1ー45【打倒クロスヴァーデン商会2】



◇打倒クロスヴァーデン商会2◇


 何かを封じ込める事ができる石、【ヌル】。

 【石の精霊】ナイズ・ストーンは、それを生み出す事が出来る存在だ。

 しかし単体では何の変哲もない石。しかし、例えば【Aキューブ】での能力や、【銀星鉱石シルヴァライト】での魔法を封じ込めるなど、可能性は無限だ。


「問題は、その【ヌル】に封じる能力や魔法を、どうやって量産するかだ」


「それは知らん」


 ほんっとに契約者に似てんなこのイケメン精霊。


「俺が能力を抽出、【複写ふくしゃ】するのが手っ取り早いけど……負担がエグい。【複写ふくしゃ】は倍々ゲームだから、量産は時間がかかるしな」


 能力【複写ふくしゃ】は、個数によって魔力消費が倍になっていく。

 始めから存在する物体なら、一から始まるのだが……俺が【創作そうさく】した物体の魔力消費は一では済まない。


「つまり、面倒臭いと」


「元も子もない事を言わんでくれよ……事実だけどさ」


 ナイズは細めたタレ目で俺を見て、そして口にする。


「ふむ……ならば精霊を使え。それで我らの仕事になるのなら……よろこんで身を差し出すだろう」


 まるで俺が独裁者かのように言うじゃないかナイズ。


「そんな強引な真似はしないっての。だけど、まぁ協力は呼びかけてみるのはありか……」


 精霊は多くいるし種類も豊富。今後もドンドン増えるだろうし。

 属性別でも、数えられない程に存在するからな。

 例えば炎属性。ファイアにヒートにフレイム。更には、ファイアの後にボールやカッターなど、もうどうにでもなれと思うほどパターンがあるから。


 だけど、それらの組み合わせを石に封じ込めて、この新しく開発したデバイスにセットし……誰でも魔法や能力を発動できるようになれば。


「ヤバイもん創ったかも知れん、俺」


 成長要素のあるゲームのシステムを構築している気分だ。

 これ、上手く使えば武器に応用したり出来るだろ……ただ単に、銃器を売り出すレベルじゃない。

 この世界の、根本的な戦い方が変わる……銃器通り越すぞ、マジで。


「今更だろう。この塔を外から見て言え」


 た、確かに。

 そう言えわれてしまえば、今更感は拭えない。

 それでも……喉がかわく程に、未来への渇望がこれを成したと思うと、ゾッとする。


 世界が変わる覚悟はとっくの昔に決めていたさ。精霊が解放されて、銃器が普及され始めて、対抗策として考えたこのデバイスが……まさかここまでの物を創る事になるとはな。


「じゃあナイズ、お前は協力してくれるんだろ?【ヌル】を大量生産……しなきゃならないし」


「ああ、ジェイルが言えばな」


 それが精霊だもんな。そこはやっぱりフレイと同じだ。

 契約者の命令が絶対堅守。守らねば契約破棄とされるんだ。


「分かった。ジェイルのやつに頼んで見るから、その時はよろしく……多分だけど、一生分の【ヌル】を作らなけりゃならなくなるぞ」


「ふっ……望む所だ」


 ニヒルなとこも似てるんだよ

 おかしい、フレイは俺にまったく似ていないのにな。


「では、俺はジェイルの元へ行く……頑張れ」


「お、おう。頼むな、それとなく伝えておいてくれ」


 俺からも言うけどさ。

 お前、ちょっと楽しみにしているだろ。




 行ったか……そういえば何しに来てたんだ?あいつ。

 少し前から俺の作業を見てたんだよな、いつからだ?まさか、高笑いする前?

 だとしたら普通にハズいぞ。


「はぁ……気を取り直して、続けるか。今日は流石に寝たいし早めに終わらせて……」


 試作は数種類完成させておきたい。

 男性用と女性用で分けたいし、折り畳みじゃなくてスライド式だったり、それこそスマホのような液晶画面も有りだ。

 いやいや、素材的にも技術的にも、液晶はまだキツイかな……


 デスクを右往左往しながら考える。


「それに、能力や魔法を封じた【ヌル】をセットするし……画面付けてる場合じゃないか。ムズいなぁ」


 それに名前もだ。なんだろうな、成長補佐、能力開花、魔法補助、通信機能。

 グロウアップ、アビリティ、マジック、コミュニケーション?

 を統合したデバイス?それともツール?


 頭文字を合わせると。


「GUAD-MCT?」


 グアドマクト?なんじゃそりゃ。

 並び替えたりしても、ピンとこないな。

 グロウアップデバイスでいいだろうか、考えるのも面倒だし。


「うーん、今はまだいいか。試作だしな……」


 別にネーミングが苦手だからではない。苦手だからではないぞ。

 そんなこんなで、取り敢えず試作モデルを完成させるのだった。形だけ、な。

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