魔力を魔法に変えながら使う魔法をイメージする時間が必要でそのために魔法の発動にタイムラグが起こる。
ノーキャストマジックとはこうしたキャストタイムを限りなく短くして即座に魔法を発動させるものである。
ダブルキャストにしてもノーキャストマジックにしてもかなりの高等技術で使える魔法使いは非常に限られる。
夜滝はその2つの技術を手に入れたのである。
魔力的には高等級の魔法使いには敵わないがこれらの能力を駆使すれば高等級の魔法使いにも匹敵する働きが出来る。
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