2ー64【悪女な魔女12】



◇悪女な魔女12◇ミオ視点


 言葉を発した紫月しづき……の姿をした能力の根本。


「は、【破壊はかい】が……何だって?」


 ゆっくりと見開かれる大きな眼。

 地雷メイクなんてまじまじと見たこと無かったが、まぁ、うん、可愛いもんだ。


「【破壊はかい】は、自分を守る殻。閉じ籠もる檻を形成する、拒否の力」


「【破壊はかい】は、壊す力じゃ無かったって事か……?」


 空間を壊してそこに閉じ籠もる、的な事だろうか。

 拒否、拒絶の力なのは、何となく理解できるけど。


「年月と言うものは恐ろしいもので……」


「なんか急に始まったぞ」


 紫月しづきは無表情のまま続ける。


「【破壊はかい】を撃ち込んだ箇所は、この世界全ての根底から外れ、異空間と化します。長ければ長いほど、その力は増すでしょう……本来、気付かれずひっそりと経過していくのが、その本質ですが……貴方は気付いてしまった」


「【破壊はかい】が、異空間を作り出す?そして力を増す……それじゃあ、【破壊はかい】を撃てば撃つほど、ヤバい力が増殖する……ってのか?」


 凄くヤバそうな事を言ってるな、この紫月しづき型の能力さん。


「彼女の中で成長した【破壊はかい】……負の力は、一つの形に整えられました。貴方が干渉した結果です」


「【無限永劫むげん】の事か」


 【破壊はかい】の影響で出来た傷、それに干渉した能力。


「結果。彼女の中ですくすくと成長していた負の力は……一つの概念を超えてしまいました」


 嫌な予感しかない。

 俺はそれに心当たりがあるんだから。


「……この力は、女神のそれと似ていながら、大きく規格を外れていきました」


 ほらぁぁぁぁぁ!!


「つまりだ……俺の近くの人物で言うと、アイシアやウィズのような存在……あーもう!!知らん内にやらかしてんじゃねぇかぁぁぁぁぁ!!」


 俺は頭を抱えた。

 さっき言った予感、これもう完全に当たってたんだ。

 【破壊はかい】のコードを解析し、プログラムを書き換えようとした結果……レフィル・ブリストラーダは神格を得た……そういう事だろう。


「つまり、私はこれ以上の干渉が出来なくなります」


「は!?え、ちょっと待て紫月しづき!!いや正確には紫月しづきじゃねぇけど……いやそれどころじゃない!それじゃあレフィル・ブリストラーダはどうなる!?ほっといてもいいのか!?アイシアやウィズのように、俺が管――」


 管理をと言おうとした瞬間。

 紫月しづきの姿は消えて……融けていくように暗い空間に吸い込まれていった。


「……マジかよ」


 俺は座り込んだ。

 その間にも、紫月しづきが消えた事で完全に干渉できるようになった【破壊はかい】のデータを解析し、脳内でプログラムを書き換えていく。


 これで、俺が【破壊はかい】を使用する際のデメリットを消せる。

 治療が出来なくなる事も、触れるとか触れないの問題も無くなる。

 何より俺の最大の攻撃として、切り札ジョーカーとして機能するように出来る。


「問題は、この【破壊はかい】の影響が残る……レフィルだ、よなぁ」


 ここはレフィルの中に残った【破壊はかい】の中だ。

 存在そのものを書き換える事で、俺が使う方にもフォーマットした【破壊はかい】を移すのが目的だったが……思わぬ結果だ、これは。


「と、とりあえず様子を見ようか、うん。そうしよう」


 スーッと意識が遠のく。

 戻って、レフィルの様子を確認してからでも遅くはない。

 そう決断を遅らせて、俺は現実へ帰還する。

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