2ー10【苦労を買った結果2】



◇苦労を買った結果2◇ミオ視点


 それにしてもエリアルレーネ様……エリアの来訪の目的はなんだろう。

 突然訪れるのは女神たちに共通している面倒くさいところだが……


「で、エリアは何しに来たんだ?俺に会いに来ただなんて、ただの方便だろ?」


「あら、本当ですよ?嘘は言えませんからね、うふふっ」


 紅茶を呑みながら優雅に笑う。

 なんなんだろうこの女神ひと、相変わらず掴みどころのない女性だ。


「……エリアルレーネさま、どうせロイドさんのお説教から逃げてきたんでしょう?」


「……」


 ライネの言葉に、エリアの笑顔が固まった。

 なるほどね、あの人確かにグチグチ言いそうだわ。


「ま、まぁそういう観点もあるかも知れませんね……」


 視線を逸してそんな事を言う。

 いや、それしかないんだろうよそのリアクションは。


「せっかく来てくれてなんだけど、特別してやれることはないぞ?俺も忙しいし」


 俺がそんな事を言うと、ライネの長い前髪の下から視線を感じた。

 ジト目で……「さっきまでだらしなかった」と意図を込められた気がした。

 だから俺は急いで理由を作る事にした。


「まぁあれだ、最近は【AROSSAアロッサ】の開発も一段落したし、そろそろ帝国周辺を見て回ろうかなってさー」


 これは言い逃れではなく、本当にそうしようとは思っていたから出てきた言葉。

 ついでにアレックス・ライグザールも探すし。


「……なるほど」


「いいですね。セリスも喜ぶでしょう」


 そう言えばセリスのやつ、一度帝都に戻るとか言ってたな。

 ゼクスさんの能力――【瞬光しゅんこう】で時間はかからないらしいが、国内時差がある【サディオーラス帝国】ではそれも一苦労だろうに。


 え?【転移てんい】で行ってやればいいって?

 やだよ。それだと俺が皇帝陛下に会わなきゃならないじゃん。それこそ何度も手紙を無視してるんだ、強制的に会わせられるだろ?


「なぁライネ、セリスは今回、なんで帝都に戻ったんだ?」


「はい?それはですね……」


 俺の些細な疑問に、ライネはエリアを一旦見て考える。

 その視線を受けてか、エリアは俺に向けて。


「あの子もあの子で色々あるんですよ。バルザックももういい年齢です……一人娘の皇女には、あるのですよ……様々なしがらみもね」


「そっか、そうですよね」


 つまり近いうちの女帝。

 もしくは婿を迎えなければならないと、そう言っている。

 しかし、そうなるには個人的な問題がセリスにはある……彼女自身もそうとう気にしている、クロスヴァーデンの血筋についてだ。


 それもあってか、エリアは続ける。


「セリスは気にしています。ダンドルフ・クロスヴァーデンが言ったという……本来の【サディオーラス帝国】の持ち主、つまりはいにしえの皇家の事を」


 ダンドルフ・クロスヴァーデン。

 つまりはミーティアの事もだろう。

 何かと衝突する事もある二人だが、言ってしまえば過去の皇族と現在の皇族。

 あの男の言っていることが本当なら……いや、それはエリアが証明しているんだったな。


 なんにせよ、セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラスは俺たちにとっても大切な仲間だ。

 彼女が悩んでいたり苦しんでいたりするのは俺も心苦しい。

 出来る事ならなんでも協力するし、力になるさ。

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