神話級の幸運6
「じゃあ私も本格的にあっちに移るかね」
圭がいたから夜滝このアパートの部屋を借りっぱなしにしていた。
だから圭がいなくなるなら夜滝にもここにいる理由はなかったのである。
買ってきた福神漬けは好みじゃないな、なんて話しながらカレーを食べて夜滝は部屋に戻っていった。
「……何というか激動って感じだな」
寝る前にシャワーを浴びることにした。
色々あってあまり感じていなかったけど意外と体は疲れていたことに今更気がついた。
死にそうな目に遭ってからまさかこんなことになるだなんて誰が予想できようか。
「……少し痩せたかな?」
お風呂場についている鏡で自分の姿を見る。
しばらく病院だった上に心労は尽きなかった。
元々そんなにふくよかでもないが少しやつれたような気がする。
「…………そういえば」
鏡で自分の姿を見てふと思った。
真実の目で自分の能力を見ることができるのだろうかと。
少し心臓の音が大きくなる。
これまでG級だと馬鹿にされてきた。
もしかしたら夜滝のようなこともあり得るかもしれない。
「……真実の目」
鏡に見える自分に向かってスキルを発動させる。
『村雨圭
レベル1
総合ランクH
筋力G(英雄)
体力G(伝説)
速度G(英雄)
魔力G(一般)
幸運G(神話)
スキル:真実の目、導く者(未覚醒)
才能:類い稀な幸運(未覚醒)』
「え……ええええっ!?」
自分の能力を見て圭は驚いた。
手に持っていたシャワーを落としてしまう。
こちらもまた見るべきところが多くて理解が追いつかない。
まずパッと見た時に目についたのはレベルが1であることと並ぶGの能力値だった。
そして自分の総合評価がGを超えてHであるという衝撃。
ショックでお風呂場でよろける。
けれど希望もある。
才能と思われるところに見たこともない神話だとかどう考えても才能が高そうな英雄や伝説といった文字が見られるところだ。
なんだかスキルもある。
俺は本気出せばすごいんだよ、才能あるんだよと口にしてもいいような可能性はあるのではないかと思う。
「神話、英雄、伝説ってどれが上なんだ?」
その3つが一般や無才に比べて凄そうなことは誰でも同意するだろう。
ただこの3つの序列がいまいち分からない。
英雄の話が伝説になって、さらにそれが語り継がれて神話になる。
だから英雄、伝説、神話の順番であるのかなと圭は推測しているがデータが少なすぎる。
どれが多いのか分かれば数の多さから上下も判断できそうだけど今のところ自分を含めて3人しか見ていないので決めつけるのは早計といえる。
やっぱりでも神とついているから神話は1番上かなと考えている。
だとしたら神の話が如き幸運を持っていることになる。
「てか……幸運ってなんだよ?」
幸運が高いとどうなるのか。
それもまだ理解ができていない。
それに結局レベルを上げる方法も分からないので秘めたる能力があったとてどう活かしていいのか想像も出来ない。
「だけど……」
無能じゃない。
今は無能かもしれないけど自身には秘められた力があったのだ。
シャワーに流れるお湯に混じって圭は泣いた。
誰にも理解してもらえないしまだ秘められている力で、他の人を見返すことなんてできない。
でも何も出来ないとか役立たずとか必死に耐え抜いてきた影を落とす言葉が今はもう心に突き刺さっていない。
自分も成長してやれることがあるかもしれない。
そう思えるだけでも圭は嬉しかった。
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