蛇と呼ばれる男、虎と呼ばれる男1
「きょおーの、晩ごはんは〜おっにっく〜」
ご機嫌なカレンはメイスでバイペッドディアの頭を殴りつけた。
タンクを役割を担うことに決まったカレンの装備として圭からもらった盾はマスト。
しかしそれだけでは防御一辺倒になってしまうので攻撃手段として色々武器も試してみることにしたのだ。
盾でバイペッドディアの突撃を防いでサッとメイスで殴りつけて引っ込む。
剣や槍と違って刃を立てて攻撃しなくても乱雑に攻撃を繰り出せるのはメイスの利点である。
今のところはカレンも力さえあれば剣よりも扱いやすいメイスを気に入っていた。
けれど機嫌がいいのはメイスを気に入ったからではない。
現在ダンジョン攻略も2日目。
昨日狩ったバイペッドディアはモンスターの解体業者に持ち込んだ。
角や皮、肉などに解体するのだけどそうした素材の一部は売らずに受け取ることにした。
カレンたちが職人として素材を利用するし、お肉は普通に食べられるからである。
今日の攻略が終わったらみんなで焼肉をしようということになっていた。
そのためにカレンのテンションが高いのである。
「カレン、戦いの最中に油断をするでない。わずかな油断がケガに繋がる。下手すると全滅までしてしまうことがある」
「ご、ごめんなさい」
「分かっているならいい」
「まあ最初に比べるとかなり効率が上がって楽に倒せるようになったもんね」
カレンはレベルアップして安定し、夜滝も才能が覚醒して大きく戦力が向上した。
そしてさらには圭と波瑠もレベルアップした。
『村雨圭
レベル17
総合ランクF
筋力E(E+)(英雄)
体力E(E+)(伝説)
速度F(英雄)
魔力F(一般)
幸運E(神話)
スキル:真実の目、導く者
才能:類い稀な幸運』
『弥生波瑠
レベル15
総合ランクF
筋力F(F+)(英雄)
体力F(F+)(一般)
速度D(D+)(神話)
魔力F(英雄)
幸運F(英雄)
スキル:風の導き
才能:有翼のサンダル』
『平塚夜滝
レベル29
総合ランクG
筋力F(F+)(一般)
体力F(F+)(一般)
速度F(一般)
魔力E(E+)(伝説)
幸運F(英雄)
スキル:思考加速(未覚醒)
才能:魔道的並列思考』
圭と波瑠は基本的なステータスだけで総合ランクFになった。
つまり覚醒者等級ならばE級になるはずである。
流石にレベルアップの速度もかなり鈍化してきてバイペッドディアでのレベルアップは厳しそうになったけれどバイペッドディアには苦戦しないほどにはなったのだ。
圭の方がレベルも上だったのにいつの間にか波瑠はかなりレベル差を詰めてきていた。
チームとしての総合的な強さも大幅に向上した。
夜滝はベースのレベルが少し高めなせいかやや伸びが遅かった。
しかしステータスも上がっているしこの分ならE級も見えてきた。
「流石に減ってきたな」
最初は探せばすぐにバイペッドディアも見つかっていたのだけど見つけるのも大変になってきた。
1日2日程度で復活もしないので狩りを続けて数が減ってきたのである。
あまりゲートの奥に行ってしまうとボスがいる。
今の戦力ならボスと戦えそうな気もするがゲートの1日攻略権でボスまで倒してしまうのは契約違反となる。
ボスに接触しない程度の場所で探さなきゃいけない。
「結構倒したもんね」
「相手も好戦的で敏感だから戦うペースも早かったもんねぇ」
「うーん、時間的にも早いけど切り上げてみんなでお風呂でも行こうか?」
魔法での遠距離攻撃を行う夜滝はともかく接近戦を行う圭たちはどうしても返り血を浴びてしまったり巻き上がった土埃などで汚れてしまう。
今もなんだかジャリジャリしたような感じもある。
圭も初日を終えてシャワーを浴びた時最初の水が茶色くてこんなに汚れていたのかと驚いたものであった。
「それもいいね!」
「カレンさんもあとちょっとだけど……あとちょっとなら次やればすぐに上がるからいいでしょう」
「むー……」
「まだやる?」
「いや……肉……帰る」
少し不満そうなカレンであったけれどカレンだって乙女である。
汚れている感覚はある。
さらには肉も待っている。
心の中でそれらを天秤にかけて肉が勝った。
「早いけど引き上げよう。攻略権分の利益は出てるし十分だろう」
お金の面は心配していないがお金の面でも利益が出るくらいにはモンスターを倒せた。
倒したバイペッドディアを引きずりながらゲートに戻る。
「あれ? 誰かいるよ」
ゲートに戻ってくると人がいた。
身長の高い男性で暇そうにスマホをいじっている。
「ああ、どーもお久しぶりです」
「お久しぶりだと?」
和輝は眉をひそめた。
男は親しげに声をかけてきたけれど顔に見覚えはなかった。
振り返って圭たちをみるが誰も男を知らず首を振る。
「やだなー、この前会ったでしょう?齊藤ですよ、齊藤」
「齊藤だと?」
「齊藤っていうと……」
この前に会ったと言える齊藤を思い出すのに少し時間がかかった。
「あ……そうか……そういえばあの顔捨てちゃったんだ」
なぜなら少し前に会った齊藤というと男と目の前にいる男の顔は明らかに違っていたからであった。
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