2ー55【悪女な魔女3】



◇悪女な魔女3◇レフィル視点


 アタシは、自分の行いを後悔していた。

 【女神イエシアス】の手で王国北部の貴族のもとに転生し、観光で訪れた先でイエシアスに再会。彼女はアタシを、当時の王女……シャーロットに会わせた。


 結果、アタシはあの女の迫力と力に屈し、配下に成り下がった。

 前世での死因を再発させるという力で脅され、苦しみ身体にムチを打ち、アタシは懇願こんがんしたのだ……何でもするから、見逃してくださいと。


 能力の活用方法や戦略を叩き込み、魔法を一から学んで、聖女レフィルという存在に成った。


「……アタシは」


 アタシの存在は王国中に広まって、奇跡の聖女と呼ばれる頃には、アタシの残虐性は性質のメイン核となっていた。

 そして、その残虐性の矛先は、アタシをこの道に引き摺り込んだ王女……新しい女王、シャーロット・エレノアール・リードンセルクへ向けられた。


「アタシは、シャーロットを倒す……殺す事だけ、復讐だけしか頭になかった」


「だから民には、他国なら尚更……どうでも良かったとでも?」


 ミオ・スクルーズの視線は、まるで心の奥底まで見透かすような、そんな冷めた視線だった。当たり前ね……でも、それを受けないと。

 さっきの彼の言葉を、提案を受けられる訳がない。


「そう……ね、そうだったのかも知れないわ。あの時の、アタシは」


「そっか。まぁそうだよな……そんなあんたのリベンジが、俺の手で失敗に終わったわけだ」


 そうなるわね。でも、それで正解だったんだとも、今は思えるようになった。

 一時は貴方の事ばかりを考えて、復讐を果たす事ばかりを考えていたわね……負けた直後は。


「貴方に負けて、それからは一時も忘れなかった。いいえ、忘れられなかったが正解ね。でも、何かがプツンと……切れたのよ」


「……俺への復讐心か執着か、それともシャーロットへの」


 彼は顎に指を当てて考えている仕草をする。

 こんなアタシの事を、深く考えてくれている。

 敵であり、憎悪の対象だったはずの……アタシを。


「ん、どした?不思議な顔をしてるな」


「い、いいえ……なんでもないわ」


 彼は……アタシを利用する、そう言ったけど。

 さっきのその利用という言葉にさえ、悪意を感じなかった。

 彼は本気で、アタシを許そうとしている……そう、感じた。


「まぁいいけど。それで?そのプッツンがあっても、今まで逃亡をしてたんだろ?どうしてだ?」


「……この数年の事ね。正直言って、分からないわ……覚えていないのよ、アタシは」


 これは本当の事。

 今まで彼への憎悪だけで生き長らえていた自覚まである程に、あの当時のアタシは自暴自棄に近い行動をしていたと思う。


 そして今、それが間違いだと。

 彼ではなく、元凶は自分自身なのだと……知ったから。

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