3ー21【あえてのすれ違い1】
◇あえてのすれ違い1◇ミーティア視点
私は、商会の拠点である【アセンシオンタワー】の一階で、今日も変わらず仕事をしていた。そう……変わらず、何も変わらず。
「それではロバート、そちらの搬入は任せますね」
「はい会長。お任せ下さいっ」
【コメット商会】も人が増え、扱う商品も増え、その規模も大きくなって来た。
それに合わせて収入も増える。仕事も増える。その繰り返し、けれど時間は足りない……嬉しい悩みだわ。
「……あの、会長」
商会の頼れる部下、ロバート・ヴィルメーさん。
立場上呼び捨てにするけれど、彼は一つ年上だ。
「なぁに?」
書類に目を通しならが、私はしれっと聞く。
ロバートさんは少し戸惑いながらも、物怖じせずに。
「いいんですか?ミオと最近会っていないようですけど」
「ふぅん、そういう事……言うんだ」
私は、目を細めてジトッと睨む。
彼はミオの同郷の青年。ミオとも昔からの知り合いだ。
だからよく分かっているんだと思う、ミオの考えというか……性格?
「い、いえ……すみません。でも気になるんですよね、この前のアレから……一度も会ってないでしょ?休みの日も仕事を入れているみたいですし、もっと僕らを頼ってくれてもいいんですよ?」
ロバートさんは後頭部を掻きながら、苦笑しながら言った。
頼りにしているつもりなんだけどね、これでもかなり。
私は私の出来る事を熟して、皆の協力のもとに成立しているから。
「頼りにしてるわよ……それともなぁに?まさか今以上に仕事をよこせって言う事かしら?」
私は笑う。嬉しいわね、こういう風に言ってくれる部下がいるのは。
けれど、今だけは譲れない。
「まぁ休んでは欲しいですね。これは僕だけじゃなく、メイもアーグタも思ってますよ」
「そうなの?」
メイ・マーメス。アーグタ・コレッサル。
どちらも【コメット商会】の優秀な部下だ。もう関係も長く、メイさんに至っては、先月双子の女児を出産したばかりなのにも関わらず、仕事復帰をしてくれている。
「そうです。だから、部下の心労を思ってくれるなら……今日くらいは休んでくれませんかね」
ロバートさんはカツカツと歩み寄り、私が持つ書類を奪うように。
「あ……」
「これは僕に任せて下さい」
「そ、それじゃあ私の仕事が……」
ロバートさんは、始めから言葉を用意していたのか。
「ならば、【アルテア】で荷を運ぶ仕事をして下さい。他の部下たちは【アルテア】以外の町へ行ってますからね……」
「……」
そう宣言して、ロバートさんは全部の書類を掻っ攫って自分の机に向いた。
あーこれ、もう聞くつもり無いわね。私を無理矢理にでも休ませようと、そういう事か。
仕方がない。
【アルテア】での荷を運ぶ仕事、なんだか直接荷運びをするのは久し振りな気もするけど……気分転換には、いいかもね。
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