3ー7【果てなき心痛7】
◇果てなき心痛7◇アイシア視点
ミーティアの家、名目上クロスヴァーデン家と呼ぶけれど、その屋敷に入ってから、あたしは凄くリラックスしていた。
「今日はどうした?門番が
「あはは、すみません。ミーティアに会いたくて」
ジルさんは「あー」と苦笑いを見せる。
この様子だと、やっぱり。
「あの話、ミーティアはしてますか?」
「いや、一度も聞けていないぞ。わたしもジェイルも、他の皆もな……お嬢さ――いや、会長は自分からも触れないし、どう扱ったらいいかがなぁ……わたしが問いたい」
「で、ですよねぇ」
片腕でもあるジルさんでも聞けていないんだ……こ、これは聞きにくい。
ミーティアがいるという部屋へ向かっているのだけど、その最中にジルさんには色々聞いた。
やはりミーティアは、あの件について触れていない。
それに合わせるように、ジルさんもジェイルさんも、それ以外の部下やメイドさんたちも聞けていないようだった。
そんな状況で、あたしが聞ける!?いや、無理だよぉ……
「さ、着いたぞアイシア。ここが奥様……マリータ・クロスヴァーデンの部屋だ。会長……オルディアナ様、いやアイシア・ロクッサ殿をお連れしました」
ミーティアのお母さんのお部屋前で、ジルさんはウインクをしてそう言う。
ありがたい。女神としてではなく、友人として訪れたことを強調してくれたんだ。
「どうぞ、開いているわ」
部屋からミーティアの声が。
な、なんだか緊張する。これじゃあ門番さんの事を言えないわ。
ガチャリ――とジルさんが扉を開ける。どうぞと手を差し出され、あたしは入室。
「……突然の訪問、ごめんなさい。オルディアナ――いえ、アイシアと申します」
背筋を伸ばし、きちんと礼をする。
こ、これは礼儀だから。難しいのよね……女神のルール。
「アイシア、ようこそ我が家へ。驚いたわ……」
「ようこそおいで下さいました……ミーティアの母、マリータ・クロスヴァーデンと申します。この様な姿を晒し、申し訳ございません……」
ミーティアは笑顔で、お母さんは緊張気味に。
あたしは慌てて。
「い、いえ!お気になさらず、あたしも今日は、友人として来ていますので」
お身体が悪いのに、無理はさせられない。
「本当は、私がアイシアを迎えればそれでよかったんだけどね……お母様がどうしてもって言うから」
あー……あたしに挨拶を、って事だったんだね。
無理をさせてしまったかも。だったら、話はやっぱり外で。
「そうでしたか、ご無理をさせてしまいましたね……それじゃあミーティア。お母様がゆっくり休めるように」
「ええ。挨拶を聞いてくれてありがとう、アイシア……客室を用意してあるから、そちらに」
ミーティアはお母さんの背を擦りながら、優しく笑顔を向ける。
「オルディアナ様……
ゆっくりと頭を下げて、マリータさんは横になった。
ジルさんが残るらしいから、大丈夫よね……あたしは、ミーティアに話さないと。
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